木村太郎氏が陰謀論じみた取り上げ方をしているいわゆる「韓国から反日的な言動」ですが、どれもこれも難癖に過ぎないという、ホントに陰謀論というしかないものでした。
韓国から反日的な言動が次々と繰り出されてくるのは偶然の一致なのだろうか。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190115-00010000-fnnprimev-int
このところの日韓関係の問題を列挙すると
●旭日旗掲揚問題で海自艦派遣見送り(18/10/07)
●いわゆる元徴用工問題で韓国最高裁が新日鉄住金に賠償命令(18/10/30)
●慰安婦合意で設立された「和解と癒し財団」の解散を韓国政府が発表(18/11/21)
●韓国軍が竹島防衛の訓練実施(18/12.13)
●韓国軍艦が自衛隊機に対して照準レーダーを照射(18/12/20)
●元徴用工問題で新日鉄住金の資産差し押さえ命令(19/01/08)
わずか3ヶ月間に他の国なら国交に支障が出るような事件が相次いでいる。
木村氏はこれを北朝鮮による日韓離間の陰謀だと主張していますが、言うまでも荒唐無稽な陰謀論に過ぎません。
では、一つずつ見てみましょう。
「●旭日旗掲揚問題で海自艦派遣見送り(18/10/07)」
これを日韓離間を目論む北朝鮮の陰謀だとするならば、日本側としての対処は簡単です。
対処策1・防衛大臣権限で訓令*1を出して、軍艦旗ではなく国旗を掲揚して観艦式に参加する
対処策2・あくまで水面下で協議し、あくまでも日本が軍艦旗掲揚を求めて、韓国がそれを拒絶するなら、理由を公表せずに参加を見送る
対処策1は日本民族主義者には受け入れられないでしょうが、木村氏の言う“北朝鮮の陰謀”なるものは阻止できます。
対処策2はもっと簡単です。軍艦旗掲揚自粛を日本があくまで受け入れられないのなら、理由を曖昧にして参加中止すれば良かったのです。例えば中国は直前になって国内事情というだけ説明して参加中止しています。日本側も同様に明確な理由を公表せずに参加中止すれば、やはり木村氏の言う〝北朝鮮の陰謀”なるものは阻止できたでしょう。
ですが、日本側はわざわざ旭日旗掲揚を巡って日韓で軋轢が生じていることを公表した挙句に参加中止しています。これでは、日本側が率先して“北朝鮮による日韓離間の陰謀”に加担したようなものです。
「●いわゆる元徴用工問題で韓国最高裁が新日鉄住金に賠償命令(18/10/30)」
2012年5月の時点で既に同趣旨の三菱重工・不二越に対する賠償請求裁判において韓国大法院は請求を棄却した高等法院判決を破棄して差し戻しを命じています*2。これは李明博政権時代の判決です。
2018年10月の新日鉄訴訟に対する韓国大法院判決はこの2012年5月の差戻し審と同じ論理で出された判決に過ぎません。ここに木村氏の言う“北朝鮮の陰謀”なるものを見出すことはまず不可能でしょう。
それでもなお、これが日韓離間を目論む北朝鮮の陰謀だとしても、これも日本側としての対処は簡単です。
対処策1・韓国大法院判決が出る前に和解に持ち込む
2012年5月以降、大法院判決が出るまで6年以上あったわけですが、その間に和解してしまえば大法院判決は出ようがありませんでした。しかし、一旦は和解を検討した被告企業に圧力をかけて和解を拒絶させたのは安倍政権です。2018年10月の大法院判決を北朝鮮による陰謀だとするならば、ここでもやはり安倍政権が陰謀に加担したとしか言いようがなくなります。
「●慰安婦合意で設立された「和解と癒し財団」の解散を韓国政府が発表(18/11/21)」
これも2018年1月時点で韓国女性家族相が解散の意向を示していましたから*3、「このところ」の問題とするには牽強付会な気がしますが。
そもそも2017年の時点で財団は既に理事が退任して活動停止していました。理事が退任に追い込まれたのは、“10億円は少女像撤去とバーターである”という日本側のプロパガンダによって韓国国内での反発が高まったからです。財団の理事は必死にそれを否定しましたが、日本側から次々とその手の発言が出てくる有様では理事の説明など信じてもらえる状況ではありませんでした。
したがって、ここにも木村氏の言う“北朝鮮の陰謀”なるものを見出すことは困難です。
それでも仮に、これが“北朝鮮の陰謀”であったとするなら、やはり日本側の対処は簡単なものでした。
対処策1・2015年日韓政府間合意以降、日本側から慰安婦問題に否認する言説や少女像撤去を求める主張を控える
対処策2・財団解散に取り立てて反応しない
まあ、基本的に日本側が元慰安婦らを戦時性暴力被害者として適切に遇していれば、これらの問題の大半は起こりようがなかったわけですが、日本側にはそれができなかっただけで、それって北朝鮮の責任なんかじゃないでしょうにね。
「●韓国軍が竹島防衛の訓練実施(18/12.13)」
