日本の防衛費について

なんだか、民主政権が防衛費を1000億円減らすのでは?とか大騒ぎしているようなので。


中国や韓国などが国防費を増加しており、東アジアのバランスが崩れるなど、もっともらしい主張がされていたりしますが、まずは、日本の防衛費の推移を見てみましょう。

年度 GNP(当初見通し) 一般会計(当初) 防衛関係費 対前年度伸び率 GNP比 一般会計比 一般歳出比
1955 75590 9915 1349 -3.3% 1.78% 13.61% 16.6%
1960 127480 15697 1549 0.6% 1.23% 9.99%
1965 281600 36581 3014 9.6% 1.07% 8.24%
1970 724400 79498 5695 17.7% 0.79% 7.16% 10.3%
1971 843200 94143 6709 17.8% 0.80% 7.13%
1972 905500 114677 8002 19.3% 0.88% 6.98%
1973 1098000 142841 9355 16.9% 0.85% 6.55%
1974 1315000 170994 10930 16.8% 0.83% 6.39%
1975 1585000 212888 13273 21.4% 0.84% 6.23% 8.4%
1976 1681000 242960 15124 13.9% 0.90% 6.22%
1977 1928500 285143 16906 11.8% 0.88% 5.93%
1978 2106000 342950 20945 12.4% 0.90% 5.54%
1979 2320000 386001 22302 10.2% 0.90% 5.43%
1980 2478000 425888 22302 6.5% 0.90% 5.24%
1981 2648000 467881 24000 7.6% 0.91% 5.13%
1982 2772000 496808 25861 7.8% 0.93% 5.21%
1983 2817000 503796 27542 6.5% 0.98% 5.47%
1984 2960000 506272 29346 6.55% 0.99% 5.8%
1985 3146000 524996 31371 6.9% 0.997% 5.98% 9.6%
1986 3367000 540886 33435 6.58% 0.993% 6.18%
1987 3504000 541010 35174 5.2% 1.004% 6.50%
1988 3652000 566997 37003 5.2% 1.013% 6.53%
1989 3897000 604142 39198 5.9% 1.006% 6.49%
1990 4172000 662368 41593 6.1% 0.997% 6.28%
1991 4132000 703474 43860 5.45% 0.954% 6.23%
1992 4837000 722180 45518 3.8% 0.941% 6.30%
1993 4953000 723548 46406 1.95% 0.937% 6.41%
1994 4940000 730817 46835 0.9% 0.948% 6.41%
1994*1 4885000 730817 46835 0.9% 0.959% 6.41%
1995 4928000 709871 47236 0.86% 0.959% 6.65% 11.2%
1996 4960000 751049 48455 2.58% 0.977% 6.45% 11.2%
1997 5158000 773900 49475 2.1% 0.959% 6.39% 11.3%
1998 5197000 776692 49397 -0.2% 0.950% 6.36% 11.1%
1999 4963000 818601 49322 -0.2% 0.994% 6.03% 10.5%
2000 4989000 849871 49358 0.1% 0.989% 5.81% 10.3%
2001 5186000 826524 49553 0.4% 0.956% 6.00% 10.2%
2002 4962000 812300 49560 0.0% 0.999% 6.10% 10.4%
2003 4986000 817891 49530 -0.1% 0.993% 6.06% 10.4%
2004 5006000 821109 49030 -1.0% 0.979% 5.97% 10.3%
2005 5115000 821829 48564 -1.0% 0.949% 5.91% 10.3%
2006 5139000 796860 48139 -0.9% 0.937% 6.04% 10.4%
2007 5219000 829088 48016 -0.3% 0.916% 5.79% 10.2%
2008 5269000 830613 47796 -0.5% 0.907% 5.75% 10.1%
2009 5102000 885480 47741 -0.1% 0.936% 5.39% 9.2%

*2

1960年代後半から1970年代の15年ほど日本の防衛費は年間10%台で増加し、その後もバブル崩壊まで年間5%台で増加ていたことがわかります。

中国やソ連から見れば、当時の日本の軍事費増加は脅威だったことでしょう*3。中国やソ連の軍事費は不透明な部分が多く判断するのは難しいのですが、中ソ対立、米ソ接近、ベトナム戦争激化、文化大革命の混乱の中、中国がどれほど、侵略を恐れていたか想像に難くありません。

当時、中国の軍事費も増加傾向にあったと見られますが、1980年代中盤になると、日本の防衛費は中国を追い抜いています。(ただし、防衛白書を見る限り、中国の軍事費は1981年から1985年の間に急激に減っており(570億ドル→110億ドル)、よく判らない。陸軍兵力の削減はあったようだが・・・。)

また、1980年代になると韓国の軍事費も顕著な増加傾向を見せます。

これらから何が言えるかというと、少なくとも軍事費ベースで見る限り、東アジアのバランスは別に安定して推移していたわけではない、ということ。そしてそれにも関わらず朝鮮戦争以後、大規模な軍事衝突は生じていないことをあわせて考えると、大騒ぎするような危機ではないと言えるでしょう。

で、防衛費の削減ですが、500億円規模の削減なら2004年などに行ってます。このときはGDPは停滞し、一般歳出の規模は小さくなってます。財政規模に応じて、防衛費を削減するのは当たり前の話ですね。ちなみに一般会計には、国債費や地方交付税などの、国が自由に使えない額も含まれてますので、それらを除いた一般歳出を見た方がよいでしょう。

実際に民主党政権が防衛費を削減するかどうか、したとしてどのような削減をするかはわかりませんが、1000億円程度の削減はありうると思いますし、削減可能な範囲だと思います。

前年比3%増の防衛費概算要求

防衛省は8月31日、平成22年度概算要求と業務計画案を決め、同日、財務省に提出した。概算要求額は対前年度比3%、1432億円増の4兆8460億円で、平成5年度の3・6%に次ぐ伸び率。防衛費は14年度の4兆9392億円をピークに翌年から対前年度比マイナス予算が続いており、累計では約2400億円減額された計算。

http://www.asagumo-news.com/news/200909/090903/09090301.htm

記事にもありますが3%増と言うのは伸び率で言えば17年ぶりの大きなものです*4。額で言えば、約1430億円増です(2009年防衛費47741億円からSACO関係112億、米軍再編成関係602億を除いた47028億円を基準として、2010年要求額が48460億円)。

増額要求は1400億円でも何も文句を言わない一方で、減額は1000億円だって認めない、というネット上での主張を見ると、国が滅んでも軍隊が残ってりゃ幸せ*5、って人が多いんだな*6と思いました。

*1:以降、GDP表示

*2:防衛白書による。1955〜1976年は1976年度版、1977〜1979年は1980年度版、1980〜1985年は1985年度版、1986〜1990年は1990年度版、1991〜1994年は1994年度版、1994〜2000年は2000年度版(以降はGDP表示)、2001〜2007年は2007年度版、2008・2009年は2009年度版による。SACOを含む。一般歳出比のみ防衛白書2009年度版による。

*3:まあ、それ以上に米国の存在が大きかったでしょうけど

*4:まだ要求段階ですけど

*5:税収は減少傾向にありますからねぇ・・・

*6:ネット上では