孤立に喜ぶ倒錯国家

大方の予想通り*1日韓通貨スワップ協定の30億ドル分が7月に終了するようです。

日韓通貨スワップ協定、30億ドル分が終了 韓銀「必要なし」
サーチナ 6月24日(月)20時0分配信

 7月3日に期限を迎える30億ドル分の日韓通貨交換(スワップ)協定について、韓国銀行(中央銀行)は24日、延長しないことで合意したと発表した。両国間の通貨スワップは、日中韓3国による通貨スワップの取り決め(チェンマイ・イニシアチブ)による100億ドル分だけとなる。複数の韓国メディアが報じた。
 韓国銀行は、「韓国と日本の当局は、両国の中央銀行間で締結した30億ドル相当の円・ウォン通貨スワップ契約が2013年7月3日に満了することから、これを延長しないことにした」と明らかにした。
 規模が30億ドル相当と韓国の外貨準備高(3281億ドル)の1%に過ぎないことや、ドルではなく互いの通貨である円とウォンを融通しあう契約であること、両国の金融市場が通貨スワップを切実に必要とする状況ではないことを理由とした。
 しかし、韓国では両国の関係悪化が影響を与えたとの見方が出ている。両国は2011年10月、融通枠を130億ドルから700億ドルに拡充したが、2012年に竹島(韓国名・独島)問題をめぐって関係が急速に冷え込んだことから延長せずに終了した経緯がある。今回も、「安倍政権の右傾化と無関係ではない」との分析があるという。
 韓国政府は、30億ドル分の日韓通貨スワップを打ち切っても韓国金融市場への影響は特にないとの見方を示した。(編集担当:新川悠)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130624-00000053-scn-kr

高々30億ドル程度の通貨スワップ協定は、通貨防衛の上では微々たる影響力しかありませんので、アジアの通貨防衛における日韓協力を示す象徴的な意味合いの方が大きい状況でした。この状況で、日本政府は通貨スワップを“日本が寛大にも韓国に与えてやっている恩恵”として尊大な態度をとり、韓国政府は相互に協力の意志があって成立する双方向の通貨防衛として扱っていました*2

通貨スワップ協定の意味としては韓国政府の理解の方が正しく、日本政府の態度が過剰に尊大であると言えます。

もちろん、日本政府の尊大な態度は巨大な外貨準備に裏づけされているわけですが、今回の場合かかっている融通枠は僅か30億ドルに過ぎませんので、日本政府の態度は傍から見てもはした金をふんぞり返って恵んでやると言った鼻持ちならないものでしかありません。

30億ドル分の終了後もCMI枠の100億ドル分の融通枠は残りますが、発動される可能性はほぼ皆無*3ですので事実上、日韓通貨スワップ協定は終了したと言えるでしょう。そしておそらく復活することもないでしょう。

次期参院選過半数をとって安定政権になる安倍自公政権下で日韓外交・日中外交とも絶望的に悪化するでしょうが、まあそれも平和ボケした国民の選択です。目先の株価に踊らされて人権・平和を軽視した報いをどのような形で受けるのかはわかりませんが、なるべく被害が少なければよいのですけどね。

さて、嫌韓バカなどのレイシストにとっては願ったりかなったりの政治状況が1ヶ月後には到来しますが、それは人権・平和といった価値観が海外と隔絶された精神的な鎖国状態であり、ある種の引きこもりとも言えます。しかし、外部から見て異常な状態でありながら、当事者にとっては“働いたら負け”と言わんばかりの勝利状態です。倒錯国家の誕生です。

まあ、国内外の政治状況は予測が困難ですから別の道を辿るかも知れませんけどね。


日韓通貨スワップ終了で倒錯した喜びに沸く日本を尻目に、中国はイギリスとの通貨スワップ協定を結んでいます。

中英中央銀行、通貨交換協定を締結
サーチナ 6月24日(月)17時4分配信

 中国とイギリスの中央銀行である中国人民銀行イングランド銀行は22日、上限2000億元・200億ポンドの通貨交換(スワップ)協定を締結した。協定は期間3年で、双方の同意があれば延長できる。24日付中国証券報が伝えた。
 中国人民銀行は、協定の締結は両国間貿易に支援を提供することや、金融の安定化を図ることを目的としており、中国人民銀行イングランド銀行の金融分野協力の新たな成果でもあると強調している。(編集担当:陳建民

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130624-00000045-scn-cn

韓国は中国と560億ドル規模の通貨スワップ協定を結んでいます*4。中国は韓国の他、香港、マレーシア、ベラルーシインドネシア、アルゼンチン、アイスランドシンガポールニュージーランドウズベキスタン、モンゴル、カザフスタン、タイ、パキスタンUAE、トルコ、オーストラリア、ウクライナ、ブラジルと通貨スワップ協定を結んでいます*5。フランスやスイスも秋波を送っています。

中国の通貨スワップ協定は単純な通貨防衛を超えて人民元の国際化への思惑がありますが、円が引きこもるのとは対照的と言えます。ちなみに日印通貨スワップ協定は基本的に米ドルを介しますので円の国際化には貢献しません。

*1:http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130612/1371047978

*2:http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130614/1371218386

*3:20億ドル以上の融通にはIMFの介入を条件とするため、機動的な運用ができずほとんど役に立ちません。

*4:http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20111031/1320065157

*5:http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130330/1364654217