熱狂的な安倍支持者が嘘をついてるだけかと思ったら安倍首相の自画自賛の論理の飛躍がひどすぎただけという

安倍首相が“尖閣諸島(釣魚島)が日米安保の範囲内と声明に入れたのは初めて”だと主張した件。

尖閣防衛義務「いちいち再確認する必要なくなった」 安倍晋三首相、日米首脳会談の成果強調

産経新聞 2/14(火) 11:27配信
 衆院予算委員会は14日午前、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相岸田文雄外相ら関係閣僚が出席し、外交、通商政策の集中審議を行った。首相は、トランプ米大統領との首脳会談後の共同声明で、尖閣諸島沖縄県石垣市)が日米安全保障条約第5条の適用対象と明記されたことに関し、「オバマ大統領の時は口頭で言及したが、声明には入らなかった。今後はいちいち再確認する必要がなくなった」と強調した。
 共同声明に「東シナ海の平和と安定を確保するための協力を深める」との文言が盛り込まれたことについては、「初めてのことで、きわめて有意義であり画期的だ」と指摘した。
 3月にドイツを訪問し、日米首脳会談の内容などをめぐりメルケル首相と会談する意向も明らかにした。
 自民党武藤容治氏らへの答弁。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170214-00000520-san-pol

まあ、この産経記事を読むと“尖閣諸島(釣魚島)が日米安保の範囲内と声明に入れたのは初めて”であるかのように、それが成果であるかのように読めますね。

ただですね、“尖閣諸島(釣魚島)が日米安保の範囲内”というのは2014年の共同声明で既に入っていますからね。

日本外務省のサイトに「日米共同声明:アジア太平洋及びこれを越えた地域の未来を形作る日本と米国 」というページがあり、2014年4月の日米共同声明の内容の仮訳が載っています。

日米共同声明:アジア太平洋及びこれを越えた地域の未来を形作る日本と米国

平成26年4月25日
 日米両国は,両国が直面する共通の安全保障上の課題を踏まえ,日米防衛協力のための指針の見直しによることを含め,日米安全保障協議委員会の指示に従い,日米の安全保障同盟を強化し,現代化している。米国は,最新鋭の軍事アセットを日本に配備してきており,日米安全保障条約の下でのコミットメントを果たすために必要な全ての能力を提供している。これらのコミットメントは,尖閣諸島を含め,日本の施政の下にある全ての領域に及ぶ。この文脈において,米国は,尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page3_000756.html

米政府のサイトでも「U.S.-Japan Joint Statement: The United States and Japan: Shaping the Future of the Asia-Pacific and Beyond」というタイトルでこう書かれています。

The United States has deployed its most advanced military assets to Japan and provides all necessary capabilities to meet its commitments under the U.S.-Japan Treaty of Mutual Cooperation and Security. These commitments extend to all the territories under the administration of Japan, including the Senkaku Islands. In that context, the United States opposes any unilateral action that seeks to undermine Japan’s administration of the Senkaku Islands.

https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/2014/04/25/us-japan-joint-statement-united-states-and-japan-shaping-future-asia-pac

日米両政府サイトに掲載されている2014年4月の共同声明(Joint Statement)で明確に、尖閣諸島(釣魚島)が日米安保の範囲内であることが記載されていることがわかりますね。

では、何が“初めて”だったのか、というと「日米安全保障条約第5条の適用対象」の「第5条」という条文の明記が初めてだったということです。
オバマ政権の時は「第5条」という具体的な条文を明示しなかったが、トランプ政権では明示した、だから「今後はいちいち再確認する必要がなくなった」ということらしいです。

で、これがどの程度バカなのかというと。

  • 安倍・トランプ共同声明

The two leaders affirmed that Article V of the U.S.-Japan Treaty of Mutual Cooperation and Security covers the Senkaku Islands. They oppose any unilateral action that seeks to undermine Japan's administration of these islands.

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000227768.pdf

The United States has deployed its most advanced military assets to Japan and provides all necessary capabilities to meet its commitments under the U.S.-Japan Treaty of Mutual Cooperation and Security. These commitments extend to all the territories under the administration of Japan, including the Senkaku Islands. In that context, the United States opposes any unilateral action that seeks to undermine Japan’s administration of the Senkaku Islands.

https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/2014/04/25/us-japan-joint-statement-united-states-and-japan-shaping-future-asia-pac

で、日米安保の第5条はこうです。

ARTICLE V
Each Party recognizes that an armed attack against either Party in the territories under the administration of Japan would be dangerous to its own peace and safety and declares that it would act to meet the common danger in accordance with its constitutional provisions and processes. (略)

第五条
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宜言{宜はママ}する。 (略)

http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19600119.T1J.html
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19600119.T1E.html

安倍・オバマ共同声明内にある「the territories under the administration of Japan」という文言は日米安保条約中には、第5条にしかありません。ですから安倍・オバマ共同声明で示しているのは、日米安保条約第5条以外にあり得ず、改めてどの条文かを確認する意味がそもそもないんですよね。
トランプ政権は、「The United States has deployed its most advanced military assets to Japan and provides all necessary capabilities to meet its commitments under the U.S.-Japan Treaty of Mutual Cooperation and Security. These commitments extend to all the territories under the administration of Japan」を「Article V of the U.S.-Japan Treaty of Mutual Cooperation and Security」と読み替えただけですから。

これを、大成果だ!大金星だ!百点満点だ!と賞賛している様は、さすがに呆れますね。
お前ら、おぼっちゃんに科してるハードルが低すぎだろ、と言いたくなります。

他には、トランプからも言質を取ったのは成果だ!みたいな声もありますが、それって共同声明で明記した内容について、大統領が変わったら信頼できなくなると思ってるんですかね?
だとすれば、今回のトランプとの共同声明もトランプ政権終了後には意味がなくなり、また確認しなきゃいけないっていう認識なんでしょうか。だとすれば、安倍首相の「今後はいちいち再確認する必要がなくなった」という発言は間違ってることになるんですよね。

あるいは、トランプは日米安保条約で明記されてる内容さえ守らないとか思ってたとか。
だとすれば、いくら共同声明出しても、それを守るとは限りませんよね?


日米安保条約は、日本の施政権下にある領域で日米いずれかに対する武力攻撃(armed attack)があった場合に適用される、と1960年から決まっている話で、これに日本の施政権下にある領域には尖閣諸島(釣魚島)を含む、という言質を何年も前に取っているわけです。

中国漁船や中国漁業監視船が尖閣諸島(釣魚島)領海に入っても、武力攻撃(armed attack)でも何でもありませんし、軍艦(稲田防衛大臣の言うところの“中国の戦艦”)が領海内を航行しても、航行の自由(freedom of navigation)であってこれも武力攻撃(armed attack)ではありませんからね。

今回の安倍・トランプ共同声明で、こういった状況を抑止できるようになったわけでもなく、これまで通り、それこそ半世紀前からと同様に日本の施政権下にある領域での日米いずれかに対する武力攻撃(armed attack)に対する抑止として機能するだけの話です。


まあ、熱狂的な安倍信者にとっては教祖様の言うことは絶対ですから、成果みたいに語られれば疑いもせずそれを信じるんでしょうけどね。

私から見れば、嘘つき同志が仲良く語らってきて国内に向けて中身のない調子のいいことを吹いて回ってるだけとしか思えませんけどね。
「信頼関係」とか言ったもん勝ちの具体的な指標のないものを嘘つきに誇られてもねぇ・・・。