「国際交通及び取引に対する不要な阻害を回避し、公衆衛生リスクに応じて、それに限定した方法」というのがWHOの基本方針

この件。

新型肺炎 中国の国連大使「過剰反応、避けるべきだ」 WHO緊急事態宣言に懸念

1/31(金) 12:23配信 毎日新聞
 新型コロナウイルスによる肺炎をめぐり、世界保健機関(WHO)が「緊急事態宣言」を出したことを受け、中国の張軍国連大使は30日、米ニューヨークの国連本部で記者団の取材に応じ「(感染拡大の抑え込みに向けて)逆効果になりかねない過剰反応は避けるべきだ」と述べた。
 感染拡大を受けて欧米の航空会社による中国便の運航見合わせが相次いでおり、「緊急事態宣言」で国内外にさらに波紋が広がることに懸念を示した形だ。
 張氏は、WHOのテドロス事務局長が「渡航や交易を制限する理由は見当たらない」として渡航制限勧告を見送ったことを繰り返し指摘。「(国際社会が)協力しながら責任ある態度でウイルスの流行と闘い、過剰な反応を避けることを望む」と述べた。【ニューヨーク隅俊之】

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200131-00000036-mai-int

なんか、中国がWHOに圧力をかけて“本来やるべき渡航制限”を回避している、みたいな論調に溢れているように感じますが、WHOは2005年に策定したINTERNATIONAL HEALTH REGULATIONS(国際保健規則)の中で、疾病の国際的拡大の防止、防護、管理、そのための公衆衛生対策は、「国際交通及び取引に対する不要な阻害を回避し、公衆衛生リスクに応じて、それに限定した方法」でやるべきだと明言しているんですよね。

Article 2 Purpose and scope

The purpose and scope of these Regulations are to prevent, protect against, control and provide a public health response to the international spread of disease in ways that are commensurate with and restricted to public health risks, and which avoid unnecessary interference with international traffic and trade.

第二条 目的及び範囲

 本規則の目的及び範囲は、国際交通及び取引に対する不要な阻害を回避し、 公衆衛生 リスクに応じ て、それに限定した方法 で、疾病の国際的拡大を防止し、防護し、管理し、及びそのための公衆 衛生 対策を提供することである。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kokusaigyomu/dl/kokusaihoken_honpen.pdf
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/246107/9789241580496-eng.pdf

小松志朗氏によれば、メキシコで発生した2009年の新型インフルエンザでWHOが「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」を宣言した時も「渡航制限や国境封鎖は推奨しないことが明記されていた」そうですし、事務局長も「もはや流行を封じ込めるのは無理であるから症状・被害の緩和に重点を置くべきだと明言していた」そうです*1

今回のWHOの動きもそれと同一路線と見え、中国の圧力とか関係なくWHOの原則的な方針であろうと解釈すべきだと思いますけどね。