公明党議員の予言

今のように堕落する以前の公明党には黒柳明という参議院議員がおりました。お笑いウルトラクイズの常連でしたが、それはさておき。

1965年12月3日の国会でこんなやり取りがありました。

第050回国会 日韓条約等特別委員会 第9号

昭和四十年十二月三日(金曜日)
(略)
○黒柳明君 (略)対日請求八項目、その中に、御存じのように、強制労働者に対しての請求権、まあ私は事情は知りませんですが、あるいは八億ドルの経済協力にすりかえられた、こういうことでございますが、あの対日賠償八項目の中に出ております。もしも、外務大臣がほんとに申しわけないというのであるならば、そういう人たちに対して補償しなければならないんじゃないか。なぜ、あの対日賠償の八項目がほごにされたか。すなわち、それに対しては裏づけがない、事実が明白でないと。そのほか六点云云とあげられましたですが、この強制労働の問題に関しては、事実がはっきりしてないことじゃなくして、わが国が強制労働をやったわけです。引っぱってきたわけです。それに対しての資料は、必ずやわが政府が保管してあるんじゃないか、事実ははっきりしてんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。反省をするならば、その人たちに対しての補償についてお考えになっているかどうか、この点、お伺いしたいと思います。

国務大臣椎名悦三郎君) この問題は、それはもう長い時日を経過しておるし、それから日本にも敗戦という、それからまた本土爆撃という大混乱がありました。朝鮮半島においても、御承知の大動乱があったわけです。これを裏づけるよすがもない、こういうことで、それは合意の上に完全かつ終局的にこれを終了したことにいたしまして、そして経済協力という、その方法によってその問題に置きかえるということに相なった次第で、御了承願います。

○黒柳明君 要するに、終戦のときにその資料はもうなくなった、こういうようなことでございますが、私も今回の質問に対して資料要求しました。そうしましたら、戦争のときに法務省も焼けちゃったからないと言っていた、ない、ないと言っていた資料が、あとから一つ二つどんどん出てきました。これはみんな国会図書館にある資料ばっかりでございます。まあ原本は焼けたか知りませんが、国会図書館にすべてあるわけですが、そういうようなことから、どこかにもぐり込んでいる可能性もあるのじゃないか。(略)

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/050/0400/main.html

無いと言ってた資料があとから出てくるという事態は今もって続いているわけですが、今使われる理由は空襲で焼けたからとかではなく“破棄した”という官僚の虚偽答弁というのが情けない。
ともあれ、上記引用で興味深いのが1965年日韓請求権協定に関して、日本国内でも「強制労働者に対しての請求権」が「八億ドルの経済協力にすりかえられた」という見解を示す議員がいたという点。

○黒柳明君 (略)「東亜日報」――御存じのように韓国一流新聞でございます。昨年の十二月十五日、一年前の新聞を引用して申しわけございませんが、こういうふうに書いてございます。「さる三日から始まった人権擁護週間は十三日で終った。この期間にさまざまに人権を侵害または剥奪されたという数多くの人々の涙ぐましい訴えが報道された。」、これは現実に涙ぐましい訴えらしいです。「……しかしそれよりも重大で長年の宿題が一つまだそのまま残っている。日本帝国主義統治三十六年間の弾圧政治の下で、わが同胞がうけたあらゆる迫害と被害がそれである。われわれの愛国志士と殉国先烈が日本の警察からうけた拷問・虐殺・掠奪など無数の人権じゅうりんの蛮行は、わが国民が子孫代々いく百年、いく千年へても永遠に忘れることのできない国恥・民辱ではないのか。日本帝国主義侵略者のそのような国際的大量人権抹殺の事実をなぜ韓日会談からさっさと抜きさり闇から闇にほうむりさろうとしているのか、という義憤にもえた陳情書が、殉国先烈遺族会から国際人権擁護連盟韓国委員会に提出された。当然今後とも強く叫ばれなくてはならない民族的抗議である。乙巳保護条約締結の一九〇五年から一九四五年までの満四〇年間、独立運動の隊列に加わった闘士と人民が無惨に殺されたその惨景を回想する時、この地に生をうけた者は誰しも血涙を流さずにはおれない。ここにあの悲惨な被害状況の概略を紹介する。義兵戦死四万名(概算)、三・一運動時の被殺者六六七九名、負傷者一万四六一〇名、投獄された者五万四〇〇〇名、うち受刑者一万八八九五名、焼かれた建物五六七八棟、満州大虐殺時の南満地域被殺者三七八六名、東、北満地域被殺者三万四六八六名、南、北満の家屋被害四八六二棟などである。一方、三二運動後満州国が生れる時まで南満地域で七八六七名、東、北満地域で五九〇三名が各々殺された。そして一九三〇年満州岡成立後から八・一五解放まで南満地域で一万二三八六名、東、北満地域で八七六七名が殺された。そして南、北満の家屋被害は二六八万九八棟等々……政府当局がこの恐るべき殺人鬼日本帝国主義の残した残虐非道な数字を知っているなら当然韓日会談でこれに対する公式謝罪と〈補償〉を正々堂々と要求しなければならないはずである。もし、これを韓日交渉が全的に無視してしまうものであるなら、結局独立運動それ自体を否定するという無意味な結論の他に出てくるものはない。」、こういうふうに、韓国一流の新聞が、全――全と言えないかもわかりませんが、韓国民の声を載せて、こういうふうに書いてあるわけです。すなわち、当然、韓日会談でこれに対する公式謝罪と補償を正々堂々と要求しなければならないのだが、この要求が、どういう過程を通ってか知りませんが、八億ドルの経済協力にすりかえられた、こういう事実でございますが、はたしてこれで道義上、いままで外務大臣がおっしゃったこと、そうして、いまのこの新聞の事実、あるいは、これから大きな使命を帯びて韓国に乗り込んでいくわけでございますが、そういう関連性を持って、道義上、こういう新聞を読んで、はたしてどのようにお考えになるか。政治協力、また李外務部長官も、八億ドルはほとんど民間には使われないだろうと、こういうようなことも述べております。まあ、このことはそのときになってみなければわかりませんが、はたして、こういう一連の事柄に対し外務大臣としてはどのようなお考えをお持ちでございましょうか。