韓国軍による独島(竹島)上陸訓練は毎年行われていて、遅くとも2012年9月から実施されています*4。
やはりこれも木村氏の言う“北朝鮮の陰謀”なるものを見出すことは困難です。
それでも仮に、これが“北朝鮮の陰謀”であったとするなら、やはり日本側の対処は簡単なものです。
対処策1・無視する
対処策2・形式的な抗議を伝える
一般的には対処策2でしょうし、実際この程度のことしかやってません。韓国側も形式的には反発してみせるもののそれ以上の対応を見せるわけでもありません。
こんなことまで北朝鮮の陰謀に見えるのならどうかしているといわざるを得ないレベルです。
ちなみに今回の2018年12月13~14日の海兵隊による上陸訓練は実施していません*5ので、例年に比べれば、日本側に配慮しているという見方も出来なくは無いんですよね。
「●韓国軍艦が自衛隊機に対して照準レーダーを照射(18/12/20)」
現時点で事実関係は不明ですが、日本側の主張どおり韓国駆逐艦が日本哨戒機に対してSTIR-180を照射していたと仮定します。
これが木村氏の言う“北朝鮮の陰謀”なるものだとすれば、北朝鮮は韓国軍内部の艦長クラスを意のままに動かせるほどに浸透しているということになりますが、その時点で荒唐無稽です。
なぜなら、艦長クラスの高級将校を工作員にしたにもかかわらず、STIR-180の照射という程度の工作でその高級将校の工作員を失う可能性が高いのですから。もっと“ここぞ”という時に使える工作員をこんなことに使いますかね?
例えば、日本側が今回のように過剰に反応せず、日韓防衛当局者同士で非公開で抗議など行っていたら、日韓離間という目的は達成されること無く韓国軍内の重要なポジションにいる北朝鮮工作員をただ失うだけでした。“北朝鮮の工作”の成否は、日本側が過剰に反応するか否かにかかっていたことになります。
それを踏まえると、仮にこれが“北朝鮮の陰謀”であったとしても日本側の対処は簡単なものです。
対処策1・まず防衛当局者同士、非公開で協議し再発防止策などの合意後に公表する
対処策2・非公開のまま、日本側からも交戦に至らない範囲でFCR照射などの対抗措置をとる
一般的に行われるのは対処策1でしょうね。
今回の安倍政権の対応は、防衛当局者同士の協議すらろくに行わずに翌日に公表して大騒ぎをはじめています。木村氏の言うとおり、STIR-180照射が“北朝鮮の陰謀”であったとしたら、その“陰謀”を完成させたのは、安倍政権による無思慮な反応だったといえるでしょう。
「●元徴用工問題で新日鉄住金の資産差し押さえ命令(19/01/08)」
韓国大法院が賠償を命じる判決を下した時点で、原告が差押を申し立てたら下級裁判所がそれを却下するなんてまず考えられないわけで、そんなことに“北朝鮮の陰謀”なるものを見出すのはどうかしているとしか言いようがありません。
仮にこれが“北朝鮮の陰謀”であったとしても日本側の対処はさほど難しくありません。
対処策1・差押命令が出る前に日韓請求権協定に従った協議を韓国政府に要求する
対処策2・差押命令が出る後であっても日韓請求権協定に従った協議を韓国政府に要求する
現状、日本政府が取っているのは対処策2ですが、最善は対処策1です。日韓両政府間で賠償の方法について協議が始まれば、それを理由として差押の一時停止を申し立てることができるからです。まあ、対処策2でも出来なくは無いでしょうが、世論の影響を考えるなら判決前に対応した方がベターですね。
「エスカレートしたのが6月の米朝首脳会談直後」?
木村氏はこんなことを言っています。
韓国内の反日言動がエスカレートしたのが6月の米朝首脳会談直後からであることを見ても、それが南北が急接近していった朝鮮半島の情勢と同期しているように思える。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190115-00010000-fnnprimev-int
上で書いてきたとおり、徴用工訴訟については2012年5月の大法院差し戻しの時点で賠償命令を出すだけの論理が構築されていますし、慰安婦関連の財団解散は2018年1月の時点でその意向が表明されていますし、韓国軍による独島(竹島)での訓練は2012年には既に行われていますから、木村氏の時系列的な認識が狂っているとしか言いようがありませんねぇ。
まとめ
木村氏が挙げている韓国の「反日的な言動」とやらですが、これらを北朝鮮による日韓離間工作、「北朝鮮の組織的な謀略」とみなすのは常軌を逸しているとしか言いようがありません。
そもそも、いずれの「反日的な言動」とやらも日本側が冷静に対処していたなら日韓離間になどつながりようのない程度のものばかりです。
レーダー照射を危険だと主張する論者はたくさんいますが、沖縄の小学校に窓を落とした米軍ヘリの危険性はどうでしょうか?
