「■子を自分だけのものにできました日本最高]」に関する件

(2017-03-10)■子を自分だけのものにできました日本最高」の件。

この増田が実際に連れ去り当事者かどうかは判断できませんが、違うような気もするのは確かです。
ただ、その根拠は、
・明らかに悪意を持った自身の行動について当事者がこのような犯罪自慢まがいの告白をする点
くらいです。
要するに、悪行を為してると自覚しながら悪行を為すことに抵抗感が薄い点に違和感を覚えたに過ぎません。

多くの場合、自身の悪行に対して理由をつけて正当化すると思いますので、増田のような記事では「夫」側の問題を書き連ねたり、弁護士など周りに流されたことを強調したりしそうな気がします。とはいえ、あまりにもうまくいった犯行を自慢したいという欲求だってありえますから、事実、増田が連れ去り当事者である可能性も否定はできません。

で、この増田記事で重要なのは、現在の制度上、これが実際に実行可能だという点です。

というより必勝法ですね。
別にこの手に限定されるわけではなく、いろんなパターンがありますけど、共通するのは(1)子供の身柄を抑えている方が圧倒的に有利、(2)子連れ女性からのDV被害申立は周囲の同情を得やすい、という点です。(1)が一般的に「現状優先」と呼ばれ、(2)は「母性優先」に相当します。

この2つは離婚関連の紛争における最強カードです。このカードが破られる場合というのは、連れ去り親による誰の目にも明らかな身体的暴力や餓死寸前に至るまでのネグレクトが明らかになった場合くらいです。連れ去った側が暴力や深刻なネグレクトの加害者でなければ破ることができませんし、仮に加害者であったとしても明らかにならなければ、やはり破ることができません。それ以外は事故や病気・災害によって明らかに養育できないレベルのダメージを負った時くらいですかね。一言で言えば、連れ去り側に誰の目にも明らかな問題が無ければ、連れ去られた側の親が何をやっても、このカードに勝つことはできないわけです。

なお「現状優先」カードと「母性優先」カードでは「現状優先」カードの方が強いので、父親が子供を連れ去ってしまうと母親はいかに母性を強調しても勝てません*1
松戸事件の東京高裁判決は「現状優先」カードの最強さを改めて見せ付ける判決でした。

ただし、「(2017-03-10)■子を自分だけのものにできました日本最高」について、いくつかの点では、そこは運が良かっただけでは?と思えるところもあります。


というわけで見ていきましょう。

実家のサポートでいろいろ生活が成り立つようになったので、女性に寄り添い女性の言い分を通してくれることで有名な離婚弁護士さんに相談。
その弁護士はすぐに、事細かく作戦を教えてくれた。

まずやるのは離婚調停ではなく、敢えて「婚姻費用分担調停」。
こんな内容を書く。

1. 一方的に自分の意見を通そうとする我が儘で暴力的な夫から激しい言葉のDVを受けた
2. 子に対する具体的なDVはなかったが今後そのおそれは十分にあり、私に暴言を吐く姿を子が見てトラウマになっていること自体も含めて。子との面会は困難
3. 離婚は今のところ考えていない。婚姻費用の分担を求める

http://anond.hatelabo.jp/20170310105854

これは子連れ離婚をする側からすれば、まず定石でしょうね。婚姻費用については、これを読んでみてなるほど、と思いましたね。
「1」は書かれてる弁護士の説明でほぼあってます。
DVが無かったことの証明は状況証拠の積み上げで出来なくもありませんが、家裁はDV・暴力行為の事実判定をするところではありませんから、よほど真面目な裁判官で無い限りまともに調査しません。運悪く真面目な裁判官にあたってDVの主張が退けられたとしても、現実問題として別居していれば婚姻費用分担を裁判所が認めないことはまず考えられませんので*2、ほぼ思惑通り進むはずです。

