これはいい動き。朝日が受け入れても受け入れなくても効果的だと思う。

この件。

朝日慰安婦報道の第三者委員会に申し入れ

10月10日 0時18分
朝日新聞が、いわゆる従軍慰安婦を巡る自社の報道について検証するために設置した第三者委員会などに対し、近現代史や人権問題の研究者などが、慰安婦問題の専門家を委員に加えるよう申し入れました。
申し入れを行ったのは、関東学院大学林博史教授など近現代史や人権問題に詳しい研究者や弁護士など7人で、第三者委員会と朝日新聞に要望書を提出したあと、国会内で記者会見しました。
要望書では、慰安婦問題を巡る長年の研究の経緯や、国際的な人権機関でも取り上げられている事実などを踏まえ、慰安婦や人権の問題について専門的な学識のある研究者や法律家などを委員に加えるよう求めています。
林教授は「慰安婦問題そのものが朝日新聞のねつ造であるかのようなキャンペーンが繰り広げられていることに大きな危機感を感じている。この問題では、この20年間で多くの資料が見つかっており、朝日新聞はそれも踏まえて検証を進めてほしい」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141010/k10015280001000.html

もちろん、林教授が主張している内容は、本来の第三者委員会のあるべき姿から考えれば当然の話に過ぎません。
現在進行形で弾圧を受けている朝日は政治的な事情でそれを実行できないわけですが、近現代史や人権問題の専門家の側から申し出があるのならば受動的に対応できる見込みがあります。
もし朝日が受け入れた場合、経緯がどうあれ右翼政治家・団体・メディアがこぞって大バッシングするのはわかりきった話です。ただし、第三者委員会委員等の馴れ合い報告を回避させ、歴史問題としての慰安婦問題についてきっちり記載することが期待できます。朝日にとっては8月5日の報道で語った以下の内容の正当性を示す機会になりえます。

慰安婦問題の本質 直視を

2014年8月5日05時00分

■編集担当 杉浦信之

 こうした一部の不正確な報道が、慰安婦問題の理解を混乱させている、との指摘もあります。しかし、そのことを理由とした「慰安婦問題は捏造」という主張や「元慰安婦に謝る理由はない」といった議論には決して同意できません。
 被害者を「売春婦」などとおとしめることで自国の名誉を守ろうとする一部の論調が、日韓両国のナショナリズムを刺激し、問題をこじらせる原因を作っているからです。見たくない過去から目を背け、感情的対立をあおる内向きの言論が広がっていることを危惧します。
 戦時中、日本軍兵士らの性の相手を強いられた女性がいた事実を消すことはできません。慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質なのです。

http://www.asahi.com/articles/ASG7X6753G7XUTIL053.html

「日本軍兵士らの性の相手を強いられた女性がいた事実」「慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたこと」を問題の本質とする限り、吉田証言の位置づけは著しく低くならざるをえませんから、朝日新聞の責任などというものがほとんど存在しなくなるでしょう。吉田証言の有無に関わりなく「日本軍兵士らの性の相手を強いられた女性がいた事実」「慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたこと」という事実は変わらず、日本に対する諸外国の評価も変わらないわけですから。
もっとも、その結果を今の日本社会が受け入れられるかどうかはかなり疑問ですが。


一方で朝日が受け入れなかった場合もこれはこれで面白い展開が期待できます。朝日にとっては自社に有利な結果になるであろう近現代史や人権問題の専門家を排除するわけですから、右翼からのバッシングを回避する言い訳として使えますし、第三者委員会の面々も近現代史や人権問題の専門家を除外したがために、近現代史や人権問題を踏まえていない結果となった、と評されることを懸念するでしょう。学者や専門家としての誇りのある人であれば、適当なことはやりにくくなるでしょうね。まあ、恥知らずな人には通用しませんけど。
そして、近現代史や人権問題の専門家にとっても、朝日が受け入れなかった場合は、堂々と第三者委員会の結論を批判することができます。「被害者を「売春婦」などとおとしめることで自国の名誉を守ろうとする一部の論調」に阿った結論であれば、朝日記事を検証した第三者委員会そのものを検証することになるでしょう。