フランスの徴兵制復活方針の表明に関する雑感

主に軍オタが流布した徴兵制非合理論については、4年前に批判しました。
徴兵制って別に軍事的合理性がないわけじゃないと思いますが。
徴兵制に関すること
徴兵制デマ
徴兵制非合理論の陥穽

↑こんな感じで。

最近ちょいちょい海外で徴兵制を復活させる動きがあって、その界隈が動揺気味です。
直近ではフランスのこんなニュース。

徴兵制復活へ 仏大統領表明 18~21歳の男女対象

1月20日 0時44分
フランスのマクロン大統領は、軍の幹部らを前に演説を行い、15年以上前に廃止された徴兵制度を復活させる考えを示し、相次ぐテロの脅威に備えるためなどとして18歳から21歳の男女に対し、1か月間の兵役という形で導入を目指すと見られます。
フランスのマクロン大統領は19日、海軍の基地がある南部のトゥーロンで、軍の幹部や兵士を前に年頭の演説を行いました。
この中で、「すべての国民を対象にした徴兵制度に向けて取り組み、実現させる」と述べ、2002年に廃止となった徴兵制度を復活させる考えを示しました。
マクロン大統領は、去年の大統領選挙で、相次ぐテロの脅威に備えるためや国民の団結を強めるためだとして18歳から21歳の男女に対し、軍による訓練を中心とした1か月間の兵役の義務化を公約に掲げていました。
今後、この公約に沿った形で導入を目指すと見られますが、徴兵制度の復活には、その効果を疑問視する声や多額の費用がかかるという批判もあり、実現に向けて曲折も予想されます。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180120/k10011295281000.html

「18歳から21歳の男女に対し、1か月間の兵役という形で導入を目指す」とありますので、実態としては即戦力としては考えにくいところです。マクロン大統領は「相次ぐテロの脅威に備えるためや国民の団結を強めるため」という徴兵制復活を公約としたとのことですが、「1か月間の兵役」では軍事訓練としては満足なレベルに達するとは考えられず、狙いは「国民の団結を強めるため」にありそうです。
1か月の訓練を終えた国民に連帯意識を持たせるという感じですかね。

それ以外の目的としては動員システムを稼働状態に置くということが考えられます。徴兵経験者の情報を国が管理し、非常時に招集できるようにするための官僚機構の整備ですね。召集される徴兵経験者にも非常時に自分がどこに招集されるのか理解させるという意味もあるでしょう。


このマクロン式徴兵制度案については、次のような点が懸念されます。

徴兵を経た国民に連帯意識を持たせ「国民の団結を強める」というと、いいことのようにも思えますが、では徴兵対象外の外国人労働者や移民などはどうでしょうか?徴兵経験の有無によって“国民”を分断させる副作用が生じるのではないでしょうかね。すなわち外国人・移民に対する排斥・差別を助長するのではないかという懸念です。「相次ぐテロの脅威に備えるため」が暴走することを懸念せざるを得ません。

もう一つは、召集するための徴兵経験者の情報管理を国に委ねることの懸念です。まあ、2002年まで徴兵制度があった以上、その辺は今さらかも知れませんが。