李容洙氏に関する最近の話題

2015年6月24日に韓国の雑誌「未来韓国」で以下の記事が出ました。
이용수 일본군위안부 피해자 할머니 “내 소원은 한국과 일본이 원수 지지 않는 것”
慰安婦の李容洙氏に関する記事でタイトルからわかるように、「日本と韓国が敵対することを望まない」というものです。
この記事中で、挺身隊対策協議会が日本政府との話しあいに応じない点や慰安婦問題以外の政治問題も扱われている点について批判する箇所があり、それを産経新聞が嬉々として取り上げています。

2015.7.3 19:07更新

【歴史戦】元慰安婦が支援団体「挺対協」批判 「当事者の意見聞かない」「事実と異なる証言集出した」

 【ソウル=名村隆寛】慰安婦問題で日本政府に謝罪や賠償を要求している「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」に対し、挺対協から“支援”されているはずの元慰安婦の女性が、韓国メディアとのインタビューで「当事者(元慰安婦)の意見も聞かず、日本との協議を拒否している」と強く批判している。
 元慰安婦李容洙(イ・ヨンス)さん(86)は、最近発行された週刊誌「未来韓国」の中で「日本が話し合おうといっているのに。会わずに問題が解決できようか」と挺対協のかたくなな姿勢を問題視した。また、挺対協が在韓日本大使館前での毎週行っている抗議集会について「何のためにしているのか分からない。ただ、『謝罪しろ』『賠償しろ』と叫んで集会の回数をこなせばいいというものではない」と疑問を呈した。
 李さんはさらに「なぜ自分たちの思うままにやるのか分からない」と挺対協の独善的な姿勢を問題視した。「抗議を毎週やれば性格も態度も悪くなり、健康にもよくない。挺対協の人たちは闘争家の側にいるようだ」とも批判した。
 一方、「証言は私の命同然なのに、挺対協は本人に確認もせず、事実とは異なる証言集を出した」と挺対協の情報収集のずさんさも指摘。「静かな場所で証言を聞かねばならないのに、食事をしながら問答したのが大部分。そのために、(自分の)証言にはめちゃくちゃになったものが多い」とも語っている。
 李さんは一方で、1965年の日韓請求権協定に触れ「日本から援助を受け浦項製鉄を作り、京釜高速道路を建設したのはいいことだ。あの時の金で(韓国が)経済発展をしたのなら、今度は韓国政府が慰安婦問題の解決に積極的になり、日本に先立ち私たちに賠償してほしい」とも述べている。
 また、李さんは「問題を解決するなら、韓国政府が慰安婦団体と被害者らを一つの場に集めて議論し、意見を聞かなければならない。そうすれば、被害者らが何を望んでいるかが分かり、解決策が出てくる」と韓国政府に訴えている。

http://www.sankei.com/world/news/150703/wor1507030035-n1.html

産経新聞は当然のように未来韓国記事から、挺対協批判部分だけを抽出し安倍政権に謝罪を求めている点については一切記載しませんでした。例えばこういう部分。

6월 10일 대구 자택에서 만난 이용수 할머니는 올해 88세의 나이에도 불구하고 정정했다. 먼저 이용수 할머니에게 아베 일본 총리에 대해 어떤 생각을 갖고 있는지를 물었다. 할머니는 “아베는 비겁하다”고 말문을 열었다.
“난 위안부가 아니라 이용수예요. 일본이 날 위안부로 만든 겁니다. 아베는 우리가 돈을 벌기 위해 자발적으로 갔다고 거짓말을 하고 있지 않나요? 아베가 눈이 멀었는지, 귀가 먹었는지 직접 보고, 또 역사의 산 증인인 내가 이렇게 버젓이 살아 있다는 것을 보여주려고 미국에서 아베를 줄곧 따라 다녔어요.”

http://www.futurekorea.co.kr/news/articleView.html?idxno=28466

トリミングと捏造は産経新聞の社是ですからやむを得ませんが、問題は産経新聞以外のメディアが李容洙氏の件に関して取材も報道もしないという点です。もちろん、2014年の安倍政権下で起きた朝日新聞弾圧の影響で、慰安婦問題に対して政府右翼に対して批判的な報道が制限されてしまったというのはあるでしょうが。
結局、李容洙氏を取材して報じたのは産経新聞でした。

