朝鮮学校無償化適用妨害事件

前回のエントリーでこのように書きました。

法的にグレーな状態のまま行われる差別の事例としては、朝鮮学校のみ無償化対象から外そうとして行っている様々な妨害行為などが代表的でしょう。朝鮮学校のみを無償化適用除外する法的根拠はありません。差別の実行主体はそれを知っているから法的判断はグレーのまま、妨害を続けて執行を遅らせる手段を取っています。

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20120216/1329408473

この件について具体的には月刊イオで以下のようにわかりやすく述べられています。

 高校授業料無償化・就学支援金支給制度の法的根拠となる「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(略称=高校無償化法)は2010年3月16日に衆議院で可決、同月31日には参議院で可決・成立し、4月1日 から制度が施行された。ただ、09年9月の民主党政権樹立後、法案の国会上程がスケジュールに上る同年末から「朝鮮学校外し」の流れは政治とメディア、排外主義勢力によって公然と進んでいた。
 時の鳩山政権は無償化の対象に朝鮮学校を含めることの是非について、「第三者機関」を設置して対応を検討するという噴飯ものの策をとった。菅直人政権発足後の同年11月には延坪島砲撃事件を受けて朝鮮学校への制度適用審査プロセスを停止。その後、菅首相は昨年8月29日、停止していた審査手続きを再開させるよう文科省に指示したが、現在まで進展はない。

http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/dc99c17f3ca440cd577d10db90448d92

高校無償化から朝鮮学校のみを除外することは法的に全く根拠がなく民族差別そのものですから、政府が適用除外を決定してしまえば、起こされるであろう裁判でほぼ確実に国が敗訴します。なので、日本政府は適用除外を決定すらせず、審査中という名目で実施を徒に引き延ばし、事実上の適用除外にしています。

この手段の悪質な点は二つあって、審査中のこの時点で裁判を起こしても、”審査中”という理由で裁判が成立しない点がそのひとつです。

悪質さのもう一点は、実施をここまで引き延ばして遅らせている以上、今後適用が認められたとしてもこれまで受益できなかった人たちに対する補償をどうするのかに起因する問題です。審査中という名目で事実上の適用除外を続けてきた以上、適用が認められればそれまで不法な行為を容認してきたことになります。そのような評価をされないために、審査そのものにバイアスがかかる可能性が高いわけです。
つまり、審査結果が適用除外であれば、今まで続けてきた事実上不法な適用除外行為を結果オーライで不問に付すことができます。

しかしこの場合、確実に予測される裁判に対して国はどう対応するつもりでしょうか?
答えは簡単です。裁判を起こしても原告側に利益が発生しないようにすればいいのです。
つまり、高校無償化制度を廃止してしまえば、朝鮮学校側が裁判を起こしたとしても、「勝っても負けても、あなたには何の利益もありません」として裁判が成立しなくなります。

有名無実の空証文となって久しい民主党マニフェスト。今度は世界標準であるはずの高校無償化さえもが、民自公の三党「だけ」で反故にされようとしているのですから話になりません。

■高校無償化見直し 密室談合に流れる民自公/国会の場で堂々議論を(14日付しんぶん赤旗
 13日の衆院予算委員会は、高校授業料の無償化をめぐって民自公が結んだ「3党合意」について、自民党が「民主党の態度が不誠実だ」として審議に応じず、午後に予定されていた審議が中止となる事態となりました。
 3党合意は昨年8月、予算の歳入となる特例公債法案の成立と引き換えに密室談合で結ばれたもの。自民、公明両党に従い、高校無償化を2012年度以降、「政策効果の検証をもとに必要な見直しを検討する」としました。

http://d.hatena.ne.jp/vanacoral/20120215

さて、この民主党自民党公明党ら3党による謀略がどこに落ち着くか、目が離せないところですが、もし、これで高校無償化廃止になった場合、廃止決定後に朝鮮学校の審査はうやむやになるか、適用除外が決定されるかするでしょうね。
そして裁判すら起こせない状況のまま、差別的取扱いだけが前例として残ることになるでしょう。


月刊イオでは上記の記事の中で以下のように述べています。

 朝鮮学校に対する「高校無償化」適用をめぐる問題は政争の具、外交的駆け引きのカードと化し、さらには補助金支給問題とともに朝鮮学校に対する圧力の道具として機能しているのが現状だ。「不法国家・北朝鮮」と関係する朝鮮学校およびその運営に携わる総聯が「パブリック・エネミー」(公共の敵)と名指しされ、社会の沈黙の同意の下で排除されるという「ディストピア的状況」が出現するのもそう遠い未来の話ではないかもしれない。

http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/dc99c17f3ca440cd577d10db90448d92

遠くない未来どころか、既に東京都知事大阪府知事らによって名指しで、公共の敵扱いされているように思います。
ディストピアは既に出現していて、それが今後どれだけ広がるか、食い止めるまでのにどれほどの数の犠牲者を出すのか、という段階に入っているのではないかと。

私は10年後あるいは20年後に、今日この日に日本人として日本に住んでいたことを深く恥じることになるのではないか、と恐れています。