強姦された被害女性に対し強姦魔と結婚すればいいと勧める行為をどう思うか

こういうコメントがありました。

flint_lock 2013/07/22 09:26
自民党が50年かけて壊してきた日本」というのはすさまじい評価ですが、たとえば中曽根内閣での国鉄民営化は、すべきではなかったという立場ですか?

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130721/1374424361

国鉄民営化という個別イシューで決められる話でもないでしょうに、コメント欄がそれで進展しているのでそれはそれで参加者に委ねます。

自民党が結党したのは1955年で与党として誕生しています。その前年1954年に自衛隊が創設されていますが、自民党政権憲法9条に違反するこの組織をその後50年にわたって黙認し続けました。その期間のほとんどにおいて、自民党は与党であったにも関わらず憲法をないがしろにしてきた政党です。
今の安倍首相や石原慎太郎氏、小泉元首相など、憲法など守らなくても大したことはない、と憲法99条*1に違反する政治家を多数生み出してきた大きな原因が、50年にわたって憲法を無視してきた自民党にあります。
自民党はその主張に改憲を掲げる倒錯した保守政党*2です。ならば1955年結成後すぐに改憲を掲げて選挙戦を戦い衆参で3分の2を獲得できるように正々堂々と国民に訴えるべきでした。しかし、自民党改憲を前面に出さずに党益を優先し、解釈改憲や国内的には「自衛隊は軍隊ではない」という詭弁*3を弄して50年間国民を欺いてきたわけです。
その結果、憲法を守らない政党が50年以上にわたってほとんどの期間与党であり続けるという異常な状態を作り出してきたわけです。
これがまさに「自民党が50年かけて壊してきた日本」の姿です。

50年かけて5兆円近い規模の予算を持つ現在の自衛隊を解体するのは容易ではありません。短期に解体すればアジアの軍事バランスが崩れますので、解体するにしてもかなり長期間を掛けざるを得ず、その間は違憲状態が続きます。しかし1955年〜1970年くらいの時期なら解体しても軍事バランスへの影響は今ほど大きくは無かったでしょう*4 *5。したがって、自民党憲法に誠実にあろうとすれば、1955年からの10年間くらいで、国民に改憲自衛隊放棄を迫るべきでした。
しかし自民党はそれをやらず、詭弁で国民を騙す道を選択したのです。国民もまた、その詭弁に感づいていながら高度経済成長という果実に酔って敗戦と引き換えに得た民主主義を弄び、浪費してきました。

自衛隊が世界有数の軍事力に成長させた既成事実を持って今、安倍自民党改憲で既成事実を承認させようとしています。さながら、強姦魔が被害女性に対し結婚を強いるかのような状況です。今、自民党議員が「海外では軍隊とみなされる自衛隊を国内的に軍隊ではないというのは詭弁、だから憲法9条を変えるべき」というのは、強姦された被害女性に対し強姦魔と結婚すればいい、と勧めるようなものです。
しかし、今の日本人はそれを容認しようとしています。容認することで、今まで詭弁を見て見ぬ振りしてきた罪が消えると思っているのでしょう。深刻な平和ボケの症状です。


ちなみに、50年間にわたって自民党政権による詭弁を国民が放置した結果である自衛隊と称する事実上の軍隊ですが、仮に自衛隊違憲とする共産党が政権を取っても一足飛びに解体されたり、共産党軍が作られたりはしないでしょう。そういう妄言を吐く人たちは共産党の公表されている主張ですらろくに読んでいない不勉強な人たちです。

 それでは、憲法九条と自衛隊の現実との矛盾をどう解決するか。わが党は、改憲派がとなえるような自衛隊の現実にあわせて九条をとりはらうという方向での「解決」ではなく、世界史的にも先駆的意義をもつ九条の完全実施にむけて、憲法違反の現実を改革していくことこそ、政治の責任であると考える。

