AAが違憲とかいう意見に対する回答

女性枠ですが、歴史的に形成された不平等を是正するための暫定的な「積極的差別是正措置」として、PA(Positive Action)、AA(Affirmative Action)などと呼ばれており、そのひとつにクォータ制というのがあります。
クォータ制PA/AAの中でも厳格な方で、その中でも法律で強制したものについてはフランス、イタリア、スイスで違憲判決が出ています*1

id:Jolokia
クォータ制はフランス、イタリア、スイスでも違憲判決が下ってるが? 2012/05/27

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/scopedog/20120526/1338001828

その意味で、このブコメは正しいとは言えます。

ですが・・・
フランスでは、1982年11月18日に憲法院でクォータ制(25%を女性とする制度)に違憲判決が出ていますが、1999年に憲法改正され、2000年にパリテ(半数を女性とする制度)が合憲と判断されています。
イタリアでは、1995年9月12日に憲法裁判所でPA違憲とされましたが、やはり憲法改正され政治代表における男女均等原則が議決されるに至っています。
スイスについては、1997年3月19日に連邦裁判所でPA違憲とされ、今のところ憲法改正には至っていません。

ちなみに韓国でもクォータ制は導入されていますが、違憲判決は出ていません。

違憲判決だけに触れ、その後憲法改正したことに触れないのは誠実ではありませんね。


AAが違憲だとか決め付けた意見についても、「法の下の「平等」とは、絶対的平等の意味ではなく、相対的平等であり、合理的な理由によって異なる取扱いをすることは許されると解するのが通説」*2だそうですよ。

人種とは違うとか言っている意見については、まあ、あなたはそう思いたいのですね、としか感じません。


id:serio
アファーマティブ・アクションに対する賛否はアメリカでもある。ライス元国務長官は反対派。アファーマティブ・アクションへの反対自体がけしからんという主張には賛同できない。効果が薄い政策との研究結果もある。 2012/05/26

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/scopedog/20120526/1338001828

そりゃ賛否両論あって当たり前ですが、PA/AAにも厳格なものから緩やかなものまで様々あるのに、一括して白黒つけようとするのはどうかと思いますね。歴史的に形成された不平等を是正するための暫定的な「積極的差別是正措置」には様々な手段があるわけで、女性枠もその一つ、しかも女性枠にしても具体的に法律で強制するのか、努力目標にするのか、受け入れ側に何らかのインセンティブを用意するのか、様々ありえるわけです。
「反対自体がけしからん」とまでは言ってないですが、「積極的差別是正措置」そのものは必要だと思います。serio氏が一切の「積極的差別是正措置」は不要だと考えるのもそれはそれで結構ですけど、では「歴史的に形成された不平等」はどのように解消すれば良いのでしょうか?それとも、そもそも「歴史的に形成された不平等」自体が存在しないと考えているのでしょうか?

EUの目標

o-kojo2さんが「性別による不平等の解消を目指した政策@ヨーロッパ - おこじょの日記」でEUにおける男女平等への戦略を紹介しています。2010-2015の目標ということで、フランスもイタリアも憲法改正違憲状態を解消した後ですね。

それにしても日本の改憲派は男女平等のための改憲なんて考えもせず、ひたすら人権の制限や軍事化のための改憲しか唱えないんですね・・・

*1:「日本におけるポジティヴ・アクションの可能性―クォータ制の有益性と合憲性―」www.sgu.ac.jp/law/kagayaku/takahashi.pdf

*2:芦部信喜 (2007)『憲法 第四版』岩波書店 via 「日本におけるポジティヴ・アクションの可能性―クォータ制の有益性と合憲性―」