山谷国家公安委員長が排外差別団体と癒着していたことに対する批判的な報道は10月7日の野次以来、見かけなくなりました。
山谷国家公安委員長と排外差別団体との関係がメディアで表面化したのは、2014年9月17日頃です*1。山谷氏や世耕氏が記者会見で釈明したため、その時に少し報道されました。
(朝日)
山谷氏の写真「問題ない」 官房副長官(2014/09/19)
その後しばらくメディアで取り上げられることなく、9月29日から始まった第187回国会中の質疑で取り上げられたことでようやく記事になりました。
(朝日)
「在特会と知らず」写真問題で山谷氏答弁 やじで紛糾も(10/7)
内外メディア、反応に温度差 閣僚が在特会元幹部と写真(2014/10/08)
しかし、この時の記事タイトルにもある野次の方が、国家公安委員長と排外差別団体との関係よりも重視されるに至ります。朝日の10月8日以降の報道はこうです。
(朝日)
山谷氏、親しい関係を否定 在特会元幹部と写真撮影 参院予算委、質疑中のヤジに批判(2014/10/08)
民主「懇ろヤジ」で自民に謝罪 山谷氏に在特会の質問で(10/8)
「在特会との親密さ表現」 懇ろやじの野田国義氏が釈明(10/8)
民主・野田国義氏、ヤジ問題で山谷えり子氏に直接謝罪(10/10)
ざっと確認した限り、国家公安委員長と排外差別団体との関係に触れた記事は2本。これに対して野次を批判する記事は4本です。
産経新聞の方はもっと露骨です。
産経新聞が国家公安委員長と排外差別団体との関係に触れた記事は見つけた限りでは1本のみ。それも記事タイトルからはほとんどそれとわかりません。
(産経)
女性閣僚、参院予算委答弁で明暗…「子育て」「公選法」「写真撮影」野党“集中砲火”(2014.10.8 09:21)
該当する記述は以下です。
「在特会(在日特権を許さない市民の会)の構成員がヘイトスピーチ(憎悪表現)を行っている。在特会と親しい関係にあると国家公安委員長として職責を全うできない」
http://www.sankei.com/politics/news/141008/plt1410080014-n2.html
民主党の小川敏夫元法相は、山谷氏が在特会関係者との写真撮影に応じていたことを問題視。山谷氏は「政治家なのでさまざまな場所でさまざまな方とお会いする。写真を求められれば撮る。在特会のメンバーであるとは全く存じあげなかった」と説明したが、小川氏は納得しなかった。
これに対し、野次を批判する記事は見つけた限りでは以下の17本。
菅官房長官激怒! 山谷氏への「懇ろだった」やじに 2014.10.7 17:18
「聞くに堪えない侮辱的で下品なやじ」と安倍首相 2014.10.7 19:17
山谷公安委員長に「懇ろの関係じゃねえか」 民主議員がセクハラやじ 差別追及の矢先… 2014.10.8 00:47
山谷氏への「懇ろ」やじ、民主が謝罪…発言者は明かさず 2014.10.8 11:27
「名乗り出ろ!」山谷氏への「懇ろ」やじ問題で自民・高村氏 2014.10.8 11:29
【山谷氏に「懇ろ」やじ問題】「セクハラ発言の最たるものだ」菅官房長官が民主党を批判 2014.10.8 11:57
【山谷氏への「懇ろ」やじ】やじは民主・野田国義氏、発言認め釈明 2014.10.8 14:14
【山谷氏への「懇ろ」やじ】民主・枝野幹事長「報道による間接報告のみ」 2014.10.8 15:17
【山谷氏への「懇ろ」やじ】民主・野田議員釈明詳報「九州ではよく使う」 2014.10.8 16:56
【山谷氏への「懇ろ」やじ】菅官房長官「野田氏は謝罪を」 2014.10.8 17:00
【山谷氏への「懇ろ」やじ】民主・野田氏「セクハラ」否定 執行部逃げに終始 自民も徹底追及せず 2014.10.8 20:06
【山谷氏への「懇ろ」やじ】「懇ろ」やじに逃げの一手 問われる民主党の品格 2014.10.9 07:30
【山谷氏への「懇ろ」やじ】釈明「『懇ろ』はよく使う言葉」に「ちょっと待て」と麻生副総理 2014.10.9 13:06
【山谷氏への「懇ろ」やじ】「許せないセクハラやじだ」 自民・稲田政調会長、発言の民主・野田氏を批判 2014.10.9 17:07
【山谷氏への「懇ろ」やじ】山谷氏「国会は品位のある場。非常に残念」 2014.10.10 12:15
【山谷氏への「懇ろ」やじ】「セクハラの要素あり」 みんな浅尾代表 民主に適切対処要求 2014.10.10 16:04
【山谷氏への「懇ろ」やじ】「誤解招いた」 民主・野田参院議員が謝罪 2014.10.10 19:33
わずか4日間に17本もの記事をあげています。産経新聞にとって、国家公安委員長と排外差別団体の癒着よりも野次の方が重大事であることがわかります。もちろん、朝日新聞にしても、国家公安委員長と排外差別団体の関連記事2本*2に対して、野次批判記事は4本ですから、やはり野次の方が重要なのでしょう。
日本社会にとって、国家公安委員長と排外差別団体の関連などは旬の過ぎた終わった話題、ということなのでしょう。あるいは日本社会がセクハラにとても敏感な、意識の高い国ということかも知れません。
しかし、後者だとすれば、産経新聞による韓国大統領を侮辱する記事がセクハラだと非難されてるのをあまり見かけないのが不思議です。権力者に対するセクハラであっても許されるべきではないという意見もありますが、それは日本人に限定されているのか、あるいは韓国人だけは除外されるのか、よくわかりません。
ちなみに産経新聞は山谷国家公安委員長に対する野次があった当日の10月7日、おそらく野次の直前に書かれたと思われる記事で、次のようなことを書いています。
多様な生き方を希求し、また、認められるべきなのは論をまたない。とはいえ、おせっかいな近所の人や親族に、「そろそろ結婚したら」と言われて、それを十把一絡げに「セクハラだ」としてしまうことには違和感がつきまとう。
http://www.sankei.com/politics/news/141007/plt1410070002-n4.html
(略)
やじが減り、静かになった都議会本会議場は、どこか議論が低調になった印象を受ける。いい質問や不十分や答弁に対して「議会の華」だったやじが、「言わぬが花」になったから、そう感じてしまうのは、気のせいだろうか。
産経新聞は、10月7日昼頃に突如として、セクハラに対する意識が高くなったようです。
そして10月11日、産経新聞は、国家公安委員長と排外差別団体の関連をつく野党の攻撃に対して「うまく防御している」と評するかのような記事を出しています。
▼国会論戦で、野党は5人の女性閣僚に攻撃の的を絞っている。大半はうまく防御しているが、朝日新聞出身である松島みどり法相の旗色が悪い。どう見てもうちわにしかみえないものを「討議資料」と言い張ったり、東京都内に住みながら特例で認められた赤坂の議員宿舎に帰らなかったり…。
http://www.sankei.com/column/news/141011/clm1410110004-n1.html
実際、国家公安委員長と排外差別団体の関連については上手く防御されていると私も思います。
*1:http://www.47news.jp/CN/201409/CN2014091701001607.html
*2:10月1日の社説を含めれば3本