国務大臣椎名悦三郎君) 協定にも書いてありますが、とにかく、これが最も有効に韓国の経済建設、民生安定向上に役立つように使われなければならない、こういう趣旨のことが書いてありますが、これをあくまでそのとおり十分なる効果をあげるように、われわれは最善の努力をすべきである、かように考えております。

○黒柳明君 もうこれ以上論議しても平行線をたどると思います。総理もりっぱな方である、一国のその責任者がりっぱな方であるという人ならば、決してりっぱな人でないわけはない、私はこう信じたいと思います。しかし、もしも、そのことばに反したような事実が批准後にあらわれるようなことがあったらば、これは国民総力をあげてそのことばを取り消し、また、敵として戦っていかなければならない場面もあらわれてくるのじゃないか、こういうふうな想定をするわけでございますが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/050/0400/main.html

要するに、強制連行に対する「公式謝罪と補償」を「八億ドルの経済協力にすりかえ」たことに対して、「道義上」どうなんだよ、ということです。
その後に韓国併合に至るまでの日本の行為について指摘した上で、こうも言ってます。

 さらにここにあげますと、幾多そういう暴徒を殺し、あるいは殺虐し、弾圧した外交資料が、日韓ともども数多く出てございますが、あまり長く読み上げますと、皆さんに御迷惑おかけすると思うんです。こういうような事実があった。とういうような事実を考えて、それでも私はあえてこの条約を無効であるとか、そういうことは言いませんが、こういう事実はすべて認められておるわけです。くどいようですが、総理も伊藤博文はうまくないことをした、こういうわけです。であるならば、道義上からも、隣の国であって親善の間柄を結ばなければならない朝鮮の人たち、そういうような人たちのことをもう一回考え直して、あくまでも経済協力、そういう一片の形にとどまらず、もっともっと検討して、賠償を払う、あるいは、それ相当なめんどうを見てやるというお考えがここからは出てこないものだろうか。総理は非常に感情もろい方のように察します。椎名外務大臣のことばを聞いて、涙を流そう、こういうふうにおっしゃったのです。であるならば、この文章を読んで、ほんとうに腹の中では泣いているのじゃないか、こう思います。であるならば、たとえできないことでも何とかしてやっていこうという意思ぐらいはあるのじゃないか、こう思うわけでございます。その点どのようにお感じでございましょうか。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/050/0400/main.html

「経済協力、そういう一片の形にとどまらず、もっともっと検討して、賠償を払う、あるいは、それ相当なめんどうを見てやるというお考えがここからは出てこないものだろうか」とまで言ってますね。日韓請求権協定で解決済みとはならないことが当時の日本社会では割と理解されていたと言えるでしょう。

あれから50年が過ぎ、歴史修正主義ナショナリズムに酔い、安倍の毒に中っている日本社会には、もう理解できないでしょうけどね。