「書面による取決め」は養育費の支払い率を向上させる

平成23年度全国母子世帯等調査結果報告

表17−(3)−7 母子世帯の母の養育費の受給状況(離婚の方法別)

(H23年(2011年))

  総数 協議離婚 その他の離婚 養育費取決あり総数 協議離婚 その他の離婚
総数 1332 (100.0) 1106 (100.0) 226 (100.0) 502 (100.0) 333 (100.0) 169 (100.0)
現在も養育費を受けている 263 (19.7) 179 (16.2) 84 (37.2) 253 (50.4) 169 (50.8) 84 (49.7)
養育費を受けたことがある 211 (15.8) 152 (13.7) 59 (26.1) 144 (28.7) 88 (26.4) 56 (33.1)
養育費を受けたことがない 808 (60.7) 738 (66.7) 70 (31.0) 94 (18.7) 72 (21.6) 22 (13.0)
不詳 50 (3.8) 37 (3.3) 13 (5.8) 11 (2.2) 4 (1.2) 7 (4.1)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-katei/boshi-setai_h23/dl/h23_18.pdf

この表中の「現在も養育費を受けている」割合である19.7%をもって、養育費支払率が2割しかない、と主張されることが多いようです。ただ、統計データをもう少し丁寧に見るべきで、例えば養育費の取決め有無別に集計するとこうなります。

養育費取決有無 あり なし
総数 502 (100.0) 830 (100.0)
現在も養育費を受けている 253 (50.4) 10 (1.2)
養育費を受けたことがある 144 (28.7) 67 (8.1)
養育費を受けたことがない 94 (18.7) 714 (86.0)
不詳 11 (2.2) 39 (4.7)

養育費の取決めがあれば、養育費支払率は5割を超え、「受けたことがある」も含めると8割近くになります。これに対して、取決めがない場合は8割以上が養育費を受けたことすらないわけです。
養育費を強制的に取り立てるべきだという主張はよく見かけますけど、離婚時にちゃんと取決めをするべきという主張はあまり見かけないんですよね。
しかも調停・裁判離婚の場合に限らず、協議離婚であっても取決めがされていれば養育費の支払い率は5割程度で変わりません。

協議離婚以外(調停・裁判)の場合
養育費取決有無 あり なし
総数 169 (100.0) 57 (100.0)
現在も養育費を受けている 84 (49.7) 0 (0.0)
養育費を受けたことがある 56 (33.1) 3 (5.3)
養育費を受けたことがない 22 (13.0) 48 (84.2)
不詳 7 (4.1) 6 (10.5)
協議離婚の場合
養育費取決有無 あり なし
総数 333 (100.0) 773 (100.0)
現在も養育費を受けている 169 (50.8) 10 (1.3)
養育費を受けたことがある 88 (26.4) 64 (8.3)
養育費を受けたことがない 72 (21.6) 666 (86.2)
不詳 4 (1.2) 33 (4.3)


で、親子断絶防止法案ですが、第6条にこう書かれています。

第六条 子を有する父母は、離婚をするときは、基本理念にのっとり、子の利益を最も優先して考慮し、離婚後の父又は母と子との面会及びその他の交流並びに子の監護に要する費用の分担に関する書面による取決めを行うよう努めなければならない。
2 国は、子を有する父母が早期かつ円滑に前項の取決めを行うことができるよう必要な支援を行うとともに、子を有する父母であって離婚しようとするものに対し、父母の離婚後においても子が父母と継続的な関係を持つことの重要性及び離婚した父母が子のために果たすべき役割に関する情報の提供を行うものする。
3 地方公共団体は、子を有する父母が早期かつ円滑に第一項の取決めを行うことができるよう必要な支援を行うとともに、子を有する父母であって離婚しようとするものに対し、前項の情報の提供を行うよう努めなければならない。

http://nacwc.net/files/houbun.pdf

この条文に対しても、反対派は「「書面による取り決めを行うよう努めなければならない」(6条)で触れられているだけで確保の方策については全く言及していないということも驚いた」*1などと否定的な評価をしています。

養育費という観点だけで見ても、ちゃんと取決めをすることは支払い率を高める上で有効であろうと考えられる「子の監護に要する費用の分担に関する書面による取決め」は重要なはずで、この点くらいは評価されてもいいはずなんですけどね。

*1:赤石千衣子氏「親子断絶防止法の案 親子関係維持のみでは子どもは生活できない」http://bylines.news.yahoo.co.jp/akaishichieko/20161104-00064062/