自ら低く設定したハードルに「挑戦」してみせるのは安倍政権の常套手段だよね

実際問題として次期参院選では、自民党は楽勝でしょうね。

首相の勝敗ライン「低すぎる」…自民内で波紋

読売新聞 1月5日(火)7時45分配信
 安倍首相が4日、夏の参院選の勝敗ラインを「与党で過半数」と掲げたことが、自民党内で波紋を広げた。
 与党の参院現有議席は135で、過半数(122)に達しており、「目標が低すぎる」(ベテラン)というわけだ。
 夏の参院選で改選となるのは自民50人、公明9人。仮に公明が現有維持の場合、自民は13議席減でも過半数を維持できる。このため、同党内では、単独過半数のほか、憲法改正に積極的な勢力の「3分の2」(162議席)の獲得を目指すべきだとの声が出ている。
 自民が単独過半数をとるには7議席増が必要だ。読売新聞社の調べでは、自公におおさか維新、こころ、無所属議員で、改憲に前向きな非改選議員は88人おり、3分の2の実現には、参院選改憲勢力が74議席をとる必要がある。首相は1次内閣当時の2007年参院選で惨敗し、その後退陣した。今回の低めの目標設定は「議席が伸び悩んだ場合に備えた予防線だ」と冷ややかな見方もある。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160105-00050018-yom-pol

安倍政権が選挙に際し「低めの目標設定」をするのは今回が最初ではありません。2013年参院選直前の6月にもこんなことを言っています。

首相、「自公で」過半数目指す考え 衆院選*1

産経新聞 6月9日(日)14時4分配信
 安倍晋三首相は9日のNHK番組で、7月の参院選に関し「自民党公明党を合わせて(参院で)過半数を目指していきたい」と述べ、自民党単独による参院過半数を目標に掲げない考えを示した。
 首相は司会者から自民党単独で過半数を目指す必要性を問われると「公示まで1カ月間を切っていて運動期間にそれほど余裕がない。そういう方針は全く今考えていない」と指摘した。今通常国会の会期については延長する考えがないことを改めて示し、参院選は7月4日公示、21日投開票との日程を想定していることを述べた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130609-00000529-san-pol

ちなみに2013年参院選では、自公は非改選58議席で改選44議席でした。民主党(改選44議席)が後退することが確実視されている状況で19議席の積み増しなどハードルとしては低すぎる設定でした(結果は自公で76議席獲得)。

派名         議員数 改選合計 非改選合計
民主党・新緑風会   86   44    42
自由民主党      83   34    49
公明党        19   10    9
総定数        242   121    121

現状、自民党は非改選49議席、改選34議席で、公明党は非改選9議席、改選10議席を持っています。合わせて、非改選58議席、改選44議席です。参議院過半数は121議席以上ですから、時期参院選で自公が63議席以上取れば参議院過半数を獲得し、ねじれ状態を解消した安定政権となります。

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130611/1370953801

今度は2013年のときよりさらにハードルを下げています。

派名         議員数 改選合計 非改選合計
民主党・新緑風会   59   42    17
自由民主党      115   50    65
公明党        20   9     11
総定数        242   121    121

現時点で既に自公は非改選76議席を持っており、改選59議席から15議席減らしてようやく過半数割れとなるレベルです。自公が15議席も減れば歴史的大敗と言っていいレベルですが、現状の内閣支持率政党支持率を見る限り、まず起こり得ません。
そのように低いハードルを設定するのは、アベノミクスをはじめとする安倍政権の政策は失敗であったと認めるようなものですね。

参院選での自公勝利はほぼ確実

少なくとも参院過半数確保は、99%確実でしょう。自民党の直近支持率を見る限りでも自民党単独過半数だって高い可能性で確保できます。

 自民が単独過半数をとるには7議席増が必要だ。読売新聞社の調べでは、自公におおさか維新、こころ、無所属議員で、改憲に前向きな非改選議員は88人おり、3分の2の実現には、参院選改憲勢力が74議席をとる必要がある。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160105-00050018-yom-pol

閣外与党のおおさか維新(改選2議席、非改選5議席)、日本のこころを大切にする党(改選3議席、非改選3議席)が議席を維持すると仮定すると、自公で69議席確保すれば改憲発議が可能になります。それには高々10議席積み増すだけです。2013年参院選では自公は32議席増やしていますから、2016年参院選での10議席増などハードルのうちにも入らないでしょう。
現状において自公等3分の2以上を阻止する手段は野党が統一候補を立てる以外になく、それでも阻止できる見込みは五分五分かそれ以下です。野党統一候補を立てたとしても、おおさか維新などの偽装野党が蠢動して非自民票の分裂を企んでいますから実際問題として難しいでしょうね。
自民党改憲草案など見ると薄ら寒い不気味さを覚えますが、あのような人権無視の憲法草案を出すような政党であっても“経済は自民”とかいって自民を支持する連中がうじゃうじゃいますからどうにもなりませんねぇ。

野党統一候補の意味

野党統一候補を立てても改憲阻止・安倍政権阻止という意味では勝ち目は薄いわけですが、それでも野党統一候補を立てなければほぼ確実に野党が壊滅的に議席を失いますから、それを回避するという意味はありますし、野党が統一すればある程度は戦えるという認識を作ることが出来ます。そこに将来に向けての意味があるでしょうね。

*1:産経記事では珍しくありませんが、「参院選」の誤記です。