吉田証言と朝日が日韓関係を悪化させたと主張する連中は慰安婦問題に関する韓国政府の見解を見ていない

例えば産経新聞に所属する活動家の阿比留とかですね。今現在朝日新聞を誹謗中傷している連中のほとんども同じく、韓国政府が慰安婦問題をどう認識しどう主張しているかを知らないと思われます。
うちの記事にはこういうバカがブクマをつけています。

nisatta 「朝鮮新話」と「朝鮮人強制連行の記録」「挺身隊」と「慰安婦」の混同/ それで、韓国が今主張してる20万人の婦女子が銃剣で脅されて強制連行って話は正しいのか? 2014/08/29

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/scopedog/20140828/1409242286

このバカには「韓国が今主張してる20万人の婦女子が銃剣で脅されて強制連行って話」のソースを出してほしいものですけど、無理でしょうね。

さて、韓国政府女性家族部はHERMUSEUMという慰安婦問題サイトを公開しています。これが慰安婦問題に関する現在の韓国政府の公式見解と言っていいでしょう。
日本軍慰安婦に関する説明は以下のように記載されており、動員方法についても言及されています。

日本軍慰安婦とは

定義

日本が満州事変(1931年9月18日)を起こした時期から太平洋戦争で敗戦した1945年まで戦争を効率よく遂行するという名目で設置した「慰安所」に強制的に動員され、日本軍によって性的奴隷としての生活を強いられた女性たちのことである。慰安婦は、文献と証言の中に酌婦、特殊婦女、醜業部、芸妓、娼妓、女給などの名称として登場し、慰安所は、陸軍娯楽所、倶楽部、軍人会館、朝鮮料理屋などの名称で呼ばれていた。

日本軍「慰安所」の形成と動員規模

日本は満州事変を起こして以来、侵略戦線を拡大していった。日本軍は、(1)現地の女性に対する強姦の防止、(2)売春による性病の予防、(3)兵士を性的に慰めるなどといった名目で「慰安所」を設置した。1932年1月、中国の上海に初期的形態の日本軍「慰安所」が設置されたという記録がある。1937年の日中戦争を機に、日本軍「慰安所」は急増し、日本軍の占領地の拡大に伴い、慰安婦を動員する地域も拡大した。
日中戦争以来、慰安所の設置、管理、慰安婦の募集、輸送にいたるすべての過程は、軍が主導的な役割を果たした。内務省や外務省など日本の政府機関と朝鮮総督府台湾総督府も積極的な協力体制を整えた。
慰安婦に動員された女性の総数については、未だ正確な情報は分からない。強制的に動員して慰安婦にさせられた女性たちの総数を示す体系的な資料が見つかっていないためである。一部の学者たちは、日本軍の「兵士何人あたりに慰安婦を何人おくか」という計画が示された資料や、複数の証言資料に基づき元日本軍慰安婦被害者の総数を推測している。しかし、最低3万人説から最大40万人説と、研究者によってバラツキが大きい。
日本軍は、慰安所設置の初期段階で主に日本と日本の植民地だった朝鮮、台湾から女性を動員したが、戦争の長期化と戦線の拡大に伴って、日本の占領地だった中国、フィリピン、インドネシアベトナムミャンマーの女性たちだけでなく、インドネシアに居住していたオランダ人女性も強制的に動員され日本軍慰安婦にされた。慰安婦問題を長期間に渡って研究してきた研究者・吉見義明氏によると、日本軍慰安婦の数は少なくとも8万人から20万人と推定され、その中に占める朝鮮人女性の割合は半分を超えるという調査結果を発表した。

