自虐史観の真の犠牲者・労働組合

キリマンジャロの雪」(2011)というフランス映画があります*1
リストラされた元労働組合委員長の老人が主人公ですが、主人公が語る台詞の中にこういうものがあります(うろ覚えなので正確ではありませんが)。

「確かに俺たちは待遇改善のために頑張ってきた。しかし今の若者にとっては有給休暇も8時間労働も当たり前だ。あって当然なんだ。俺たちは彼らに自分たちが頑張って得てきた物を伝えることに失敗したのだ。」

戦前日本では労働運動は壊滅状態でした。戦後になって労働運動が再開し幾多の苦難を越えて現在の労働待遇があるわけですが、ここまでの道程を自分はどれほど知っていると言えるのか、映画を見ていてそう自問しました。
現在に至るまでの労働運動が平坦な道を効率よく進んできたわけではないのは確かです。そして今の状態が満足できるものでないことも確かです。ですが、そんなの当たり前です。どんな人もどんな組織も、前進と停滞、試行錯誤を繰り返します。

労働組合は直接的には組合員のためですが、結果として労働者全体の賃金・労働環境の向上に少なからず貢献してきました。
労働環境を整えたのは直接的には企業側ですが、労組の要求なくして経営陣が自主的に環境整備に資金を投じるでしょうか。

しかしネット上では今や労組は他国のスパイ扱いです。
他国のスパイが日本の労働者の生活向上を訴えるなどナンセンスにもほどがありますが、そうした自虐史観がはびこっていますね。

*1:同名のアメリカ映画とは別物です。