このブコメのひどさときたら

双葉町等を対象にした疫学調査の中間報告で鼻血等が有為に増加」の記事の件ですが、ここで紹介されている中地重晴氏の記事は「双葉町等を対象にした疫学調査の中間報告」を参照して紹介しているものであって、中地記事に全ての情報が載ってないのは当たり前の話です。「データガー」と大騒ぎするなら、自身で中間報告を取り寄せて検証すれば良いのであって、この記事にケチをつけるのは、どうみてもクレーマーの類としか評価できません。

データガー

okachan_man 原文と合わせてtogetterコメント欄まで読んだ方がいいな、これ。サンプル数も示されてないものを丸呑みすべきでないってことは、最低限のリテラシーとして拡めたい。 2014/05/14

suna_kago 問題の「鼻血等が有意に増加」という箇所は、中間報告とはいえ、疫学調査として信頼するにはデータが全然ない。これを読んで「放射能」にコジツケるのは、端的にダメ。 2014/05/14

kgotolibrary 医療
資料読んだけど、どれくらいに調査したのかはわからないし、ストレスとかによる原因と放射能による原因がどのくらいの割合かわからないし、「存在」を示すことはできてもそれ以上ではないような 2014/05/14

nankichi 質問紙調査の調査概要が知りたい。サンプリングは何?ざっと見まともそうだが、住基台帳?特定の病院に来た人とかじゃないよね。病院に来た人であれば自記入ではなく、カルテベースで集計してほしい。 2014/05/14

and_hyphen ツイートでは正しいんだがタイトルが「有為」ってもやっとする/あと対象者のデータが見当たらない... 2014/05/14

navix ネタ元のレポート(PDF)は「有意に多かった」等のコメントのみで肝心のデータが無い。 2014/05/14

http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/667009

中地記事にサンプル数が載ってないことを揶揄するコメントがたくさんありますが、「鼻血に関して両地区とも高いオッズ比を示した(丸森町でオッズ比3.5(95%信頼区間:1.2,10.5),双葉町でオッズ比3.8(95%信頼区間:1.8,8.1))」と95%信頼区間が示され、有意であることが示されている以上、中地記事にサンプル数が載ってないこと自体はたいした問題ではありません。少なくともサンプル数が少なければ有意差はまず生じません。
疫学統計に詳しい人なら周知の初歩的な話ですが、オッズ比の信頼区間が1を跨いでいない場合、統計的に有意差あり、と評価します。ですので、「丸森町でオッズ比3.5(95%信頼区間:1.2,10.5),双葉町でオッズ比3.8(95%信頼区間:1.8,8.1)」だけ見れば、サンプル数云々に言及する必要はほとんどありません。つまり、中地記事は記事で主張したい内容について、まず妥当な引用・参照を行っており、これをことさら叩くのはどうかと思います。
中地記事には特段、悪質な隠蔽や改ざんを疑わせる記載はなく、素直に“鼻血に関しては、木之本町(滋賀)に比べて、双葉町(福島)、丸森町(宮城)では3倍程度の発症率になっている”と理解するべきです。結論が気に入らないからと言って、隠蔽や改ざんであるかのように決め付ける態度は誉められたものではありません。どうしてもデータが気になるなら自分で中間報告を取り寄せ検証するのが筋で、クレクレ君と化すのが正しい態度とは到底言えないでしょう。

そもそもデータを示されたら、それを理解できるほど疫学統計に通じているんですかね?
とても、そうは思えないんですけど。

疫学研究を理解してるの?

torinoya 増加というのはある時点からある時点までの数値が増えたことを言うのでは。2012年なら避難所の生活ストレスも原因になりうるだろう。現に実家の近所にある避難所はノロ蔓延してたし。 2014/05/14

dumpsterdive 原発事故以前からの変化は?比較対象地域と同レベル放射線量地域は?主観的判断の標準的な地域差はどのくらいなの?対象地域は標準的地域差も外れて高いの?そもそも、質問票もクロス表もないけどなんで? 2014/05/14

http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/667009

確かに同じ場所での原発事故以前の結果と比較できれば、それに越したことはありません。でもそれをやるためには2012年の調査で使った質問票をタイムマシンで震災以前の被災地に持って行って調査する必要がありますね。それは言うまでもなく不可能なことですから、擬似的に被災地以外の地区との比較を行っているわけです。大規模災害に関連する疫学ではよくある手法の一つで、今回の研究が特異だとは思いません。それにこういった調査ってお金がかなりかかりますから、贅沢な研究モデルを考えても実行不可能になるだけですし。
文句を言いたいなら、ご自身で研究モデルの代案を示してみればよいのに、と思います。

