4月3日の西日本新聞の記事より。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170403-00010004-nishinpc-int日本と将来どう連携していくかを語るべき
一方で、日本政府は支援金の原資となる10億円を拠出し「合意は全て履行した。ボールは韓国にある」という姿勢だが、これでは前に進まない。合意を前提として、他に何ができるか考える必要がある。
1995年に設立されたアジア女性基金(2007年解散)の償い金には歴代首相の「おわびの手紙」が添えられた。これと同じ範囲の内容で構わないから、安倍晋三首相も元慰安婦に手紙を出してはどうか。国会や記者会見で合意への思いを自分の言葉で語ってもいい。そうすれば韓国の雰囲気も変わるはずだ。日本の保守層の反発を抑えられる安倍首相にしかできないことだ。
西日本新聞のこの認識そのものはまあ悪くはありませんが、その指摘は1年前に、遅くとも半年前にしておくべきでしたね。
日本政府や日本社会自体が、日韓政府間合意を慰安婦に対する侮辱行為が無制限に許された免状であるかのように扱ってきておいて、今さら感が半端ないですよね。
強姦した相手に10億円払えば強姦を無かったことにできるという認識こそが、問題をここまでこじらせた原因でしょうに。
“慰安婦は性奴隷ではない”とか国連で主張するような日本政府の態度は見えてる?
韓国の次期大統領選の候補者たちは、合意破棄や再協議を日本に求める構えだが、それは非現実的だ。日本側が受け入れる可能性はない。選挙で得票を伸ばすために強硬姿勢を取るのではなく、慰安婦問題を解決して日本と将来どう連携していくかを語るべきだ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170403-00010004-nishinpc-int
「再協議」を安倍政権が受け入れる可能性は確かにないでしょうね。ただ、強姦魔が謝る見込みはないからと言って、謝罪を求めてはならないわけではないですし、当事者である日本政府以外の立場のメディアが強姦魔を批判してはいけないわけでもありません。“社会の木鐸”が謝る見込みはないという理由で強姦魔を許すこと自体が間違ってますよ。
あと「合意破棄」は日本側が受け入れるかどうかに関わらず、韓国側が主体的に選択できますね。
また、「選挙で得票を伸ばすために強硬姿勢を取るのではなく、慰安婦問題を解決して日本と将来どう連携していくかを語るべき」などという言説自体、「合意は全て履行した。ボールは韓国にある」という安倍政権の姿勢とどれほど違うんですかね。
「当事者本位」という虚構
問題が放置され、元慰安婦が全員亡くなってしまうのが最悪のシナリオだ。日本も韓国も政治が責任を果たしたことにならない。両政府は当事者本位の現実的な対応を取るべきだ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170403-00010004-nishinpc-int
日本政府や日本社会は「元慰安婦が全員亡くなってしまうのが最悪のシナリオ」を望んでいるとしか思えませんけどね。ハンセン病や公害病でよく使ってきた手ですし。
一番問題なのは「当事者本位の現実的な対応」という言い草です。
記事タイトルで「元慰安婦、合意「受け入れ」7割超」と、本文でも「解決の鍵を握るのは当事者の思いだ。元慰安婦の7割超が日韓合意を受け入れる意思を表明した」と強調している部分です。
“当事者が受け入れたんだからそれを尊重せよ”、“当事者の7割超が受け入れている”と。
一見、正しそうですけどね。
当事者は別にこの日韓政府間合意を歓迎したわけじゃなく、「手紙」も「自分の言葉」も拒絶するような安倍政権が高支持率となる日本社会、慰安婦を売春婦呼ばわりして侮辱する右翼論者が蔓延しろくに批判もされない日本社会、“リベラル”でさえ朴裕河路線を賛美するような日本社会、そういうのに絶望して諦めて“受け入れた”のではないですかね。
20年以上運動してきて、自らの寿命も尽きようとしている中で、「私たちの存在が引っ掛かって、両国関係がいつまでもうまくいかないのは心苦しい」という思いから受け入れた日韓政府間合意を、“当事者が受け入れたから”という理由で金科玉条とするのは、当事者に寄り添う態度ではないでしょう。
むしろ、当事者の絶望した挙句の諦めを当事者の自由意志であるかのように偽装する行為であって、それって騙されたりそれ以外の選択肢を奪われた結果として慰安婦になる以外なかった被害者を自由意志の売春婦呼ばわりするのと一緒では無いですかね?