慰安婦が望む「解決」とは 安倍首相の直接謝罪要求

産経新聞 11月6日(金)7時55分配信
 ■「まず韓国政府が賠償を」 「信じられるのは鳩山さんだけ」
 慰安婦問題をめぐり、2日の日韓首脳会談では交渉の加速化で一致したが、日韓の隔たりは大きい。元慰安婦たちにとっての「解決」とは何か。米国など海外にも出かけ日本批判を繰り返してきた韓国の元慰安婦を10月中旬に取材した。
 元慰安婦李容洙(イ・ヨンス)(86)。元慰安婦でよく知られているのは最初に自ら名乗り出た金学順(キム・ハクスン)だが、平成9(1997)年に死去した。今では李が元慰安婦を代表する顔となり、海外にも精力的に出向き、問題解決を求め日本政府を批判し続けている。
 10月20日、李が住む韓国南部・大邱(テグ)市のアパートを訪ねると、「産経新聞に話すことはない」と、こわばった表情で取材を拒否した。しかし、記者をその場から追い返すわけでもなく、しばらくすると言葉少なに語り始めた。
 「信じられるのは鳩山(由紀夫元首相)さんだけ。以前、鳩山さんに会ったときに慰安婦問題を『解決する』と約束してくれた。いろいろ努力してくれたけれど、政権が代わって約束をかなえられなかった。でも鳩山さんは今年8月にソウルに来たときに西大門刑務所でひざまずいて謝罪してくれた。鳩山さんに手紙を書いてもう一度会いたい」
 1カ月ほど前に訪米から戻ってきたばかりの李は覇気のある声で答えた。高齢の身には、移動に長時間を要する米国への渡航はこたえるはずだが「女性運動家として活躍したいと思っているので、疲れたなんて言っていられない」と語った。
 李は一体、何を望んでいるのか。記者が「慰安婦問題を解決するために日本政府に具体的に何をしてほしいのか」と尋ねると、こう答えが返ってきた。
 「安倍(晋三首相)が日本大使館前まで来て、私たちに直接会って許しを請うてほしい。そして安倍に続く代々の日本の首相も同じようにしてほしい。そしたら許すことができるかもしれない。でも(慰安婦だった過去を)決して忘れることはできない」
 李は、韓国政府に対しても、もどかしい思いを抱いている。
 「謝罪はいつでも日本から受けられるが、韓国政府が日本に先立って、私たちにまず賠償をしてくれることを望む。死んでしまったら何の役に立つというのか」
(略)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151106-00000074-san-kr

取材せずに記事を捏造する阿比留氏のような記者ばかりではなかったようです。しかし以降の記事内容は取材時の発言なのか未来韓国記事や過去の朝日記事の引用か判然とせず、辛うじて以下の部分は産経取材時の発言らしいと判断できます。

 だが、李は今も女性基金に拒否感を抱いている。
 「村山は嫌いだ。慰安婦問題をまともに解決しようとするなら、あんな基金をつくるべきでなかった」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151106-00000074-san-kr

もっとも産経記事で真っ当な内容はここまでで、即座に産経新聞は元慰安婦に対する誹謗中傷を差し込んできます。

 李の証言については、当初は「国民服を来た日本人の男から、ワンピースと革靴をもらってうれしくてついて行った」と話していたが、その後、「日本の軍服を着た男らが家にやってきて、男から何かとがったものを背中に突きつけられ船に乗せられて行った」と、徐々に“軍による強制連行”を主張する内容に変わってきたためか「信憑(しんびょう)性がない」というのが定説だ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151106-00000074-san-kr

産経は同じ記事内で、「李は、挺対協が平成5(1993)年に出版した証言集への不満も吐露した。 「証言は私の生命と同じだ。ところが、挺対協の担当者が本人に確認もせずに事実と異なる証言集を出して販売までした」」という未来韓国からの引用までしているのに、“李の証言には信憑性がない”と言い放つわけです。
多分、産経記者には赤い血が流れていないんでしょう。

 最後に、李は記者にこう言った。
 「罪は憎むが、日本人を憎んでいるわけではない」(敬称略)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151106-00000074-san-kr

これは未来韓国記事でも書かれていますので、実際に産経記者に言ったのか、産経記者が未来韓国記事から拝借したのは、判然としません。

“내 소원은 이웃 나라인 한국과 일본이 원수 지지 않는 것이에요. 나는 일본의 학교에 가서도 학생들에게 그렇게 말해요. ‘죄는 미워해도 사람은 미워하지 않는다’ 라고요. 우리나라 젊은 사람들에게도 올바르게 얘기해줘서 서로의 미래를 열어줘야 해요. 괜히 일본 욕하면서 이승만이나 박정희까지 끄집어내서 비난해서도 안 되고요.”

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151106-00000074-san-kr

何はともあれ情けないと思うのは、日本のメディアはろくに元慰安婦らへの取材すらしないという点と、唯一取材し報じたのが慰安婦問題を否認し戦時性暴力被害者を虚言者扱いして侮辱する右翼新聞だけだったという点です。