その他

ichiharu12 社会 研究
不明点が多すぎて「疫学研究っぽさを醸し出しているもの」の域を出ない。PDF見ると“主観的健康観(self-rated health)”とあるしバイアスを排除する努力もしていないようだけど。 2014/05/14

ryozo18 "主観的健康観(self-rated health)に関しては、2012年11月時点で、木之本町に比べて、双葉町で有意に悪く、逆に丸森町では有意に良かった" 主観的健康観かよw 2014/05/14

http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/667009

主観的健康感ってのは、よく使われるQOL指標で信頼性も妥当性も検証されている有用なものですよ。なんか勘違いしてませんか?ちなみに、主観的健康感については、被災地で一貫した傾向があるわけじゃないと記事に書いてあります。多分理解できていないんでしょうけど。

tikuwa_ore 因果関係が証明されてないモノは単なる情報でしかなく、決して論拠には至らないと、一体何時になったら彼等は気付くのだろう。 2014/05/15

http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/667009

医薬品の副作用というのは必ずしも因果関係が証明されたわけではなく、因果関係が否定できない場合について全て副作用として扱っています。そしてそれらは医薬品の添付文書に記載され注意喚起されるわけです。健康に関わる問題で「因果関係が証明されてないモノは単なる情報でしかなく」などという態度は危険だとしか言いようがありません。

abc0123 福島、宮城、滋賀の3地区を3つのダミー変数にしたモデル式っぽいな。だとすると、変数同士が独立してないのは明白なんだけど、オッズ比で評価してよいんだろか?詳しい人の解説が聞きたい。 2014/05/15

http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/667009

中地記事だけでは詳細な条件はわかりませんが、福島、宮城、滋賀の3カテゴリの変数を説明変数に入れてモデル解析して、滋賀を対照群としたオッズ比を導出しただけと思います。なお、オッズ比で評価して問題あるとは思えません。

houyhnhm 擬似相関も疑いつつの他要因含めてちゃんと考えるべき、なのと、健康不安(実際の被害)の手当は必要なのでというのと。/そろそろ、「有意」という言葉を単独で使うべきではないと認識されてほしい。もうめんどい。 2014/05/14

http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/667009

批判するのなら、ちゃんと理解してからすべきだと思います。モデル式についてはある程度中地記事に書いてありますし、説明変数として考慮すべき条件があるのならそれを具体的に指摘すべきでしょう。あと、「鼻血に関して両地区とも高いオッズ比を示した(丸森町でオッズ比3.5(95%信頼区間:1.2,10.5),双葉町でオッズ比3.8(95%信頼区間:1.8,8.1))」と書かれている以上、鼻血に関して「「有意」という言葉」を使って問題があるとは思えません。
「「有意」という言葉を単独で使うべきではない」とは一体何を意味しているのでしょうか?

医学論文、疫学論文

babelap あーやっと(怪しげだけど)データ出てきたのね。詳細報告まで待ちましょう、でいいんじゃないの。(放射線由来? そんなわけないだろ、は大前提) 2014/05/14

jaguarsan この程度のものをデータと呼ぶなら、STAP細胞200回成功した も立派なデータ 2014/05/14 6 clicks

kanenooto7248 データを出せと言って、このデータを出された時の( ゚д゚)ポカーン感は異様。とりあえず、よくこれで対抗しようと考えたものである。 2014/05/14

http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/667009

多分、医学論文も疫学論文もろくに読んでいないんだろうな、と。ろくに理解も出来ないのに「怪しげ」とか決め付ける態度は、鼻血を放射線のせいだと決め付ける態度とどう違うのでしょうかね?
「このデータを出された時の( ゚д゚)ポカーン感」ってただ単に理解できなかったからポカーンとしただけじゃないのかなぁ。

個人的意見

中地記事に対して特に疑念を生じさせるような箇所はありませんでしたし、データが示している事実以上に踏み込んだ記述も特に見受けられません。一点だけ気になったのは、主観的健康感について多重ロジスティック解析を行い、体がだるい,頭痛,めまい,目のかすみ,鼻血,吐き気,疲れやすいなどの症状について多変量解析を行った、という記述ですが、これ多分逆じゃないですかね*1
中間報告の結果について留意したいと思うのは、サンプル数よりもむしろサンプリング時のバイアスですが、滋賀と被災地で同じサンプリング手法を取っていれば、それもそれほど大きな問題ではないでしょう。一番気がかりなのは、解析手法が妥当だったかどうかですが、おおもとの研究計画書などを見ないと何とも言えません*2。より厳密な解析を、という要望はわからないでもないですが、実現可能な研究計画でなければ意味がありませんので、この研究はこれで評価できると思います。
中地記事では、研究結果に示された事実をそのまま伝えており、結論も「これら症状や疾病の増加が,原子力発電所の事故による避難生活又は放射線被ばくによって起きたものだと思われる。」とまあ妥当な範囲です。原因を放射線被曝に限定すれば、言いすぎでしょうが、現時点では放射線被曝を原因から除外する根拠もありませんので、「放射線由来? そんなわけないだろ、は大前提」といった態度の方がよほど予断だけで語るトンデモです。

*1:主観的健康感を多変量解析で、各症状を多重ロジスティック解析でやったんじゃないかな。

*2:医学論文などで解析手法が妥当じゃないことはよくあります。