都議選で民進党「大惨敗」という評価はちょっと違うと思う。
BuzzFeed記事「「大敗」したのは自民党なのか 都議選を得票数から分析すると見える事実 議席数とは、また違う結果が…」の件。
記事は直近3回の都議選(2009年、2013年、2017年)での得票数を見て、以下のように評しています。
5議席(選挙前7)と健闘したように見える民進党は、得票でみると半分近く減らした。民主党時代に圧勝した2009年と比べれば、191万票も差が出た。6分の1の「大惨敗」だ。
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/tokyo-2017-kekka?utm_term=.fg3K4BxEm#.aiDvAO5NK
実際、民進党の得票数は以下の通りです。
2009年 | 2,298,495 |
---|---|
2013年 | 690,623 |
2017年 | 385,752 |
とは言え2009年の都議選は、政権交代直前の民主党に追い風が吹いていた時期ですから、これを基準に現状の票数が「6分の1の「大惨敗」」というのはあまり適切な評価とは思えません。むしろ、今回の都議選で自民党は、政権を失う直前の2009年の時よりも得票数を減らしているわけで、こちらの方がどちらかと言えば衝撃です。
(自民党の得票数)
2009年 | 1,458,108 |
---|---|
2013年 | 1,633,304 |
2017年 | 1,260,101 |
2009年との比較だけではなく、前回2013年との比較でも民進党の得票数は「半分近く減らした」という評価はどうでしょうか。
実はこれも少しおかしいんですね。
2013年都議選で民主党はほとんど全ての選挙区(22区10市を含む38選挙区*1)で候補者を立てていましたが、今回は14区5市を含む21選挙区でしか候補者を立てていません。候補者を立てていない選挙区では民進党の得票数は発生しませんから、選挙区を考慮せずに得票数を比較しても意味があるとは思えません。
そこで、今回民進党が候補者を立てた21選挙区に限定して、2009年、2013年、2017年の得票数の推移を見てました。
対象選挙区は、新宿区、江東区、品川区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、八王子市、武蔵野市、三鷹市、町田市、小平市、北多摩第一、北多摩第二 の21選挙区です。この21選挙区は2009年、2013年、2017年のいずれも民進党(民主党)、自民党とも候補者を立てています。
結果はこうです。
- 2017年都議選で民進党が候補者を立てた14区5市を含む21選挙区の得票数
年 | 民主・民進 | 自民 | 都ファ |
---|---|---|---|
2009年 | 1,503,956 | 894,205 | - |
2013年 | 404,945 | 1,027,325 | - |
2017年 | 385,752 | 799,019 | 1,223,532 |
(※小数点以下四捨五入)
2009年に比べるともちろん激減していますが、2013年と比べるとほとんど減っていないことがわかりますね。2013年は政権を失った直後の都議選という逆風の中での結果で、今回2017年は小池vs自民という対立に埋没する中での結果ですが、概ね40万票を確保しているのはまず検討した方と言えるでしょう。少なくとも「5議席(選挙前7)と健闘したように見える民進党は、得票でみると半分近く減らした」というBuzzFeed記事の評価はあたらないように思えます。
もちろん、この21選挙区以外で候補者の都ファへの寝返りが立て続いたわけで、それを阻止できなかったという課題はあるにせよ、候補者を立てることのできた21選挙区については一定の支持層を維持しているわけで、そこは評価すべきだと思います。
また、候補者を立てられなかった選挙区にも一定の民進党支持層はいるはずで、効率的な選挙協力が出来ればある程度、議席につながる結果を出せた可能性はあると思います。
まあ、小早川秀秋が多数現われたことが痛かったことは間違いないですけどね。