吹いた話

ふと思い立って、名誉毀損で訴えられて敗訴した東中野修道氏のその後について検索してみた。
裁判所で「被告東中野の原資料の解釈はおよそ妥当なものとは言い難く、学問研究の成果というに値しないと言って過言ではない」*1とまで言われて、教壇に立っていられるものかとも思ったが、そのまま亜細亜大学法学部教授として在籍していた。

名誉毀損で有罪確定してなお教壇に立ち続けてるというのは、亜細亜大学の懐が深いのか何なのか・・・。是非、産経新聞あたりに、モンスター・プロフェッサーとでも非難してもらいたいものだが。
http://www.asia-u.ac.jp/teacher/profile/profile.php?id=84

2011年度も以下の講義を担当するようす。

法学部 演習(東中野修道) 3年 東中野 修道 3年次 通年
法学部 政治思想史 東中野 修道 2・3・4年次 前期集中
全学共通科目(テーマ研究) 戦争とプロパガンダ <テーマ研究> 東中野 修道 1・2・3・4年次 通年
全学共通科目(表現とメディア・社会) 社会思想史Ⅰ 東中野 修道 1・2・3・4年次 前期
全学共通科目(表現とメディア・社会) 社会思想史Ⅱ 東中野 修道 1・2・3・4年次 後期
全学共通科目(表現とメディア・社会) 日本思想史ⅠA組
日本思想史Ⅰ 東中野 修道 1・2・3・4年次 前期
全学共通科目(表現とメディア・社会) 日本思想史Ⅰ 東中野 修道 1・2・3・4年次 前期
全学共通科目(表現とメディア・社会) 日本思想史ⅡA組
日本思想史Ⅱ 東中野 修道 1・2・3・4年次 後期
全学共通科目(表現とメディア・社会) 日本思想史Ⅱ 東中野 修道 1・2・3・4年次 後期
法学研究科 政治思想史特別講義 東中野 修道 大学院 通年
法学研究科 政治思想史特別演習 東中野 修道 大学院 通年
法学研究科 政治思想史特殊研究 東中野 修道 大学院 通年

http://asia-u.e-campus.gr.jp/browse/browseSearch/P/TEACHERCD/O/D/T/79

「戦争とプロパガンダ <テーマ研究>」とかテーマからして怪しい科目があったので中身を見てみると

授業計画
(1)ポンソンビー『戦時の嘘――大戦中の各国をかけめぐった色とりどりの嘘』
(2)英国の正式の宣伝局「クルーハウス」
(3)「イギリス戦争特別任務団」(The Bitish War Mission)
(4)「クルーハウス」の長官ノースクリッフ卿のプロパガンダ
(5)イギリスの「戦時の嘘」のまとめ
(6)ドイツの『エコー』(Das Echo)紙とフランスの『ジャーナル』(Le Journal)
(7)ドイツの「戦時の嘘」のまとめ
(8)2500万フランの国家予算を投入したフランスの「新聞会館」(La Maison de La Presse)
(9)フランスの「戦時の嘘」のまとめ
(10)カメラは嘘をつかない? 書き割り?
(11)ハリウッド製「実写」フィルム
(12)アメリカの「戦時の嘘」のまとめ
(13)イタリアの嘘
(14)『タイムズ』紙など新聞の嘘
(15)まとめ
(16)1930年代の南京
(17)イーストマン教授「中国の兵士は掠奪・強盗・殺人などやりたい放題であった」
(18)戦時国際法ハーグ陸戦法規
(19)捕虜と俘虜、その違い
(20)熊本第6師団「転戦実話」
(21)南京の人口
(22)埋葬
(23)ベイツ「メモランダム」
(24)アメリカの新聞記事
(25)国民政府軍事委員会直属国際問題研究所編「日本人の戦争行為」
(26)南京安全地帯国際委員会「市民重大被害報告」
(27)南京アメリカ領事の総括
(28)毛沢東の講演「持久戦論」
(29)コーヴィル武官の調査報告書
(30)まとめ

どうやって学生を洗脳しようとしているか手に取るようにわかる気がするのだが・・・

教科書・指定図書
ポンソンビー『戦時の嘘――大戦中の各国をかけめぐった色とりどりの嘘』(コピー配布)
 東中野修道編著『1937南京攻略戦の真実』小学館文庫、平成15年。