「2」は、ほぼ確実に調査官調査か試行面会になりますが、子供に片親疎外を仕込むことに躊躇しない親であればさほど難しくはありません。もちろん、子供自身の性格や成長度合いにもよるので、確実とは言えませんし、これも運悪く(?)真面目な調査官にあたると、父親に対する子供の態度は母親による操作だとばれる可能性はあります。ただし、ばれても問題はなく、子供が取り上げられて父親側に返されるような仕組みが日本にはありません。
試行面会の場や調査官調査の際に、子供が父親に対する愛着を示した場合、終わった後で子供に“無視”や“脅迫(泣いて見せるなど)”といった恫喝をすれば、片親疎外の症状を進行させることが出来ます。日本では片親疎外を理由に子供を取り上げられることはありませんので、時間は十分にあります。

3.は実入りを少しでも大きくするため。
離婚をしてしまうと受け取れるのは養育費だけになるが、婚姻をかたちの上で継続しておけば相互扶養義務に基づく婚姻費用の分担を請求できる。
婚姻費用には養育費部分も含まれているので、養育費単独よりも金額が大きい。

http://anond.hatelabo.jp/20170310105854

この点はなるほどなぁと思いました。

「証拠対証拠になると不利なので、こちらからは証拠を出さない」
という弁護士の作戦もピタリと当たった。

http://anond.hatelabo.jp/20170310105854

これもうまいですね。
子供の身柄を抑えている限りこちらから何も働きかける必要はなく、相手方が示してきた条件にケチをつけたりさらなる譲歩を強いたりするだけでいいので簡単です。
逆にこちらから証拠を出してしまうと、証拠間の矛盾点を記録に残される恐れがあり上級審になった時に不利になりかねませんし、

こんな指示を弁護士が出すのか?的なブコメもありましたが、そりゃもちろん書面やメールなど記録に残る形での指示はしないと思います。ですが、口頭ではありえますし、直接的には言わずとも間接的に匂わせるような言い回しは普通にあると思います。
また、自分の意見が拒否された経験がひとつでもあれば、それをもって「1」だと主張することは虚偽とは言えません。口論でもあろうものなら「激しい言葉のDV」確定です。
「子に対する具体的なDVはなかったが今後そのおそれは十分にあり」なんてのも、反証する方が難しいですよね。DVしてないことの証明ではなく、DVする可能性が無いことの証明ですから。

家裁は事実を争わない

夫から見ると私の主張は嘘や矛盾ばかり。
夫がどんなに苦労して物的証拠を出しても、裁判官や調停委員はそれを採用せず、私の口頭の主張ばかり採用する。
子には何年も会わせてもらえない。・・・

http://anond.hatelabo.jp/20170310105854

これもまあ、だいたいその通りでしょう。
DVを受けた側の主張はいかに矛盾していても、DVを受けた動揺のためと好意的に解釈され嘘・矛盾という判断がされにくい上、婚姻費用分担調停ではそれが事実かどうかは大した問題ではないからです。
もしこれが、DV被害を受けたことに対する損害賠償の裁判や刑事裁判なら、DV被害が事実かどうかを厳密に検証するでしょうが、婚姻費用分担調停では家庭裁判所がそれを検証する必要はありません。
この調停で決めるべきは、現に別居している、収入の無い配偶者に対して婚姻費用を分担する条件に過ぎません*3。極端な話、別居の原因が何かなんてどうでもいいんですよね。

本来生活を一にしている夫婦と子供には、主たる稼ぎ手である側から応分の生活費を受け取る権利があるという話ですから。
別居するか同居するかは当事者が勝手に決めることであって、裁判所が決めることではありませんので、家裁としてはそこに深入りしたくないというわけです。

