「合意に反する」どころか、むしろ河野談話を尊重してると韓国政府が日本政府から感謝されてもいい話

最近は“世界の記憶”という日本語訳が定着していると思ってたけど、産経の中ではまだ「世界記憶遺産」と訳しているらしい、この件。

2017.10.24 20:01

【歴史戦】「慰安婦資料の登録へ努力」と韓国外務省

 韓国外務省報道官は24日の定例会見で、慰安婦関連資料の世界記憶遺産への登録を審査する国連教育科学文化機関(ユネスコ)国際諮問委員会が始まったことに関連し、「韓国政府は慰安婦問題を歴史的な教訓にしなければならないという立場のもと、登録されるよう努力している」と述べた。慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意では「国際社会で互いに非難・批判することは控える」としている。合意に反するのではないかとの指摘に対し、報道官は「同意しない」と答えた。(ソウル 名村隆寛)

http://www.sankei.com/world/news/171024/wor1710240042-n1.html

2015年の日韓政府間合意で日本政府は「慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」*1であることを認めています。その慰安婦問題に関する記録を記録遺産として残すことは、ユネスコ「世界の記憶」の目的に適っていますので、これに文句をつける方がおかしいんですよね。

2.目的

・世界的に重要な記録遺産の保存を最も相応しい技術を用いて促進すること
・重要な記録遺産になるべく多くの人がアクセスできるようにすること
・加盟国における記録遺産の存在及び重要性への認識を高めること

http://www.mext.go.jp/unesco/006/1354664.htm

慰安婦問題の記録を残すこと自体は「非難・批判すること」にはあたりませんし*2、そもそも安倍政権も継承している河野談話には以下のように書かれています。

 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html

“世界の記憶”は「このような問題を永く記憶にとどめ」る上で格好の舞台でしょう。

日本政府が「歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意」を20年以上も実行せずに放置しているために、韓国政府が日本政府に代わって“世界の記憶”申請に協力しているわけです。

むしろ日本は韓国政府に感謝すべきですね。


*1:http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_001664.html この表現自体は河野談話と同じで、全く進歩がないんですけどね。

*2:それ以前に「本問題について互いに非難・批判することは控える」うえでの前提条件として、「今般日本政府の表明した措置が着実に実施される」というのがあり、「全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置」は今もって未完成ですからね。