動員形態と輸送

朝鮮人女性は、就職詐欺、脅迫・暴力、人身売買・誘拐などの方法によって日本軍慰安婦として動員された。「工場に就職させてやる」、「金をたくさん稼げる」などと騙して女性たちを日本軍慰安婦に駆り出したのである。
慰安婦を募集する新聞広告を載せることもあったが、仕事の内容を明らかに告知することはなかった。また、当時の新聞購読の状況や女性の識字率などを考慮すると、女性に直接募集広告が伝わった事例はほとんどなかったと見られる。
日本軍当局が慰安所を経営する業者を選定し、日本軍と警察も動員の過程で協力した。業者は、斡旋者を利用するか、自ら直接女性たちに近づく手口を使った。就職や金儲けを口実に女性たちを集めたり、暴力を行使して動員するだけでなく、拉致することさえあった。総動員体制と戦争を遂行するために「慰安婦」が必要であるとする日本軍の要求は、そうした物理的な暴力を可能にした。
太平洋戦争(1941年)勃発前は、「渡航証明書」の発行を受け、国外の慰安所へ移動した。その手続きについては、斡旋者が公権力の協力を得て一手に引き受けており、その過程で戸籍が偽造されることもあった。太平洋戦争が勃発してからは、「軍の証明書」を利用して国外の慰安所へ移動した。この証明書は、斡旋者、または引率者が所持し、日本軍は、移動に必要な様々な便宜を提供した。

出所:対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会、日本軍慰安婦口述記録集『聞こえますか。十二歳の少女の物語』の中から抜粋

http://www.hermuseum.go.kr/jpn/sub01/sub010101.asp

おや?吉田清治証言を根拠としているような部分はありませんね。「暴力を行使して動員するだけでなく、拉致することさえあった。」という記述はありますが、前文からのつながりを考えると、その主語は「業者」と解するのが普通ですから、吉田証言ではなく元慰安婦の証言を根拠にしていると言っていいでしょう。
別の部分を見てみましょう。

Q.日本軍「慰安婦」はどのように、どこへ連れて行かれましたか。

A.日本軍「慰安婦」は、シンガポールビルマ、台湾、インドネシア、中国、日本、太平洋ラバウル島、パラオなど日本軍がいるところならどこにでも連れて行かされました。しかも、朝鮮の釜山と大邱にも慰安所がありました。当時、日本の植民地にされた朝鮮の人々は非常に苦しい生活を強いられていました。そのため、「工場に就職を斡旋してお金を稼ぐようにしてあげる」、「看護婦にしてあげる」、「勉強ができるようにしてあげる」などとだまして動員することもありました。後になると、朝鮮を支配していた朝鮮総督府が日本軍からの要請を受け、警察と憲兵などを動員して暴力的な方法で女性を強制的に連行することもありました。特に、世事に疎い農村部の人々が多く徴集されました。ある女性は、友達と写真館で写真を撮って出てくる時に警察に連行されたり、精米所の秤で体重を量られ、大人並みの体重だからということでトラックに乗せられ、日本軍「慰安婦」として駆り出された人もいました。
このように日本の植民地だった朝鮮の女性を日本軍「慰安婦」として動員した方法は、非常に恐ろしいものでした。だまされたり、強制連行された女性たちは、慰安所に配属されるまで、日本軍の徹底的な監視を受けました。

http://www.hermuseum.go.kr/jpn/sub01/sub0104.asp

ここでは暴力的な強制連行の記述が出てきますが、やはり吉田証言の内容とは異なり、「友達と写真館で写真を撮って出てくる時に警察に連行」とか「精米所の秤で体重を量られ、大人並みの体重だからということでトラックに乗せられ」など元慰安婦の証言に拠っていることがわかります。
朝日新聞が述べているように、「韓国政府が慰安婦問題で最も重視しているのは、元慰安婦自身による多くの証言」であり、吉田証言ではないわけです。

