呉善花氏入国拒否事件に関して

産経文化人(笑)の呉善花氏(日本国籍)が韓国で入国拒否されたことについて、産経では「韓国、評論家の呉善花氏の入国を拒否 評論活動が影響か」という記事を書いています。
一般的な論調としては、韓国のやり方を非難するものが多く、産経と癒着している安倍政権も菅官房長官が非難しています。

もちろん、思想信条による入国拒否は認められるべきではありませんが、別に韓国に限らず、日本でも他の国でも、外国人が入国拒否されて帰国を余儀なくされるのはそれほど珍しいことではありません。当人に犯罪歴がある場合や不法な物を所持している場合、あるいは書類不備など、理由は色々あります。

産経は、呉善花氏入国拒否に関して、思想信条の理由と決め付けているような論調ですが、別にそうとは限りません。

 呉氏によると、ソウルで行われる親族の結婚式に出席するため、27日午前11時すぎに韓国・仁川空港に到着。しかし、入国審査の際に隣接する事務所に行くよう指示され、パスポートの詳細な確認などを受けた。
 約1時間半後に「入国は許可できない」と告げられ、理由を職員に尋ねても「上からの命令だから」などと答えるのみだったという。別室で夕刻の日本行きの便まで待機させられ、機内でも着席を確認するまで職員がついてきたという。
 韓国法務省の仁川空港出入国管理事務所入国審査場の当局者は産経新聞の電話取材に、「プライバシーに関することで回答できない」と述べた。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130728/kor13072802010002-n1.htm

このように韓国法務省は入国拒否の理由を明らかにしていません。理由を明らかにしないのはセキュリティ上普通のことで他意がある根拠にはなりません。たとえば日本でもビザ発給拒否の理由については回答しない方針を採っています。

Q1:査証発給拒否の理由を教えてください。

A1:拒否の理由は,その申請が査証の原則的発給基準を満たしていなかったためと理解してください。
なお,個々の案件について具体的な拒否理由を回答することは,それらの情報が不正な目的を持って日本に入国しよう/させようとする者により,審査をかいくぐるために悪用されることも考えられ,その後の適正な査証審査に支障を来し,ひいては日本社会の安全と安心にとってもマイナスとなるおそれがありますので,回答しないこととなっています。なお,行政手続法3条1項10号は,「外国人の出入国に関する処分」については,審査基準・拒否理由等を提示する義務の適用除外としています。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/faq.html

また、呉善花氏が韓国に入国しようとした7月27日は、朝鮮戦争休戦60周年の記念式典があり各国から式典参加者が訪韓していました。こういう時の入管はかなり神経質になります。

例えば、2008年のサミット4ヶ月前に日本政府はアントニオ・ネグリ氏の来日を拒否しています。
参考:【緊急報告】アントニオ・ネグリ氏来日中止の経緯説明会

そもそも日本の入管法には以下の規定があります。

第五条  次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。
十四  前各号に掲げる者を除くほか、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26SE319.html

もちろん、こういった時の政府による恣意的な入国拒否は許されるべきではありませんので、たとえ反韓活動家の呉善花氏であろうとも具体的な犯罪計画でもない限り入国は認められるべきと考えます。
「文明国としてあってはならないこと。人権も何もない。もっと冷静に対応してほしい」というのはもっともです。ネグリ氏は今年入国できましたが、2008年の時も許可されるべきでした。

呉善花氏の7月27日の行動

報道によると、呉善花氏は7月27日11時過ぎに韓国に到着、入国審査での確認を経て12時半頃に入国拒否が伝えられ、夕刻まで別室で待機。夜に成田に到着しています。成田空港には、なぜか産経新聞記者が待機しており呉善花氏に取材し、すぐさま韓国法務省当局者にも電話取材するという手回しの良さです。

入国拒否されてもその場で書ける書類不備などの場合、交渉しだいで認めてくれることもありますし、まして理由がはっきりしないのであれば、慣れている国でその国の言葉もできるのですからもう少し粘りそうに思いますが、呉善花氏は結構早い段階で諦め産経新聞記者に連絡し、成田空港で待ち合わせたようです。
私は記者の知り合いもいませんから、こういう場合新聞記者に連絡しようなどとは思いつきもしないでしょう。
呉善花氏は、電話一本で成田空港まで取材に来てくれるだけの産経新聞記者の知り合いがいて良かったですね。おかげで一般的には回答しないのが普通の入国拒否の理由を全国紙を使って問いただすことができるわけですから。持つべきものは右翼のコネということでしょうか。