別居する理由がないと夫側がいくら主張しても、むしろ強く主張すればするほど、葛藤が強いという判断になり、別居が正当化されてしまいます。

夫が怒り始めるのも当然。
でも、
「すぐそうやって怒り始める人で大変だったんです」
と言えば1.や2.の間接的な証明にもなる。
しかも、
「夫婦間で葛藤がある」
という裁判所独特の言い回しで、面会させない理由にしてくれる。
いい気味w

http://anond.hatelabo.jp/20170310105854

それがこの部分。

家裁としては面倒くさいので、しばらく時間をおいたらどうか、的な提案でとりあえず婚姻費用分担だけは確定合意させようとしてきます。
ここが人質司法的なところですが、現に別居している以上、婚姻費用分担に合意しないことは生活費を渡さないことに等しく、それ自体が離婚原因として正当化されかねないんですよね。民法770条1項2(配偶者から悪意で遺棄されたとき。)に該当しかねないわけです。
ところがこれに合意してしまうと、夫は別居を容認したことにもなってしまいます。これがその後、夫が子どもに会うことを大きく不利にさせることになります。

これを回避するためには、合意しないまま婚姻費用に相当する額を払いつつ、面会交流の条件も含めた合意に持っていくしかありません。もちろん妻側が拒絶し続ければ困難なのは確かですが。

裁判所って理屈の世界かと思ってたけど、ぜんぜん違った。
少なくとも離婚の家庭裁判所は、理屈の遙か以前に、
女>>>>>>>>>>>男
とあらかじめ決まってる。

http://anond.hatelabo.jp/20170310105854

この点は違いますね。
離婚関連の事件は女性有利だという点についてはある程度正しいですが、子の親権に関わる場合は「母性優先」よりも「現状優先」の原理の方が強いので、父親が先に連れ去ってしまえば、母親側にはなす術がありません。女性有利だといえる部分は、母親側は「現状優先」の原理の他に「母性優先」の原理も使えるという点です。父親側は「現状優先」の原理しか使えないため、その点では不利と言えます。

また「裁判所って理屈の世界かと思ってたけど、ぜんぜん違った」というのも、そう見えなくはありませんが、“裁判所特有”の理屈の世界であることに変わりありません。
“裁判所特有”というのは、上記の婚姻費用分担調停の例で言えば、DVや子の連れ去りが争点のように見えて、裁判所的な争点は、生活費の分担の条件だと言う点にあります。裁判所的には最優先すべき事項は生活費分担の条件なので、DVや子の連れ去りなど別居に至った原因などは争点にあらずと無視することが出来るわけです。
当事者からすれば、争点はそこじゃないよ、と言いたいところですが、裁判所の理屈では、婚姻費用分担調停の争点は生活費分担の条件でしかありません。そして、生活費分担の条件が争点である以上、収入のない配偶者や子どもに有利になるような配慮が働くわけです。
そこが見かけ上、「女>>>>>>>>>>>男 とあらかじめ決まってる。」ように見えるメカニズムです。

この増田にアドバイスした離婚弁護士は、裁判所の理屈を十分把握した上で、裁判所の理屈上で有利な“弱者”となるような提案をしているわけですね。

顔のないATMと化す夫

夫はこれからどう出てくるのかな。
「会わせろ」と連絡してくるのを警察に相談したらストーカー扱いしてくれたので、今はそれもない。
婚姻費用は延滞もなく毎月振り込んでくる。
当たり前だよね。
少しでも振込を怠ったら私から会社に連絡がいき、給料を差し押さえられるんだから。
弁護士にきいたら、次の裁判ものらりくらりやってれば絶対に勝てるんだって。
親権も「100%大丈夫」と太鼓判を押してくれた。
ただ、一生ずっと面会ゼロにするためにはひと工夫必要らしいので、今それをやってるところ。
その中身は内緒だけどね。
死ねとか言ってた人がいたけど、そんなことない。
この国は最高。

http://anond.hatelabo.jp/20170310105854

妻側に収入ができたのであれば減額請求も制度上は出来ますが、現実的には困難でしょうね。
こんな感じの侮辱を受けること確実ですし。

子供達の心と未来を守る会‏ @kodomokmm
減額調停とかダサイので、年収上げる努力して下さい。

殿様クラスになると、浮気不倫とは言われないかも。
わたしは、殿にはそこらへんは意見しない。
正妻にもお妾さんにもその子供達みーんな城に住まわせていい暮らしさせてれば多分誰も文句言わないし喧嘩にならない。
年収up作戦イイよ!
10:52 - 2017年3月17日

