赤旗のコラムが戦時中の朝鮮人強制連行補償問題を端的にまとめ昨今の外国人労働者受け入れ問題にもつなげて秀逸だった件

以下の内容です。

2018年11月1日(木)

きょうの潮流

 戦争遂行のために、募集という名で始まった朝鮮人労働者の集団移入。太平洋戦争の激化とともに日本に強制動員されていきました▼各地の炭鉱、金属鉱山や土木場、軍需工場。労働力不足を補うため、最も過酷な職場で劣悪な環境下で飢えや暴力にさらされました。奴隷のように扱われた、地獄の日々だった。数知れない証言がすさまじい実態を語っています▼17歳のときに「勤労報国隊」によって動員された李春植(イ・チュンシク)さんもその1人。当時の日本製鉄(現新日鉄住金)釜石製鉄所で1日12時間も鉄材を運ばされ、熱い鉄材の上に倒れて大けがを負ったことも。技術を習うどころか、賃金さえも受けられなかったと韓国紙が報じています▼李さんら元徴用工4人が新日鉄住金を訴えた裁判で、韓国の最高裁判所は賠償を命じました。これまで日本政府や被告企業は日韓請求権協定によって解決済みとしてきましたが、判決は個人の請求権は消滅していないと▼安倍首相は「あり得ない判断」と抗議。自民党からも「国家の体をなしていない」と韓国への非難が相次いでいます。自国民の安全が脅かされても米国には何も言えないのに、加害者として誠実に向き合わなければならない国や人びとには冷淡な政権の姿が露骨に表れています▼国会では外国人労働者の受け入れ拡大が焦点の一つに。個人の尊厳や人権が守られず、単なる労働力として扱われている現状のままでいいのか。彼らを守ることは働くすべての人たちの権利にもつながっていきます。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-11-01/2018110101_06_0.html

「きょうの潮流」はちょいちょい秀逸なものを出している印象。「自国民の安全が脅かされても米国には何も言えないのに、加害者として誠実に向き合わなければならない国や人びとには冷淡な政権の姿」とかも良い指摘ですが、直近で問題になっている“移民政策”にも言及し「個人の尊厳や人権が守られず、単なる労働力として扱われている現状のままでいいのか。彼らを守ることは働くすべての人たちの権利にもつながっていきます」と指摘することで、朝鮮人強制連行補償問題が単なる歴史問題ではなく、現在の労働問題・外国人労働者受け入れ問題に関わる問題であることを明らかにしています。

日本の全国紙が朝鮮人強制連行問題をろくに語ることもできないレベルに堕していますので、朝鮮人強制連行補償問題を現在の外国人労働者受け入れ問題と対比して語るなんてことも期待できないんでしょうけどね。


ところで、戦時中の朝鮮人強制連行はもちろん、国内企業での労働力不足を補うために行われたわけですが、同時に朝鮮人が内地に定住しないようにという差別的な声から2年で帰国させようとしたり、そうかと思えば短期労働だけでは“募集”で集めることが難しいから話を盛って騙して連れてきたり、企業としてもせっかく熟練工に育った朝鮮人を2年契約だからと帰国させることには反対したりと、矛盾する色んな思いが交錯していたです。
決して国家的意図として朝鮮人を苦しめようとしたわけではないものの、結局“労働力だけよこせ”、“定住は断る”、“用が済んだら帰れ”といった日本企業・内地民衆の声に場当たり的に対応した結果として生じる矛盾を全て朝鮮人労働者に押し付けた挙句、敗戦後は外国人扱いにして補償の対象からも外したわけです。
韓国併合を合法だとみなしたとしても、さすがに行政のあり方として不法といっていいレベルでしょうが、日本政府・司法は徴用は合法、募集・官斡旋は知らんといった態度で被害者を無視したわけですからね。1965年請求権協定の際も日本は韓国併合も徴用も合法だと立場を取っていたので、行政行為の不法性に対する賠償請求権は請求権協定の対象とはなっらなかったわけで、そこを今回突かれてしまったと。せめて、1965年の時点で植民地支配の不当性を日本政府が認め、それも含めた賠償的性格をもった経済協力金であることを明言していれば、今回のような大法院判決は出なかったでしょうけど。植民地支配の不当性を認めたくないという幼児的な日本のこだわりが招いた結果でもありますね。

さて、それはともかく、朝鮮人強制連行問題というのは一方向だけの単純な政策的な思惑だけで生じたのではなく、相互に矛盾するような様々な思惑が絡み合って形成されたわけで、その中には家族を呼べるようにしては、とか善意と取れるようなものもありました。そういう様々な思惑の併存というのが、現在の外国人労働者の受け入れ問題における様々な意見の併存と、何というかとても似てるなあ、と感じるんですよね。
80年前と同じ道を歩んでいるように思えてならないですし、同時にそれによって多くの外国人労働者を苦しめても、80年後にまた安倍みたいな奴を首相に選んで自分たちの罪を忘れるんだろうなぁと諦めの気持ちを抱かざるを得ないところです。