暴力行為等処罰法の適用や逮捕はやりすぎだと思う

この件。
2歳児にたばこ吸わせた疑い FBで動画公開、父親逮捕(2015年11月16日22時44分)
2歳児に喫煙させ動画掲載、父親と少女を逮捕(読売新聞 11月16日(月)23時10分配信)
2歳児にたばこ 父親ら逮捕 動画投稿も(11月17日 0時47分)
2歳児たばこ:「面白半分でやった」父と16歳少女逮捕(毎日新聞 2015年11月16日 23時29分)

やってること自体が子どもに対する虐待であることに異論ありません。
しかし、少なくとも記事に書かれた容疑事実を見る限り、暴力行為等処罰法が適用されるような事件とも思えません。毎日記事によれば「北署は、幼児に喫煙させる行為を暴力と認定し、同法を適用」とありますが、普通に考えれば暴行罪がいいところでしょう。
男女2人で行なったから集団犯罪とみなして暴力行為等処罰法を適用、というのはやりすぎの観が否めません。そもそも本来なら、暴力行為等処罰法はもちろん暴行罪ですらなく、児童虐待防止法で対応すべき事件ではないかと思いますね。ここまで厳罰を適用する意図がわかりません。

また、逮捕というのも気になります。FBに証拠となる動画や写真を掲載しているのであれば、それらを押収すれば身柄の拘束は不要で在宅事件に出来たのではないかと思います。逃亡や証拠隠滅の可能性があったというのも考えにくく、強いて言えば子どもの身を案ずる場合くらいですが、児童福祉法33条に基づく一時保護で対応できますから、逮捕というのはおかしな感じです。

虐待した親に厳罰を科せば子どもは救われるのか

「親が子どもを虐待」→「親に厳罰を科して子どもを取り上げろ」
というのはよく見かける流れですが、これには子どもの視点が欠けています。
親から虐待を受けている子どもにとって、最も必要なのは親から正しく愛されることであって、親を排除することじゃありません。無責任に親の排除に賛同するのは、子どもの福祉を考慮した態度とは言えません。
第三者から見ると、虐待事件が明らかになったその時だけの一過性の出来事に過ぎず、虐待親を排除という単発の処置が問題解決というカタルシスを感じる魅力的な手段ですが、当事者である子どもから見れば、虐待する親であってもそれを慕うことがありますし、突然親が逮捕され自分の周りからいなくなり、その後は施設で家族というものを知ることなく子ども時代を終えていくという人格形成上重要な時期を左右する継続的な重大事です。

「犯罪だ!処罰せよ!」という単純に考えるのではなく、虐待のない親子関係になるように適切に家族の再統合を図るという視点を持って欲しいものです。

実際、児童虐待防止法にはこう書かれています。

児童虐待を行った保護者に対する指導等)
第十一条  児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号 の規定により行われる指導は、親子の再統合への配慮その他の児童虐待を受けた児童が良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮の下に適切に行われなければならない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO082.html

本件で適用されるべき考え方はこちらではなかったのか、それを考える視点を持った報道をお願いしたいものです。