毒にも薬にもならぬ日本主導の核兵器廃絶決議案の賛成国・共同提案国が激減する見込み

この件。

日本主導の核廃絶決議案を採択 賛成は23カ国減

10/28(土) 11:15配信 朝日新聞デジタル
 国連総会の第1委員会(軍縮・安全保障)は27日午後(日本時間28日早朝)、日本が主導して24年連続で提出した核兵器廃絶決議案を採決し、144カ国の賛成で採択した。ただ、核兵器禁止条約に触れず、核兵器使用への反対姿勢を弱めたことなどから、賛成国は昨年の167から23カ国減った。核軍縮で存在感を発揮してきた日本の外交に影を落としそうだ。
 今年の決議は、今年7月に122カ国の賛成で採択された核兵器禁止条約に言及せず、核軍縮の促進や核兵器使用の非人道性を訴える表現を大幅に弱めた。その結果、核保有を米ロ英仏中に認め、核使用を禁じていない核不拡散条約(NPT)に沿った内容になっている。米英仏は賛成した。
 投票国数は、昨年が国連加盟国193カ国中188だったのに対し、今年は175にとどまった。棄権は昨年の17から27に増えた。反対は昨年と同じ中国、ロシア、北朝鮮、シリアの4カ国。日本政府関係者によると、今年の賛成144票は2002年の136票以来の低さだという。
朝日新聞社

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171028-00000035-asahi-int

まだ第1委員会での採決ですので、12月の本会議では棄権国が賛成に転じる可能性もありますが*1、第1委員会の時点での賛成144、共同提案国70程度*2というのは賛成国数では2002年以来、共同提案国数では2009年以来の少なさで、本会議でこれが激変するとも考えにくいところです。

年度 全数 賛成国数 棄権国数 反対国数 共同提案国数 政権   反対国
2001年 161  139    19     3     --      小泉政権 米・印・ミクロネシア
2002年 171  156    13     2     9      小泉政権 米・印
2003年 180  164    14     2     19      小泉政権 米・印
2004年 --  --    --     --     31      小泉政権 --  
2005年 177  168    7     2     34      小泉政権 米・印
2006年 178  167    8     3     47      安倍政権 米・印・朝
2007年 182  170    9     3     49      福田政権 米・印・朝
2008年 183  173    6     4     58      麻生政権 米・印・朝・イスラエル
2009年 181  171    8     2     87      鳩山政権 印・朝
2010年 185  173    11     1     90      菅政権 
2011年 181  169    11     1     99      野田政権
2012年 188  174    13     1     99      野田政権
2013年 184  169    14     1     102      安倍政権
2014年 185  170    14     1     116      安倍政権
2015年 185  166    16     3     107      安倍政権 中・露・朝
2016年 187  167    16     4     109      安倍政権 中・露・朝・シリア

(※2004年についてはデータ不見当)

記事にもありますが、本会議でも賛成国144か国なら2002年以降では最低の賛成国数になります。ですが、2001年は全数自体が少なく、棄権国数で見ても今回の第1委員会での27か国がそのまま本会議でも棄権した場合、外務省サイトで内訳が確認できる2001年以来最大になります。

河野外相の予防線

さすがに“核廃絶主導国”としての日本の権威を大きく失墜させそうなこの状況に対して、責任を負わされそうな河野外相は予防線を張っています。

河野外相「核廃絶決議案、私の代で否決されるわけにも」

2017年10月26日22時57分
河野太郎外相(発言録)
 今、日本が国連核廃絶決議案を出している。1回目にこの決議案を出したときの外務大臣が、(父の)河野洋平で、それ以来、二十何年間、ずっと採択されている。それをまさか私の代で否決されるわけにもいかないので、関係する国の外務大臣に電話をしてなんとか賛成してほしいという話を今週ずっとやっていた。票読みで今賛成票がどれぐらいあるだろうかと勘定をしていると、まだ選挙が続いているような気がする。電話をしていろんな国の外務大臣と話をしていると「日本がそう言うなら賛成しよう、支持しよう」と言ってくれる外務大臣もいる。これまで、日本が国際社会の中で様々果たしてきた役割を、国際社会が相当好意的に受けとめてくれている。そんな環境をこれまで先輩方がつくってきてくれた、と改めて感じる。(自身の政治資金パーティー

http://www.asahi.com/articles/ASKBV6JJFKBVUTFK016.html

そりゃまあ、毒にも薬にもならぬ決議案*3ですから否決まではされないでしょうが、賛成国数が20か国以上減れば“唯一の被爆国・日本”という看板に泥が付くのは避けられないでしょうね。
「否決されるわけにも」なんていう低すぎるハードルを設定するのは安倍首相を真似たのかも知れませんが、情けない限りですね。

さて、12月の本会議に向けて核兵器禁止に反対する国が核兵器を廃絶しましょう、と訴える不条理劇は今年も準備万端、なのかどうか、要注目という感じでです。


*1:2016年はボリビアが第1委員会で棄権、本会議では賛成

*2:2016年は109か国 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_002466.htmlhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_004008.html

*3:それですら、今回は表現が後退したと言われていますからねぇ・・・。