慰安婦否認論者は平気ですり替えをやるからなぁ

韓国反日教育 大学入試科目に慰安婦「吉田証言」(NEWS ポストセブン 7月2日(土)7時0分配信 )」の件。
この記事にはいくつもすり替えがあります。

タイトル部分「大学入試科目に慰安婦「吉田証言」」?

タイトルを見るとまるで、大学入試で慰安婦「吉田証言」を問われたかのようですが、本文を読んでもそうは書かれていません。日本の教育テレビ(Eテレ)に相当するEBSの大学受験コースの番組で「慰安婦に関する内容が紹介され」「吉田証言がそのまま引用、紹介されていた」だけです。韓国では大学の受験問題の70%はEBSの教育内容から出題されるとのことですが、実際に大学入試で出題されたという記載はポストセブン記事本文中にはどこにもありません。
また、この科目での「慰安婦に関する内容」が吉田証言だけとは考えにくく元慰安婦らの証言などもあったはずですが、崔碩栄はそれには言及していません。
そもそも、植民地支配時・戦時の被害を学ぶことを反日とみなす崔碩栄の思考回路の方が異常です。

「朝日が組織した「第三者委員会」の調査報告書には納得いかない内容があった。吉田証言が〈欧米、韓国に影響を与えたかどうかは認知できない〉という部分だ」?

ここは崔碩栄氏による主語のすり替えが発生している部分です。
元の第三者委員会報告書の記載はこうです。

(P52)
波多野委員及び林委員の検討結果は、いずれも吉田証言についての朝日新聞の記事が韓国に影響を与えたことはなかったことを跡付け、林委員の検討結果は、朝日の慰安婦報道に関する記事が欧米、韓国に影響を与えたかどうかは認知できないというものである。

報告書での主語は「吉田証言についての朝日新聞の記事」あるいは「朝日の慰安婦報道に関する記事」です。これを崔碩栄氏は「吉田証言が」にすりかえています。こういうすり替えをしておいて「納得いかない」とか主張するのはまさに藁人形論法と言えますね。

吉田証言の影響

第三者委員会は朝日記事の影響を検証していますので、“吉田証言が”どのように影響を与えたかと言うのは報告書の主題ではありません。
それでも吉田証言の影響についても検討されてはいます。
欧米、特に英語圏に対する影響については以下のように述べられています。

(P77)
英語圏に限ってではあるが、総合するならば、吉田証言は、日本のイメージに悪影響を与えてはいないという意見がほとんどであった。他方で、慰安婦問題は、日本のイメージに一定の悪影響を及ぼしているとする意見もほとんどの識者が述べるところであった。しかし、その際、日本で言われているような、「慰安婦の強制連行」のイメージが傷になるというのではなく、日本の保守政治家や右派活動家たちがこの「強制性」の中身にこだわり続け、河野談話に疑義を呈したり、形骸化しようとしたりする行動をとることのほうが、日本のイメージ低下につながっているという認識でほぼ一致していた。

韓国に対する影響については以下のように述べられています。

(P81)
他方で、韓国にとって「強制連行」は、テレビドラマなどに描かれ、日常に生きるイメージであるがゆえに、日本の報道とは関係なく存在する社会的事実であることも踏まえなくてはならないだろう。韓国は、日本帝国主義による植民地支配下の被害者たちが生きる国であり、吉田証言は彼らの実際の体験を追認する証言として受け止められてきた。すなわち吉田氏は、韓国社会の根底に流れる日本帝国主義のイメージ、さらに「強制連行」のイメージを固めたということは言えるであろう。

言うまでもなく、被害が何も無かったところに吉田証言によって被害体験が作られたわけではなく、実際の被害体験があったところに加害行為のイメージが固まったということです。
多くの場合、被害者には加害行為の背景や加害者の事情などは分かりえません。加害者側の証言は個々の被害体験を説明付け被害者側の内面で合理化する上で有用であり、慰安婦問題においては吉田証言がそのように機能したとは言えるでしょう。似たような事例としては、東京大空襲の被害体験があります。米軍は円周上に焼夷弾を投下し被災者を追い詰めて焼き殺した的な認識が日本側にはありますが、米軍が実際にそのような戦術を取ったと言う記録はありません。しかし空襲を生き残った被害者にとってそのように認識されたというのは不思議ではなく、米軍が住民を焼き殺すために意図的にそのような戦術を取ったというイメージは被害体験を説明付ける内面の合理化をはかる上では有用だったでしょう。

日本で東京大空襲での被害体験を学ぶことが反米教育ではないのと同様に、韓国で慰安婦という被害体験を学ぶことが反日教育ではないのですが、これを「反日教育」だと主張するのは、民族意識に立脚した差別感情によるのでしょうね。