国籍法改正案が国民に周知されていないという主張も散見されるのだが、では国籍法改正問題で大騒ぎしていた人は、全く同時期に審議されていた改正労働基準法案についてどれだけ知っているのだろうか?
現行法では、時間外労働の割増賃金が25%なのに対し50%にするよう共産党などは求めていましたが*1、政府自民党が提示した法案は、残業80時間を超えた場合に超えた分に関しては50%にするという不十分な内容。審議の結果、80時間を60時間にする譲歩があり、民主党も賛成にまわったため、この修正案で成立してしまいました。しかも中小企業には適用されません。
大体、本来なら労働基準法で許されている残業時間は月40時間までです。労使間で36協定が締結されている場合のみ、これを超えて残業させることができるわけです。労働組合が正常に機能しているなら、36協定(毎年更新する必要がある)の際に条件交渉もできるのですが、そういう例は自分の周囲では聞いたことありません。
(参考;36協定と労働基準法 - キノシタ社会保険労務士事務所)
この月40時間というのは、そもそもが労働者の健康を考えての条項です。それを踏まえるならせめて40時間以上で割増50%とすべきでしたでしょう。
残業を減らすインセンティブとして考えるなら、無条件で全ての残業を割増50%とすべきです。
ちなみにパート・アルバイトでも月40時間を超える残業をさせるときは36協定が必要です。
(参考;http://www.haken-sigoto.com/haken-kaisya/2006/03/post_15.html)
可能性の極めて薄い「中国人、大量移民」という妄想で大騒ぎしている間に、実際に労働者の命を奪っている過労死問題は不十分な対応で終わったわけです。
(参考;労基法改定案を可決/高橋議員反対 「極めて不十分」/衆院厚労委)
この労働基準法改正に問題を提起しているようなブログはほとんど見かけません。国籍法に比べてれば皆無と言って良いでしょう。
報道でもほとんど触れられていませんね*2。
国籍法改正反対論者の言葉を借りるなら、改正労働基準法は国民に隠れて成立した主権者不在の法律ということになりますね。
改正労働基準法が成立 残業代引き上げ盛る
2008年12月5日
長時間の残業を抑制するために、時間外労働の割増賃金を引き上げる改正労働基準法が、5日の参院本会議で可決され、成立した。自民、公明の与党と民主党などが賛成し、共産、社民党などが反対した。10年4月施行で、現在は一律25%の割増率が、月60時間を超える部分は50%になる。ただし、経営への影響を緩和するため、中小企業への適用は当分見送られる。改正法では、すべての企業に対し、月45時間を超える残業代の割増率を25%超に引き上げる努力義務も課す。労使で協定を結べば、年間の有給休暇のうち5日分を時間単位で分割して取得することもできるようにする。
http://www.asahi.com/job/news/TKY200812050136.html
陰謀論で述べるなら、自民党・民主党・公明党が経団連に買収され、「マスゴミ」*3も国民に隠蔽している、とかになるでしょうか?
なんだか、中国の陰謀より現実味がありそうに思えますねえwww。
国籍法改正反対かつ派遣社員やアルバイトで月40時間以上の残業を課せられている方へ。
可能性の薄い「中国の陰謀」よりも、自分の生活に直結する36協定(労働基準法第36条)について興味を持つべきだと思いますよ。
(追記2009/1/21)
ブクマに対する返答。
>private_John-Doeさん
>労組が機能するようなところなら、労働協約になるくらいの組織率もあろうて、毎年更新も別に必須ではなかろう。
根本的な勘違いをしてます。労組の有無に関係なく残業させる場合は36協定の締結が必須。協定の締結なしに残業(法定以上の勤務)をさせれば使用者側の違法行為となる。
なので、36協定の締結は使用者側にとっても必要なこと。このため、労働組合のない会社でも36協定は締結されている*4。
また、36協定の更新は現在明文規定はないが、有効期限の設定が必須であり、かつ労働基準監督署は「36協定の有効期間は最長でも1年間とすることが望ましい」とする指導方針をとっているので、よほどの例外的措置でもない限り、毎年更新が必須である。
コメントする前に少しくらい調べて欲しいね。
http://labor.tank.jp/q&a/ww28index.html