(朝日記事)
 80年代半ばから90年代前半にかけて、韓国外交当局で日韓関係を担当した元外交官は「韓国政府が慰安婦問題の強制性の最大の根拠としてきたのは元慰安婦の生の証言であり、それは今も変わっていない。吉田氏の証言が問題の本質ではありえない」と話す。

http://www.asahi.com/articles/ASG8W4CPWG8WUTIL01N.html

挺身隊と慰安婦の件

「挺身隊」と「慰安婦」の混同に関しては以下のように述べられています。

名称および性格付け

1990年代初めに、日本軍慰安婦問題が本格的に浮上した時は「挺身隊」という用語が広く使用された。挺身隊は、「日本国(天皇)のため率先して身を捧げる部隊」という意味で、日帝日本帝国主義)が労働力動員のために作ったものである。挺身隊(労務動員)と慰安婦(性動員)は、基本的に性格が異なっていたが、女子勤労挺身隊に動員された女性が慰安婦として連行された事例があったので意味が糊塗され、誤って使用されていた。その後の研究を通じて、当時使用されていた用語に近い「軍慰安婦」という用語が定着した。
日本では、1990年代に「従軍慰安婦」という用語が使用されていた。しかし、「従軍」という言葉には、「従軍記者」、「従軍看護師」のように自主的に軍に従ったという意味が含まれている。強制的に慰安婦を動員した日本の歴史的責任を隠蔽するという点で、使い方に注意すべき用語である。
国際社会で日本軍慰安婦の問題が初めて提起された時は慰安婦という言葉を直訳し、「 comfort women」という用語を使用したが、現在は、国連など国際社会で「性奴隷(military sex slavery)」と「軍隊性奴隷制度(military sexual slavery)」という用語が主に使われている。1996年国連人権委員会に提出されたラディカ・クマラスワミ(Radhika Coomaraswamy)による報告書では、明確に「戦時下の軍隊性奴隷制(military sexual slavery in wartime)」と明記された。
国際社会で「軍隊性奴隷制」という用語が採用されたのは、日本軍慰安婦問題が私的な領域で発生する契約によって行われた売春の性格や、国のための国民の自主的な犠牲として説明できないと広く認識されていたためである。つまり、日本軍慰安婦制度は国家が女性を強圧的に動員して集団的な性暴行を加えたものであり、被害女性たちの生活環境は、「奴隷」のような状態だったということである。慰安婦という言葉は、極めて加害者中心の用語であり、暴力性と強制性を隠す否定的な効果がある。日本軍慰安婦の募集動機、募集過程、暴力性を考慮すると、日本軍「性奴隷」という言葉の方が適している。
現在、韓国社会では、日本軍「性奴隷」という用語よりも日本軍慰安婦という用語を広く使用している。「慰安婦」という用語は、問題の本質を明らかにする上で適してはいないが、その一方で日本が慰安婦という言葉を作ってまで制度化した当時の特殊な雰囲気を伝えてくれるという点と、生存者たちが「性奴隷」と呼ばれることに対し、精神的に傷つけられかねないためである。被害者への支援のため韓国政府が制定した法律でも「日本軍慰安婦」という用語を使用している。研究者の中には、日本軍が使用した「慰安婦」という用語に同意しないという意味で引用符を付けて「日本軍『慰安婦』」と書くこともある。

出所:対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会、日本軍慰安婦口述記録集『聞こえますか。十二歳の少女の物語』の中から抜粋

http://www.hermuseum.go.kr/jpn/sub01/sub010104.asp

「挺身隊(労務動員)と慰安婦(性動員)は、基本的に性格が異なっていたが、女子勤労挺身隊に動員された女性が慰安婦として連行された事例があったので意味が糊塗され、誤って使用されていた」と書かれている通り、朝日新聞が意図的に混同したわけではありません。

日本の下手な、あるいは下衆な新聞より、韓国政府のサイトの方がよほど詳細かつ正確に書いています。朝日を叩いて喜んでいる連中には誠実さを求めても無駄なのはわかってますが、韓国政府がどう主張しているかくらい、しかも日本語で書かれているサイトくらい見たらどうですかね*1

*1:日本語版が出来たのは割と最近で、最初に見た時は韓国語と英語のみでしたが。