合意を受け入れた7割の元慰安婦らは、今もって戦時性暴力に向き合うことの出来ない未熟な社会、まともな解決ができない政府、無能・未熟さゆえに日韓関係の改善すらできない両国政府・社会、そういうものを救済するために、“諦めて受け入れる”という重荷を自ら背負って人生を終える覚悟に思えます。
何の呵責も感じずそれに乗っかって、“当事者が受け入れたんだからそれを尊重せよ”などという気にはなれないですね。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170403-00010004-nishinpc-int元慰安婦、合意「受け入れ」7割超 決断尊重を 日韓関係改善の糸口は
西日本新聞 4/3(月) 11:10配信
こじれた日韓関係を解きほぐす糸口はあるのか。韓国の政治外交に詳しい奥薗秀樹・静岡県立大大学院准教授に聞いた。
一昨年末の従軍慰安婦問題を巡る日韓合意で、韓国はソウルの日本大使館前の少女像について「適切に解決されるよう努力する」と約束した。しかし、実際は撤去されず、釜山の日本総領事館前にも新たな像が設置された。政府同士の約束が韓国の国内事情で守られないことに、親韓派の日本人までが違和感を抱いている。かなり深刻な事態だ。
合意時の朴槿恵(パククネ)大統領が罷免され、朴氏の政策を全て否定したい気持ちは分かるが、国際的な合意までほごにするのは無責任と言わざるを得ない。韓国側は合意の重みを理解すべきだ。
解決の鍵を握るのは当事者の思いだ。元慰安婦の7割超が日韓合意を受け入れる意思を表明した。私が話を聞いた複数の元慰安婦は「日本政府にもっとストレートに謝ってほしいけど、両政府が決めたんだから受け入れる」と話した。「私たちの存在が引っ掛かって、両国関係がいつまでもうまくいかないのは心苦しい」という人もいた。
韓国では元慰安婦本人の意思と関係なく、子や孫が日本からの支援金を受け取っているという指摘もあるが、それは一部にすぎない。葛藤の末に合意を受け入れた元慰安婦の決断を重く受け止めないといけない。日本と将来どう連携していくかを語るべき
一方で、日本政府は支援金の原資となる10億円を拠出し「合意は全て履行した。ボールは韓国にある」という姿勢だが、これでは前に進まない。合意を前提として、他に何ができるか考える必要がある。
1995年に設立されたアジア女性基金(2007年解散)の償い金には歴代首相の「おわびの手紙」が添えられた。これと同じ範囲の内容で構わないから、安倍晋三首相も元慰安婦に手紙を出してはどうか。国会や記者会見で合意への思いを自分の言葉で語ってもいい。そうすれば韓国の雰囲気も変わるはずだ。日本の保守層の反発を抑えられる安倍首相にしかできないことだ。
韓国の次期大統領選の候補者たちは、合意破棄や再協議を日本に求める構えだが、それは非現実的だ。日本側が受け入れる可能性はない。選挙で得票を伸ばすために強硬姿勢を取るのではなく、慰安婦問題を解決して日本と将来どう連携していくかを語るべきだ。
問題が放置され、元慰安婦が全員亡くなってしまうのが最悪のシナリオだ。日本も韓国も政治が責任を果たしたことにならない。両政府は当事者本位の現実的な対応を取るべきだ。
=2017/04/03付 西日本新聞朝刊=
西日本新聞社