https://twitter.com/kodomokmm/status/842795909045874689

ちなみにこの人の言う「殿様クラス」というのは年収6000万とか億越えとかのことらしいです。

子供達の心と未来を守る会‏ @kodomokmm
金の話をすると誤解釈してキーーーー!!する人は、そこに劣等感でもあるんだろうか・・・
殿ならいいよ。は、殿じゃないなら不倫すんなって話ですが。
何をそんなにみんなで憤っているのか・・・

ちなみに年収5000万はまだ離婚の可能性あり。
厳密に言えば6000万以上。安全圏は億越え。

https://twitter.com/kodomokmm/status/843514096511197185

つまり、年収6000万とか億越えならば、不倫しようが何しようが構わない。
それ以下なら、子どもを引き離されても文句言うな、と言うことらしいです。

こんな人たちに育てられる子どもの方が不憫でなりません。

「■子を自分だけのものにできました日本最高]」の増田がまだ甘い件

最後に増田が言及していない点を追加しときます。

離婚と子どもとの引き離しを食らった夫は精神的に大きなダメージを受けるわけですが、その結果、自殺したり、まともに就業できなくなったりする人もいます。そのまま健康を損なって亡くなる人も少なくないと思われます。
増田のように夫を追い詰めている状況では、夫の方は精神的に崩壊寸前でしょう。
もちろん増田側はそれを狙っているわけですから、良心の呵責を感じることもないと思います。
そしてそんな増田にはさらにボーナスが与えられます。

自殺であれ病死であれ、とにかく夫が死ねば、夫が持っている資産を増田が総取りできるというボーナスです。

夫が遺書などで明確に子ども以外の遺産相続人を指定していない限り、死んだ夫の全ての財産が妻である増田と子どもに相続されます。子どもが相続した財産を管理するのは、その子の親権者たる増田ですから事実上、増田は合法的に夫の全財産を奪うことが出来るわけです。
夫に両親がいても遺言書などで明記されていない限り関係ありません。

つまり、増田にとっては夫の精神的健康を損なうように振る舞い、自殺や病死に追い込むメリットが存在するわけです。
先に夫の両親が死ねば、その財産も含めて奪えますし、先に夫が死んでも夫の両親には一銭も払わず、夫の財産を全て総取りできますから増田にとっては笑いが止まらないボーナスです。
その意味では、増田が離婚を成立させないことに大きな意味があります。離婚してしまうと夫が再婚し、再婚家庭で子を作る可能性があるからです。その場合は増田の取り分が減ってしまいますから、夫に再婚させないためにも離婚を成立させないことが重要です。

夫は子どもを失い、婚姻費用と言う形での搾取された債務奴隷と化し、DV夫というレッテルを張られ、最後は財産を全て増田に吸い取られるという状況に陥ります。
夫の両親は、孫に会えなくなった挙句、息子に先立たれ、息子の財産は全て奪われ、老後の楽しみを全て失います。

増田だけが総取りする形のモノポリー状態が最終形です。

仮に夫がその危険性に気づいて遺言書を書いたとしても、遺留分は確定していますので増田にとってはボーナスの取り分が減るくらいの痛手しかありません。それにそのような遺言書を書いていたとしても、子どもに対して“父親はお前を愛していなかったから遺産を減らすような遺言書を書いたのだ”と説明すれば、子どもの気持ちが死んだ父親に向くことも無くなりますので大した痛手でもありませんね。

離婚事件において、子どもの身柄を抑えることは、指輪物語の一つの指輪を手に入れることと同じくらいの意味を持つと言えます。

*1:父親側に養育できない明らかな事情がない限り

*2:連れ去り側に十分な収入があったり、夫が失業中であったりとかなら別でしょうが。

*3:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_03/