度重なった米軍機の事故は、米軍による反日工作ですか?
米軍基地周辺には何も無かったと虚偽を述べた米軍担当者は日米離間を狙った北朝鮮のスパイですか?
米国に対しては北朝鮮の工作だとは思えず、韓国に対してはそう思えるのだとしたら、その違いは何でしょうかね。
一つには、韓国に対する蔑視や差別感情が底流としてあるのでしょう。
そしてもう一つは、日本社会が自らの歴史に向き合いたくないがために、“彼らの主張は彼ら自身の反日によるものだ。だから日本はそれに向き合う必要はない”と目をそらすことを正当化するためでしょうね。
日本が自らの過去に向き合わないことを正当化するためには、日本の過去を突きつけてくる相手が反日でなければ困るわけです。
まあ同じようなことはいろんな場面で見られますけどね。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190115-00010000-fnnprimev-int韓国の反日攻勢の背後に北朝鮮? 疑われる北の「第五列」の活動
1/15(火) 11:40配信 FNN PRIME
偶然の一致なのか
韓国から反日的な言動が次々と繰り出されてくるのは偶然の一致なのだろうか。
このところの日韓関係の問題を列挙すると
●旭日旗掲揚問題で海自艦派遣見送り(18/10/07)
●いわゆる元徴用工問題で韓国最高裁が新日鉄住金に賠償命令(18/10/30)
●慰安婦合意で設立された「和解と癒し財団」の解散を韓国政府が発表(18/11/21)
●韓国軍が竹島防衛の訓練実施(18/12.13)
●韓国軍艦が自衛隊機に対して照準レーダーを照射(18/12/20)
●元徴用工問題で新日鉄住金の資産差し押さえ命令(19/01/08)
わずか3ヶ月間に他の国なら国交に支障が出るような事件が相次いでいる。
日韓離反の意図があるとすれば
いわゆる歴史問題で対日強硬派とも言われる文在寅大統領の時代になって、反日を抑制していたタガが外れたのかもしれないが、それにしてもたたみかけるような仕打ちに日本と韓国の離反をはかる意図的なものさえ感じるのだ。
仮に、その背後に日韓離反の意図があるとすれば、誰が何のために策動しているのだろうか?
日韓関係の悪化で得をするのは北朝鮮
その疑問を解くにはそれで得をするのは誰かを探れば良いわけだが、まず韓国は経済的にも安全保障上も日本との関係が悪化して得することはない。周辺国を見ても中国やロシアが今日韓関係が悪化することで得をすることは考えられない。となれば残るは北朝鮮しかない。
北朝鮮は今、対米交渉を通じて国際的な孤立状態を脱し経済の立て直しを目指しているが、その先に見据えているのは「統一朝鮮」だろう。
そうした朝鮮半島をめぐるかけひきの中で、日本の安倍首相は北朝鮮への圧力を維持し拉致、核、ミサイル問題の包括的な解決を主張して、北朝鮮に「前のめり」で急接近する韓国の文在寅大統領にブレーキをかけてきている。またトランプ米大統領に近い安倍首相は米、日、韓三國による北朝鮮の包囲網維持を米側に働きかける立場にあり、北朝鮮にとっては邪魔な存在であるはずだ。北朝鮮の組織的な謀略か
その日本を排除するためには反日キャンペーンを煽り立て、日本側が嫌韓ムードの高まりで朝鮮半島問題から手を引くよう謀ることを私なら考える。
韓国内の反日言動がエスカレートしたのが6月の米朝首脳会談直後からであることを見ても、それが南北が急接近していった朝鮮半島の情勢と同期しているように思える。
今日本に対して厳しい措置や態度をとっている韓国の司法や行政の担当者らは、北朝鮮から直接指示を受けて行動したわけではないのかもしれない。しかし、韓国内の北朝鮮の第五列(敵方に内通する分子)が本国の指令で一斉に行動を起こし対日関係に影響力のある人物や組織に働きかけたことはあり得るだろう。
これはあくまで推測に過ぎないのだが、韓国の反日の暴走は偶発的なものではなく、北朝鮮の組織的な謀略であることを疑ってかかるべきだろう。
*1:http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/10/01/060000
*2:http://jairo.nii.ac.jp/0181/00003371/en
*3:http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/01/26/070000
*4:https://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=157562、韓国が竹島で軍事訓練、海兵隊による上陸訓練も、外国船舶の「違法接近」を想定―中国紙 - ライブドアニュース
*5:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181214-00000053-yonh-kr