 この矛盾を解消することは、一足飛びにはできない。憲法九条の完全実施への接近を、国民の合意を尊重しながら、段階的にすすめることが必要である。

――第一段階は、日米安保条約廃棄前の段階である。ここでは、戦争法の発動や海外派兵の拡大など、九条のこれ以上の蹂躙を許さないことが、熱い焦点である。また世界でも軍縮の流れが当たり前になっている時代に、軍拡に終止符をうって軍縮に転じることも急務となっている。

――第二段階は、日米安保条約が廃棄され、日本が日米軍事同盟からぬけだした段階である。安保廃棄についての国民的合意が達成されることと、自衛隊解消の国民的合意とはおのずから別個の問題であり、自衛隊解消の国民的合意の成熟は、民主的政権のもとでの国民の体験をつうじて、形成されていくというのが、わが党の展望である。この段階では、自衛隊の民主的改革――米軍との従属的な関係の解消、公務員としての政治的中立性の徹底、大幅軍縮などが課題になる。

――第三段階は、国民の合意で、憲法九条の完全実施――自衛隊解消にとりくむ段階である。独立・中立の日本は、非同盟・中立の流れに参加し、世界やアジアの国々と、対等・平等・互恵の友好関係をきずき、日本の中立の地位の国際的な保障の確立に努力する。また憲法の平和原則にたった道理ある平和外交で、世界とアジアに貢献する。この努力ともあいまって、アジアの平和的安定の情勢が成熟すること、それを背景にして憲法九条の完全実施についての国民的合意が成熟することを見定めながら、自衛隊解消にむかっての本格的な措置にとりくむ。

 独立・中立を宣言した日本が、諸外国とほんとうの友好関係をむすび、道理ある外交によって世界平和に貢献するならば、わが国が常備軍によらず安全を確保することが、二十一世紀には可能になるというのが、わが党の展望であり、目標である。

http://www.jcp.or.jp/seisaku/004_0607/kenpou_jieitai_22taikai_.html

その他、「自民党が50年かけて壊してきた日本」という表現の根拠としては、自民党政権下で発行され膨れ上がった膨大な赤字国債の存在も挙げるべきでしょう。1980年代から本格的に発行され始めた赤字国債は単年度予算で償還できるレベルを遥かに超えていながら、毎年これを承認する法案を通さねば繰越できない状態です。そのため、この特例公債法案が内閣の首を絞める政局の道具として使われました。自民党政権時代は野合であれ何であれ両院過半数議席数を死に物狂いで集めましたが、そのために自民党は政権を維持する以外に何の政治目標も持たない利権団体に成り下がったと言えます。政権交代後、ねじれ国会の状態になった民主政権下では菅政権や野田政権を潰す道具として自民党は特例公債法案を使いました。自民党が発行を開始し、単年で償還不可能なレベルまで膨らませた張本人が、それを政権奪回のための道具として使ったわけですから醜悪なことこの上ないと言えます。しかも菅政権の時は、東日本大震災からの復興というまさに国民のために一致団結しなければいけない時に、自民党は政局を優先したわけです。

ここまで恥知らずな政党が50年以上存続し、しかもそのほとんどの期間政権に就いているわけですから何とも情けないとしか言いようがありません。せっかく民主主義を手に入れながら使い方もわからないのですから。

*1:第九十九条  天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

*2:改憲を掲げる保守”という存在自体が矛盾的とも言えます。

*3:2013年7月21日の参院選直後の池上彰氏のインタビューで佐藤正久議員(自民党自衛隊出身)自身、国内的に「自衛隊は軍隊ではない」というのは詭弁だと主張しています。その後、池上氏に「自民党はこれまで「自衛隊は軍隊ではない」と言って来たがそれは詭弁だと認めるのか」と問われ、必死で話を逸らし逃げていたのが印象的です。

*4:自衛隊そのものの規模が小さかった上、米軍がアジア全域に展開していました。自衛隊が予算規模年10%以上増で強化されていくのは1970年代頃からです。http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20090920/1253465832

*5:完全解体以外に小規模な保安隊と呼べる程度の戦力とする手段もあったでしょう。