産経新聞報道に見る自民党議員の場合と野党議員の場合の扱いの違い

まず自民党議員で第四次安倍内閣政務官に就任した工藤彰三氏の政治資金規正法違反事例の場合。

会費制集会の収入記載せず 工藤彰三政務官政治団体

2018.10.15 13:00
 自民党工藤彰三(しょうぞう)国土交通政務官が代表を務める2つの政治団体が、会費制の集会を開いて得た収入を当初、政治資金収支報告書に記載していなかったことが15日、分かった。このうち一部について工藤氏側は今年9月に訂正している。
 不記載だったのは工藤氏が代表の政治団体「彰友(しょうゆう)会」と「自民党愛知県第4選挙区支部」。事務所などによると、彰友会は平成26、27年に「総会」と「国政報告会」を計3回、同支部では25、26年に「工藤彰三を励ます会」を1回ずつ開催。計5回の集会はいずれも会費制で支援者ら数百人が集まった会もあったという。
 しかし、両団体の各年の収支報告書には、いずれの収入も記載されていなかった。工藤氏の事務所は今年9月に彰友会の報告書を訂正。26年分に総会2回の収入として49万円と約52万円を、27年分には国政報告会の収入190万円を追加し、差額約27万円を次年度に繰り越した。
 事務所は同支部の記載についても確認し次第、訂正するという。不記載の理由について事務所は「収支均衡だったため、当時の秘書が記載する必要がないと誤解した」と釈明した。
 政治資金規正法は、政治活動の透明性確保のため、政治団体に全ての収入の記載を義務づけている。工藤氏は「政治資金パーティという感覚はなかった。チェックが甘かった。確認を怠った自分に責任がある」と説明。その上で自身の責任について「政務を全うしたい」と述べた。
 工藤氏は名古屋市議を2期務め、24年衆院選で愛知4区から初当選。今月の内閣改造で国交政務官に就いた。

https://www.sankei.com/affairs/news/181015/afr1810150019-n1.html

次に立憲民主党議員の近藤昭一氏の同類(?)事例の場合。

立憲民主・近藤昭一副代表、会費制集会の収支不記載 政治資金規正法違反か

2018.10.21 01:00
 立憲民主党近藤昭一副代表=衆院愛知3区=が代表の政治団体が、平成26年に開いたパーティー収入を同年分の政治資金収支報告書に記載していないことが20日、分かった。政治資金規正法違反(不記載など)に当たる可能性がある。
 近藤氏が発行している会報によると、近藤氏側は26年6月1、8両日に毎年恒例という「こんちゃん・サマーパーティー」を名古屋市内で開き、計1200人が集まった。26年5月発行の会報ではその日に「こんちゃんのビアパーティー」を大人3700円、小中学生1500円の会費制で開くと告知し、申込先は「近藤事務所」だった。
 政治資金規正法は事業ごとの収支の記載を求めている。近藤氏の事務所は取材に「イベントが実際に行われたか、どこが主催していたか調査中だ。仮に事務的なミスがあった場合は収支報告書を訂正したい」とコメントした。自民党工藤彰三国土交通政務官衆院愛知4区=は自らが代表の政治団体が会費制集会の収入を収支報告書に記載せず、報告書を訂正、謝罪した。

https://www.sankei.com/west/news/181021/wst1810210005-n1.html

タイトル

自民党議員の場合には「会費制集会の収入記載せず」の主語が「工藤彰三政務官政治団体」であるかのように記載されていますが、野党の場合は「立憲民主・近藤昭一副代表、会費制集会の収支不記載」と議員本人を主語にしています。そして、野党の場合のみ「政治資金規正法違反か」という文言をタイトルに入れていますね。

内容

自民党議員の場合は「会費制の集会を開いて得た収入を当初、政治資金収支報告書に記載していなかった」と過去形で報じ、既に問題は解決しているかのように報じています。一方の野党議員の場合は「パーティー収入を同年分の政治資金収支報告書に記載していない」と現在形で報じています。
ちなみに自民党・工藤議員が「今年9月に彰友会の報告書を訂正」したというのは、4月以降たびたび朝日新聞に本件に関して取材されていたうえで9月になって訂正したと10月に回答したという経緯があります。

