慰安婦問題否認論者には、韓国軍慰安婦を非難する資格がないよね

産経がこれ見よがしに取り上げているベトナム戦争時の韓国軍慰安所の件です。
時代背景を説明しておくと韓国がベトナム戦争に派兵した1965年、日韓基本条約が結ばれ、韓国へ渡航する日本人が増え始めます。当初、来韓外国人はアメリカ人が最も多く、次いで日本人、在日韓国人という状況でしたが、1970年代に入ると日本人観光客がアメリカ人観光客を凌駕するようになります。
その日本人観光客の8割は男性で、いわゆる「キーセン観光」つまり買春旅行が盛んだったわけです。
買春目的の日本人観光客が増加する過程で、韓国に新種の性風俗が現われます。それが“トルコ風呂”です。元々は日本の性風俗であった“トルコ風呂”が韓国へと文化輸出されたわけです*1*2
朴正煕軍事政権時代の韓国では、駐留米軍向けの管理売春を行なっており(基地村慰安婦問題)、同じ延長線上に外国人観光客(主として日本人)相手のキーセン観光がありました。この1960年代後半から1970年代が、まさに韓国がベトナムに派兵してきた期間にあたります。

さらにベトナムの事情について言えば、既にベトナム人女性を雇用した米軍専用の遊郭が存在していました*3

以上を踏まえれば、ベトナムに派兵された韓国軍が専用の慰安所を持っていたというのは別に驚くべきことでもありません。
実際、日本軍慰安婦問題を追及してきた挺対協は、ベトナム戦争における韓国軍の性暴力に対しても追及しています。

(略)
アメリカの要請での参戦であったとしても、韓国政府の派兵決定が要請に勝てずどうしようもなくなされたものではないことを私たちはすでに知っています。たとえ力のない国が仕方のない決定をしたとしても、私たちは誰もその責任から自由であるはずがないでしょう。
国家と軍隊という名で国民を戦場へ追いたてた政府にも、軍隊の命令体系と戦争の恐怖感の中で人格を失った韓国軍軍人にも、歴史を清算できないまま今日のベトナムを美しい旅行地と考える若者、すなわち私たち自身にも同じ共同体構成員として責任があります。
日本軍の性奴隷となり国家暴力と戦争の中での女性への暴力を身体で体験したハルモニ、そしてそのそばで日本政府に向かって犯罪の責任を問うてきた挺対協が、ベトナム戦争で行った軍隊の過ちを悔いようとの声を出すことは当然のことだと信じます。
(略)
1.今からでも韓国政府はこれ以上歴史の事実を無視せず正しい真相調査および究明を通じベトナム戦争時の韓国軍による民間人虐殺と性暴力について真実を明らかにしなければなりません。そして、当時韓国軍による民間人虐殺が戦争犯罪であったことを明白に認め、韓国軍による民間人虐殺被害者と遺族に対する謝罪と名誉回復のため努力しなければならず、ベトナム政府と国民に公式謝罪と法的責任を履行しなければなりません。
(略)
3.韓国社会が、ベトナムで行った過ちを認め責任ある措置をとり、正しい歴史認識と教育を通じ韓国とベトナムの真の友好関係だけでなく再びこのような戦争が再発せず平和と人権が尊重される世界になるよう積極的に立ち上がり協力しなければなりません。
2014年3月7日
韓国挺身隊問題対策協議会

http://ianfukansai.blog.fc2.com/blog-entry-45.html

自分たちの“成果”を認めてくれないという逆恨みで挺対協を侮辱するアジア女性基金の大沼氏とは雲泥の差ですね。

ベトナムでの韓国軍慰安所

少なくとも文春記事を見る限り、韓国軍の慰安施設はサイゴンに存在していたわけで米軍専用の遊郭とさほど違いがあるようには思えません。もっとも、米軍と韓国軍の文化的な違い(旧日本軍から継承した政府主導の管理売春を行なっていた韓国と、基地厚生委員会などで兵士に性的節度を求めた米国)から管理のあり方に差異があったであろうことは想像に難くありませんが。
その意味では、ベトナムでの韓国軍慰安所もまた、日本軍慰安所の亜種と言えるでしょう。

日本軍慰安婦との違いがあるとすれば、日本軍のように植民地から公権力関与の下で植民地女性を戦地へ連行したわけではなさそうだと言う点でしょうか。女性の集め方については不明な点もありますが、文春記事でも以下のように書かれています。

(P34)
 では韓国兵士の相手をさせられたベトナム人の慰安婦とは、どんな女性たちだったのか。
 フィンライソン氏は、そのほとんどがベトナム各地の農村出身の少女だったと証言した。
「こうした売春施設で働いている女性はほぼ例外なく農村部出身のきわめて若い女性たちでした。
 彼女達が施設に来た理由は様々です。貧困のために家族に売られてきた少女もいたし、自らの意思で来た女性もいた。彼女たちは、職を失って慰安婦となった。騙されて連れてこられた女性も当然いたでしょう」

朝鮮人慰安婦に対して、ただの人身売買で売った親が悪い、などと日本軍・政府の責任を否定する連中には、この件で韓国軍を非難する資格は皆無でしょうね。

まして、直接的な強制連行の有無だけが問題だと主張してきた秦郁彦のような歴史修正主義者がこの件を非難するのはダブスタもいいところです。
まあ、自称現代史家はこんなことを言ってるんですけどね。

 現代史家の秦郁彦氏「ベトナムにおける韓国軍の住民虐殺、強姦はつとに知られていたが、その陰に隠れて慰安所経営にかかわっていたことが判明したのは、公文書では初めてだと思う。引き続きさまざまな公文書が出てくることを期待する。今後、米国にいるベトナム難民移住者らが声を上げる可能性もあり、韓国に旧日本軍のことを言う資格はないという意見も出るだろう」

http://www.sankei.com/politics/news/150329/plt1503290011-n2.html

1992年1月に報道された慰安婦制度に日本軍が関与していた証拠となる公文書に対して、“大した価値のない既知の文書”扱いした民族差別主義者の末路は醜いものですね。