指定図書が既に東中野氏自身によるプロパガンダってのがニヤリとできるところ。



法学研究科特別講義

東中野氏の「政治思想史特別講義」も気になるところ。

講義概要/演習概要
 日中間のホットな政治問題となっている日本軍の南京占領を日中英独の資料に基づき検証する。第1回目は受講者の関心に合わせて「日本軍南京占領」にかんする諸問題のなかから幾つかのテーマを選択し、発表者をテーマごとに決める。第2回目以降は、その発表に基づき、全体討議を行い、問題点にかんする理解を深めていく。

一般的に言って、南京事件がそれほど「日中間のホットな政治問題」になっているとは思えないのだが・・・

講義計画/演習目標
1.陥落前の人口
2.陥落後の人口
3.南京安全地帯
4.アメリカの新聞記事「南京大虐殺物語」
5.南京安全地帯国際委員会の抗議
6.国際委員会の「市民重大被害報告」
7.南京の欧米人の目撃は「合法的処刑」の1件のみ
8.中国国民党中央宣伝部の China at War
9.毛沢東の「持久戦について」
10.シナ事変1周年の英文雑誌
11.ティンパーリ編『戦争とは何か』第1章
12.ティンパーリ編『戦争とは何か』第2章
13.ティンパーリ編『戦争とは何か』第3章
14.ティンパーリ編『戦争とは何か』第4章
15.Hsu Shuhsi, The War Conduct of the Japanese, Shanghai: Kelly & Walsh 1938.  Hsu Shuhsi, A Digest of Japanese War Conduct, Shanghai: Kelly & Walsh 1939.  Hsu Shuhsi, Documents of the Nanking Safety Zone, Shanghai: Kelly & Walsh 1939.  Hsu Shuhsi, A New Digest of Japanese War Conduct, Shanghai: Kelly & Walsh 1941.


16.中華民国政府顧問ベイツ教授と宋美齢の親友フィッチ夫人
17.中国国民党中央宣伝部編『中央宣伝部国際宣伝処工作概要』(対敵課工作)
18.中国国民党中央宣伝部編『中央宣伝部国際宣伝処工作概要』(外事課工作)
19.「南京特務機関報告」第1回報告
20.「南京特務機関報告」第2回報告
21.「南京特務機関報告」第3回報告
22.南京憲兵准尉の回想
23.南京特務機関員の回想
24.不法戦闘員と合法戦闘員
25.安全地帯における不法戦闘員の摘発処刑
26.誰も「戦争捕虜(POW)」処刑とは批判しなかった
27.南京駐箚英米領事の総括
28.国民党政府の外人記者会見
29.連合軍が神奈川県を占領した当初1週間の「事故発生調査表」
30.まとめ

既に論破済みのカビの生えた否定論を展開しようとしていることが表題だけで何となく伝わってくる。

吹いた箇所

受講上の注意
 受講者はあくまで学問的批判と学問的検証に立ち政治的自己主張を慎むこと。

お前が言うな〜

要約すると、講師である東中野氏の政治的自己主張を受講者は否定しないように、ということか?

「もっとボクに優しくしてよ!」
って感じで。


成績評価方法・基準
 各人の討論と報告を考慮して評価する。ある程度の英語力と国際法の基礎知識があることが望ましい。

「ある程度の英語力」がある学生が来たら「bayonet」の恣意的な訳に気づかれちゃうんじゃないんでしょうか?東中野先生。


ちなみに

こんなことで亜細亜大学法学部は大丈夫か?とも思うのだが、法学部で日本史を教えている今津敏晃氏は使用している教科書を見る限りまともな講師のようなので少し安心。

教科書・指定図書
【教科書】
 加藤陽子満州事変から日中戦争へ』(岩波新書、2007年)
 吉田裕『アジア・太平洋戦争』(岩波新書、2007年)
【指定図書】
 小林啓治『総力戦とデモクラシー』(吉川弘文館、2008年)
 伊香俊哉『満州事変から日中全面戦争へ』(吉川弘文館、2007年)
 吉田裕・森茂樹『アジア・太平洋戦争』(吉川弘文館、2007年)
 加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社、2009年)
 山田朗『軍備拡張の近代史』(吉川弘文館、1997年)
 専修大学出版企画委員会編『改訂版 知のツールボックス』(専修大学出版局、2009年)
 Marius B.Jansen "The Cambridge History of Japan" Vol.5,Cambridge University Press,1989
 Peter Duus "The Cambridge History of Japan" Vol.6,Cambridge University Press,1989

*1:2007年11月2日東京地裁判決