「歴史歪曲・徴用工像設置に反対する市民の会」とやらの背景情報

こんな記事がありまして。
韓国で徴用工像の設置に「反対」する人に聞いてみた 歴史問題を「日本のせい」と嘯く文在寅政権に反発する人が増加中(2019.5.16(木) 李 正宣)

冒頭、こんな感じで始まります。

「あそこに見える銅像が歴史をどのように歪曲しているのか、釜山市民と国民の皆さんに申し上げたいです」
 5月10日午後、釜山市・草梁洞(チョリャンドン)の日本国総領事館から180メートル余り離れた所にある広場で、徴用工像の設置に“反対する”集会が開かれた。
 この広場は日本総領事館の前に建てる目的で製作された徴用工像の臨時設置場所で、「歴史歪曲・徴用工像設置に反対する市民の会」の十数人の会員たちは、この徴用工像を見合わせながら、一時間あまり集会を続けた。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56390

タイトルの「歴史問題を「日本のせい」と嘯く文在寅政権に反発する人が増加中」などという記載を見ると、この「歴史歪曲・徴用工像設置に反対する市民の会」、まるで自然発生したかのように読めますけどね。

この2019年5月10日の「歴史歪曲・徴用工像設置に反対する市民の会」によるデモは「第3の道(제3의길)」という韓国サイトにアップされています(5月14日)。
역사왜곡 외교참사 노동자상 반대 투쟁(歴史歪曲外交惨事労働相反対闘争)

この記事は「歴史歪曲・徴用工像設置に反対する市民の会」によるデモを「第3の道(제3의길)」が取材したかのような体裁で書かれています。

민주노총 등이 추진하는 강제징용 노동자상 설치를 둘러싼 갈등이 고조되고 있다.
‘반일민족주의를 반대하는 모임’ 등 징용 노동자상 설치를 반대하는 시민들이 지난 5월 10일 오후 12시 반부터 1시간 동안 부산 동구 초량역 근처 정발 장군 동상 앞에서 ‘역사왜곡 외교참사 노동자상 설치 반대한다’는 주제로 동상 재설치를 반대하는 집회를 가졌다.
民主労総などが推進する強制徴用労働者上のインストールをめぐる葛藤が高まっている。
反日民族主義に反対する会」など徴用労働者上のインストールに反対する市民が、5月10日午後12時半から1時間の間、釜山東区草梁駅の近く鄭撥将軍の銅像の前で「歴史歪曲外交惨事労働相設置に反対する」は、テーマに像の再インストールを反対する集会を開いた。

http://road3.kr/?p=17065&cat=146&ckattempt=2

李正宣記事には「スピーカーを手に取ったイ・ウヨン代表が発言を続ける。」とあり、「歴史歪曲・徴用工像設置に反対する市民の会」の代表がイ・ウヨンなる人物であることがわかります。
別の報道記事「“역사왜곡 반대” 내일 부산서 노동자상 반대집회..갈등 고조」によると、5月10日のデモは前日に予告されていたことと予告した人物が落星台経済研究所の李宇衍(이우연)氏であることがわかります。
f:id:scopedog:20190527002100p:plain
(‘반일민족주의를 반대하는 모임’을 주도하는 이우연 낙성대 경제연구소 연구위원의 페이스북 캡처.)

で、改めて「第3の道(제3의길)」の執筆者陣を見ると果たして、落星台経済研究所の李宇衍(이우연)氏が載っています。
f:id:scopedog:20190527002126p:plain
「第3の道(제3의길)」は執筆者の一人が代表である団体のデモを、そうとは記載せずに第三者然として報じているわけです。
そして、この李宇衍(이우연)氏は以下の産経新聞記事でも出てきます。

【歴史戦・第17部新たな嘘(上)】韓国で染みついた「奴隷」イメージ 背景に複雑な賃金計算法 「『意図的な民族差別』事実と異なる」韓国人研究者が結論」(2017.4.11 05:00)

 日本統治下で国内の炭鉱などに動員された朝鮮人たちは劣悪な環境で「奴隷」のように働かされた。給与もないか、あっても少額にすぎなかった-。こんな一方的な見方が韓国内では定着している。国際社会でもナチス・ドイツユダヤ人強制労働と同列であったとのイメージは広がりつつある。
 果たしてこれが「真実」なのかと疑問に思い、終戦前の資料を基に調査を行った韓国人研究者がいる。日本統治が朝鮮半島の近代化に与えた影響を調査する落星台(ナクソンデ)経済研究所の研究員、李宇衍(イ・ウヨン)(50)だ。

https://www.sankei.com/politics/news/170411/plt1704110003-n1.html

ちなみにこの産経記事での李宇衍(イ・ウヨン)説は「強制動員真相究明ネットワークニュース No.9 2017 年6月19日(pdf)」で竹内康人氏から反論され、李宇衍(イ・ウヨン)説が強制連行否定論に不都合な部分を無視していることを指摘されています。天引き部分が山ほどあるのに、そこを無視しているんですよね。
要するに朝鮮人強制連行を否定する歴史修正主義者の一人なわけですが、一韓国人が独自に調べた結果歴史修正主義者になったというよりは、このあたりが始祖ですかね。

【論説】戦時期日本へ労務動員された朝鮮人鉱夫(石炭、金属)の賃金と民族間の格差, 李宇衍, エネルギー史研究 : 石炭を中心として. 32, pp. 63 - 87, 2017-03-24. 九州大学附属図書館付設記録資料館産業経済資料部門

2017年の論文ですが、内容としては三輪宗弘氏の主張をそのままなぞっているようなもので賃金の民族間格差を否定しているものです。というより、謝辞に三輪氏の名前が挙げられていることを見ると、論文自体が三輪氏の指導によるものであろうと思えます。

そして、この三輪氏も同じような記事を産経に出しています。
「炭鉱現場、待遇の差なかった」 九大・三輪宗弘教授(2015.9.28 07:10)

韓国国内で文政権を非難し歴史修正主義的に日本を擁護する団体の後ろには必ず産経の影がちらついているという・・・。

ちなみに上記産経記事の三輪氏の主張ですが、1940年の大阪朝日新聞朝鮮半島版が朝鮮人の好待遇を報じていることを「朝鮮半島から日本内地に渡った炭鉱労働者が厚遇されていた実態」の根拠にしています。朝鮮半島から労働力を呼び込みたいのですから好待遇だと吹聴するのは当然で、そんなことは何の根拠にもなりませんけどね。
労働法などの規制がある現在でも求人情報の雇用条件は慎重に読まないとブラックな労働条件に騙されるのに。


それはともかく「歴史歪曲・徴用工像設置に反対する市民の会」とやらは日本の歴史修正主義者に近い人物を代表におく団体で、まあそういう団体が「文在寅政権に反発する人」としてカウントして日本国内で李正宣氏が報じているということです。
何段階にもロンダリングして偽装しているようですけどね。