朝日新聞「工藤政務官、集会収入すべて不記載 識者「最悪ケース」」(沢伸也、竹井周平2018年10月15日05時05分))
 朝日新聞は4月以降、複数回にわたって工藤氏側に取材。工藤氏の事務所は3回目の回答となった今月9日、「収支報告書の作成担当の元秘書に確認したところ、いずれも会費を徴収した集会であり、収支トントンの事業であったことから、収支報告書に記載する必要がないと考え、記載しなかった」とし、9月に報告書を訂正したことを明らかにした。同法では収支の差額が0円でも記載しなければならない。

https://digital.asahi.com/articles/ASLBG4WVWLBGUTIL00F.html

立憲民主党・近藤議員に関して「パーティー収入」と記載しているのも、政治資金問題の文脈で「パーティー収入」と言えば普通“政治資金パーティー”のことだと解釈されると思いますが、この場合は集会の名前が「サマーパーティー」や「ビアパーティー」だったというだけで高額の会費をとる政治資金パーティーとはかなり毛色が違う集会です。「大人3700円、小中学生1500円」という実費相当の会費です(会場となった丸栄ビアガーデンの入場料金と同額。)。
むしろ、自民党・工藤議員のケースの方が、会費2万円で一般的な認識でいう“政治資金パーティ”に見えます

 彰友会の会長は、東海・関東地区で20の医療機関を展開する医療法人「偕行会(かいこうかい)」グループ(本部・名古屋市)の会長で、彰友会の内部資料などによると、同グループの総務部の担当者が15年の国政報告会の出席を取引先に依頼した。呼びかけた取引先は少なくとも60社を超え、会費は2万円で、約100人が参加したと記録されている。

https://digital.asahi.com/articles/ASLBG4WVWLBGUTIL00F.html

集会の様子もこんな感じ(場所はヒルトン)。
ameblo.jp

www.kudoshozo.jp
www.kudoshozo.jp
www.kudoshozo.jp

ちなみに立憲民主党・近藤議員のケースで問題視された集会はこんな感じ。
www.kon-chan.org

あと、産経は野党議員の場合のみ「政治資金規正法違反(不記載など)に当たる可能性がある。」との一文を入れていますが、自民党議員の報道には「政治資金規正法は、政治活動の透明性確保のため、政治団体に全ての収入の記載を義務づけている」とは述べているものの「違反」の可能性などといった文言は使っていません。

立憲民主党・近藤議員のケースはそもそも法的に全く問題ない可能性が高いように思うのだが

近藤議員ですが、2018年にも同じサマーパーティーを開催しています。

 今年もやります!恒例のサマーパーティー!2日間行いますのでご都合の良い日に!
 期日:6月3日(日)、6月10日(日)
 時間:両日とも16:00~18:00
 会場:栄ど真ん中ビアガーデン(丸栄屋上)
 参加費:3,800円
 ※小中学生1,500円 小学生未満は無料です
事前の申し込みが必要です。
お申込み、お問い合わせは近藤昭一事務所内サマーパーティー実行委員会まで!

https://www.kon-chan.org/wp/wp-content/uploads/2018/05/152.pdf

産経報道では「大人3700円、小中学生1500円の会費制で開くと告知」と書いてありますが、少なくとも2018年の告知では「参加費」となっています。まあ、参加費であってもこれを近藤事務所が徴収してその中から費用分を支出していたなら自民党・工藤議員と同様に政治資金規正法に抵触するとは思います。
ただ、会場となった「栄ど真ん中ビアガーデン」ですが、16時以降の2時間料金が1人3900円、小中学生だと1600円なんですよね。

http://www.beergarden.co.jp/shop.html

参加費が通常の入場料金より100円安くなってるのが、もし近藤事務所が肩代わりしていた場合はそちらの方が相当問題で違法性も高いと思いますが、単純に団体割引で100円安くなっているだけなら、参加者は実費のみを払ったことになります。そして、その実費を入場の際に店側が直接参加者から受け取っていた場合は、近藤事務所としては収入にも支出にもならないわけですから、記載されていないことに問題があるようには思えないんですよね。
ビアガーデンという形態の性質上、客の入場の管理を店が直接やってないとも考えにくいですし。
少なくとも、工藤議員のようなヒルトンホテルで会費2万円を取って開いた政治資金パーティーと同種とはちょっと言いがたいように思いますね。

メディアにはこの辺をちゃんと取材してほしいところです。