慰安婦関連の情報について

慰安婦問題関係のおすすめの本を聞かれましたので。
一応いくつかを挙げておきます。
本以外にWEBもいくつか。
上毛三山さんのコメント*1とも結構かぶりますが。

書籍

従軍慰安婦 (岩波新書)

吉見先生の「従軍慰安婦」は慰安婦問題を知る上では基本書です。初版が1995年で20年前になりますが、問題認識としては古びておらず、この書の認識をベースに持っていれば、まずおかしな否定論に惑わされにくくなるでしょう。
岩波新書で価格的にも入手しやすいと思います。本屋では最近見かけない気がします。

日本軍「慰安婦」制度とは何か (岩波ブックレット 784)

安倍首相らによる2007年の慰安婦問題否認プロパガンダである「The FACTS」に記載された否認論者のデマに対する反証となる本です(2010年)。ページ数が少ないもののデマに対する反論としては十分な内容になっています。

慰安婦」問題を/から考える――軍事性暴力と日常世界

最新の知見を踏まえた書籍としては「慰安婦問題を/から考える」が良書です。ただし、扱っている範囲が多岐にわたり、それぞれに深く言及しているため慰安婦問題の全体像を捉えるには不向きな気がします。前提条件として吉見「従軍慰安婦」程度の知識は持っていたほうが良いと思います。
なお、この本を編んだ歴史学研究会は2015年5月25日に「「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明」を出した団体の一つです。


他にもありますが、上記三冊の他、私は未読ですが上毛三山さんが挙げた「「慰安婦」問題 すべての疑問に答えます。」あたりは基本知識としては良いと思います。

サイト

FIGHT FOR JUSTICE 日本軍「慰安婦」 −忘却への抵抗・未来の責任

日本の戦争責任資料センターと「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWW RAC)の2団体が中心となって立ち上げたサイトです。
慰安婦らの証言や慰安婦問題関連の宣言や決議、否認論などに対するカウンターとしてのQAなどが充実しています。

アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館

NPO女たちの戦争と平和人権基金によって立ち上げられたサイトです(2005年)。「女たちの戦争と平和資料館」も運営しています。
パネル展などの資料が充実しています。

デジタル記念館 慰安婦問題とアジア女性基金

河野談話後に作られた半公的な組織であるアジア女性基金が2007年に潰された際に作られたサイト。日本政府の公式見解と言ってまあ間違いではないと思いますが、現安倍政権はじめほとんどの政権は事実上これを無視した言動を繰り返し、諸外国から非難されるたびに、アジア女性基金を隠れ蓑につかってきました。
内容的にはそれなりに充実しているとは思いますが、事実上の国家主導のサイトとしては貧弱な内容で、歴代政権による扱いがうかがえるとも言えます。
多分、最も有用なのは、ここで無償公開されている政府調査「従軍慰安婦」関係文書資料でしょう。

HERMUSEUM

韓国政府による慰安婦問題のサイトです。韓国側の政府公式の認識や主張内容がわかります。サイト自体も新しいですが日本語版ができたのも割と最近です。否認論者らが“韓国はああ言っているが実はねつ造”などと揶揄することが多いですが、実際に韓国公式見解を見てみるとそんな主張はしていない、ということが結構あります。
韓国政府の公式見解を確認する上で便利です。ただし、あくまで韓国政府側の認識であり、支援団体の認識と必ずしも一致するわけではないことを踏まえておく必要はあるでしょう。また、基本的にはハングルが主で、英語版や日本語版は翻訳などに適当な部分がありますので注意です。

補足

基本的な枠組みが理解出来れば、周辺情報のとらえ方がわかってきます。個々の慰安婦の証言や当時の軍隊の制度などは慰安婦問題の全体像を掴んだ上で改めて読み直すとどう関わっているのかが見えてくるでしょう。その他、直接的な関わりがなくとも、性暴力問題・売買春問題・人身売買問題などに関する知識をつけるのは、慰安婦制度のどこにどのような問題があったかを見出すうえで役に立ちます。朝鮮人慰安婦に対する理解には、植民地支配に関する知識があると良いですし、中国や南方占領地で連行した慰安婦を考える上では、占領地支配や戦況などを知っていると理解の助けになります。徴用や女子挺身隊などの労務動員の強制連行についての知識も、当時の社会状況を知ることで、慰安婦らを連行する際に用いられた詐欺や甘言、圧力などがどれほどのものだったかを実感できるように助けてくれます。
ある程度理解が深まってくると、兵士の体験や軍隊生活に関する記事や他国の問題などを見ても、共通点や相違点、慰安婦と兵士という立場の違いからくる認識のずれなども見えやすくなるでしょう。

ここで挙げた本は、最初に読んどくべき基本書です。このあたりの知識も踏まえていない否認論者は相手にする価値もないと思ってます。
これらを踏まえたうえで、他にもいろいろな本があるので、そのうち紹介していきます。