厚生労働省が日本の相対的貧困率を発表しました(2009/10/20)。
厚生労働省:相対的貧困率の公表について
これまでもOECDの算出した数値は出ていましたが、政府として算出発表したのは始めてです。
単純に説明すると、直接税や社会保険料を除いた年間の等価可処分所得が114万以下の人が15.7%いる、ということです。
もう少し分かりやすくいくつかのモデルケースで説明しましょう。
- 単身者世帯の場合
一人暮らしで働いている人の場合です。親からの仕送りなどはないものとします。
この場合は簡単で、所得税や社会保険料を引いた年収が114万円以下の人が、日本の相対的貧困者に属します。
大体月収は10万〜12万円程度でしょうか(賞与なしとして)。
感覚的には派遣とかの人に多そうです。正社員でもいないことはないかもしれません。
最低限の年金で生活している単身の高齢者の多くもここに属するでしょう。
- 大人二人世帯の場合
結婚して子供がいない家庭の場合です。
この場合は2人なので、114万円に2の平方根をかけます。すなわち所得税や社会保険料を引いた世帯年収が161万円以下の人が、日本の相対的貧困者に属します。
二人合わせた月収が14万〜18万円程度でしょうか(賞与なしとして)。
両方派遣とかあるかもしれませんが共働きでこのカテゴリに属する人は少ないでしょう。
一方が働けない状態の世帯(高齢者世帯や配偶者が病気・障害を患っている場合など)などはこのカテゴリに属する人が多いでしょう。
- 片親二人世帯の場合
片親で子供が一人の場合です。
この場合も2人世帯なので、所得税や社会保険料を引いた世帯年収が161万円以下の人が、日本の相対的貧困者に属します。
親の月収は14万〜18万円程度でしょうか(賞与なしとして)。
これは母子家庭・父子家庭では結構ありそうです。若い親が多いでしょうけど子供が病気だったりリストラなどで壮年の親でも起こり得るでしょう。
- 片親三人世帯の場合
片親で子供がニ人の場合です。
この場合は3人世帯なので、所得税や社会保険料を引いた世帯年収が197万円以下の人が、日本の相対的貧困者に属します。
親の月収は17万〜22万円程度でしょうか(賞与なしとして)。
片親二人世帯よりも相対的貧困者に属する可能性は高いでしょう。
上記の世帯が全て貧困者であるとは限りませんが、貧困者に属する可能性が他の場合より高いであろうとは思えます。相対的貧困者に属する人たちはごく一部を除けば概ね困窮した生活を送っていることも容易に想像できます。一方で上記の2倍の収入があれば、少なくとも一般的な認識として貧困とはみなされないでしょう(片親三人世帯はキツイかも知れませんが)。
つまりOECDの基準による相対的貧困者の条件を満たす世帯は、国内の一般的な認識から見ても貧困者であると言え、相対的貧困率は指標として有用であることを示唆しているわけです。
ざっとネットを見た限り、ネトウヨを除けば”やはり格差はひどい状況だ”という認識でこの報道を捉えている人が多いようです。ま、一般的な認識で間違ってないと思います。
これに対するネトウヨの反論はなかなか味わい深いものがあります。
ネトウヨの反応
というのがネトウヨ反論の拠り所ですがこれ自体は別に間違ってません。問題はその解釈がおかしいのです。
例えばこういう事例。
id:m-matsuoka 収入が百万円以上なら世界の富裕層。(略)
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.asahi.com/national/update/1020/TKY200910200185.html
m-matsuoka氏は、等価可処分所得100万で”自分は富裕層”と感じられる生活を”日本で”、”資産を食い潰すことなく”営めるのでしょうか?
まず無理だと思うのですが・・・。
”年収100万は世界的に富裕層”というこの手の主張は、そもそも世界的に見れば日本の物価も高額である事実を捨象しなければ成立しません。
id:metabodepon なぜ相対的貧困率を重視するのだろう? 僕は絶対的貧困率をゼロにする活動の方が重要だと思うのだが。(略)
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.asahi.com/national/update/1020/TKY200910200185.html
これも一見正論に見えますが、日本の場合は相対的貧困の対策がそのまま絶対的貧困の対策になりますから前者を重視するのは当たり前ですね。何せ、絶対的貧困の定義は1日1米ドル以下の収入です。年収4万以下の人を救済するのは確かに重要ですが、年収100万以下の人の救済をすれば自動的に救済されるわけですから、分けて考える理由が分かりません。
まさか、年収が4万超100万以下の人は救済の必要なしという主張でもないでしょう。