「脅威」というよりは海難救助作業中の爆音として目障りだったんだろうなとは思うけどね。

韓国側が日本哨戒機の低空飛行に対して謝罪を求めたわけですが、韓国国防部「反論映像」全テクストの記載を見ると、低空飛行そのものに対する謝罪ではなく「人道主義的な救助作戦の妨害行為」に対する謝罪を求めています。

日本側が低空飛行を否定する根拠として挙げたのは国際民間航空協約と日本の航空法ですが、「一般の民間航空機の運航と安全のための、一般飛行規則を定めるためのもの」であまり意味のないものです。

在野の論者では「韓国艦のレーダー照射、本当に海自P-1哨戒機は「脅威」だったのか? 検証する(2019.01.08 関 賢太郎(航空軍事評論家) )」などで、哨戒機の運用事例を挙げて、以下のように事実上、「脅威」ではなかったと否定しているものがあります。

 もし韓国国防部の主張どおり、相手からは豆粒大にしか見えない高度150m、距離500mにおける目視識別を、「威嚇」であり「謝罪に値する」行為だとするならば、今後、韓国海軍の哨戒機部隊は「威嚇」をともなわない洋上監視を実施するのでしょうから、全く仕事ができなくなることでしょう。もちろん実際にそうするとは考えづらく、ということはつまり、彼ら韓国海軍の哨戒機部隊は今後、韓国国防部が「謝罪に値する」と断ずるような任務に従事させられることになってしまいます。

https://trafficnews.jp/post/82564

「日本は人道主義的な救助作戦の妨害行為を謝罪し、事実の歪曲を即刻中断せよ!」

という韓国側の主張を見る限り、「一般の民間航空機の運航と安全」を妨げたとか、通常の哨戒飛行に対して抗議しているというよりは、救助活動中の妨害行為として抗議しているようです。

したがって、救助活動中の艦船に対する飛行として適切だったかどうかが、本来問われるべき内容でしょう。

災害時における救援航空機等の安全対策マニュアル

日本の災害救助中における航空機の安全対策マニュアルというのがあります。
災害時には救援航空機の妨げにならないように、報道などの航空機に指定された高度・空域の飛行の自粛を求めるものです。

目安とする空域は「半径5海里以内、対地高度2000フィート以下の空域」を例示していて、消防庁のサイトでも「報道ヘリコプターへの対応」として、同マニュアルに言及し、「報道ヘリコプターに対しても、災害時における救援航空機等の安全対策マニュアルに基づいて現場上空で十分な高度(2000ft以上)を保つこと(略)を依頼する。」とあります。

半径5海里(9.26キロメートル)、対地高度2000フィート(609.6メートル)という目安を基準にすると、広開土大王艦の150メートル上空、距離500メートルまで接近した日本哨戒機は救助活動の妨げになりうる距離に近づいたともいえます。

もっとも、それは海難救助中であることが韓国側から日本側に通知されていなければ守りようがありませんので、日本側としては「救助活動中であることを知らなかった」と回答すれば済む話ではあります。

ただ、事件後、韓国側は救助活動中であったことを何度も説明しているにも関わらず、日本側が何の問題もないと強弁するのはどうかとは思います。

今後日本国内の災害時に報道ヘリが国内法を遵守さえしていれば、「災害時における救援航空機等の安全対策マニュアル」を無視しても構わないのか、と言えば、そんなことは無いはずですからね。