バカにはわからなかった国際司法裁判所の話

このバカの話。

韓国に徴用工像阻止へ働き掛け 政府「国際条約順守を」 - 共同通信

提訴しろというコメがあるがどこに提訴しろと?(笑)韓国は選択条項を受諾してないので国際司法裁への提訴を拒否できる。もっとも韓国が選択条項を受諾すれば日本が真っ先に提訴するのは「竹島問題」だろうけどね。

2018/01/18 08:35
b.hatena.ne.jp

どこに提訴するか?と言えば、国際司法裁判所ですね。

「韓国は選択条項を受諾してないので国際司法裁への提訴を拒否できる」というのは間違いで、ウィーン大使館条約の選択議定書に韓国は署名していますので、日本がウィーン大使館条約違反として提訴すれば、韓国は拒否できず、紛争は国際司法裁判所に付託できます。

そのあたりの話を以下の記事で述べました。

バカでもわかる国際司法裁判所

しかし残念ながらバカにはわからなかったようで、こんなコメがつきました。

バカでもわかる国際司法裁判所 - 誰かの妄想・はてなブログ版

この選択議定書だけを根拠に一方的にICJに付託し裁判を開始した事例はない。そもそも多国間条約で決めた管轄権は争いが多く事実上根拠は複数必要(https://goo.gl/3Xe6p5)。ブログ主は不可能な事を示し日本を誹謗しているだけ

2018/01/20 11:08
b.hatena.ne.jp

「この選択議定書だけを根拠に一方的にICJに付託し裁判を開始した事例はない」というのも、まあ間違いですね。ウィーン大使館条約に関する選択議定書に基づく提訴としては、1979年のテヘラン人質事件でアメリカがイランを提訴した事例がありますので。まあ、おそらくこの事例では国家代表等に対する犯罪防止条約違反も管轄権の根拠としているため、「この選択議定書“だけ”」という留保で逃げているつもりなんでしょうけどね。

で「そもそも多国間条約で決めた管轄権は争いが多く事実上根拠は複数必要」とか言い出しているわけですが、これは完全に嘘ですね。
ウィーン大使館条約に類似するウィーン領事館条約というのがありますが*1、この領事館条約の選択議定書を根拠に一方的に提訴した事例に、ブレアード事件(パラグアイが米国を提訴)、ラグラン事件(ドイツが米国を提訴)、アヴェナ他メキシコ国民事件(メキシコが米国を提訴)があります。
ブレアード事件は外交交渉で解決したため、管轄権審理に至りませんでしたが、他の2件は管轄権が審理され、認められ、米国の義務違反(訴因はウィーン領事館条約第36条)が認定されています。ちなみに米国はアヴェナ他メキシコ国民事件以降、領事館条約の選択議定書から脱退しています。

これらの事件は、ウィーン領事館条約の選択議定書以外に特に根拠が無いはずです。「事実上根拠は複数必要」という暗黒太陽の虚言をこれらの事実が否定しています。

参考資料は「多数国間条約の裁判条項にもとづく国際司法裁判所の管轄権 : 裁判所の司法政策と当事国の訴訟戦略の連関に着目して」です。

これ、そもそも暗黒太陽自身が挙げている「事実上根拠は複数必要(https://goo.gl/3Xe6p5)」の資料なんですけどね。相変わらず、ろくに読みもせずURLを張り付けてこけおどしに使う芸は健在のようですね。



*1:ウィーン大使館条約第22条に相当するのが、ウィーン領事館条約第31条