親権争いでの「連れ去った者勝ち」という主張はデマではないですよ

木村草太氏のツイート。


と木村氏は言っていますけどねぇ。

日弁連「違法に連れ去った者が親権者の決定において有利な立場に立つ」(2009年)

2009年3月に出版された「日弁連六十年」の記載。

2 子の奪取
 離婚紛争に伴い、親の一方が別居にあたって子を一方的に連れ去ったり、別居している非監護親が子を連れ去ったりするなどの事態がしばしば生ずる。本来、子の監護をめぐる紛争は協議によって解決するか、協議が整わないときは家庭裁判所の手続によって解決すべきものであり、そのような手続を経ないで子を一方的に連れ去るのは違法である。しかし、わが国では、このような違法な連れ去りがあったとしても、現状を重視する実務のもとで、違法行為がまったく問題とされないどころか、違法に連れ去った者が親権者の決定において有利な立場に立つのが一般である。

枝野幸男議員「離婚の際の、親権をめぐる争いにおいて、調停や裁判の実務では現状追認の傾向が強く、現に子を監護する親が親権者となりやすいと認識されている」(2008年)

枝野幸男議員(当時民主党)が2008年5月8日に提出した国会質疑 質問357号。

1 現行の民法第八一九条は、離婚の場合、父母のどちらか一方のみを親権者とする単独親権を採用している。このことが、親権をめぐる争いによって離婚係争中の夫婦の対立を一層激化させ、あるいは、離婚後の親子の交流を難しくさせている側面があるとの指摘がある。こうした指摘について、どのように考えるか。
2 離婚の際の、親権をめぐる争いにおいて、調停や裁判の実務では現状追認の傾向が強く、現に子を監護する親が親権者となりやすいと認識されている。このため、離婚係争中の一方の親による子の連れ去りや、逆にこれを防ぐための相手方配偶者からの子の隠ぺいがしばしば問題となっている。こうした現状は、子の福祉に反するものとして問題であると思料するが、どのように考えるか。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a169357.htm

その他、弁護士事務所のサイトを見れば・・・

違法性を想起させる「連れ去り」という用語を直接的には使っていないものの、多くの弁護士事務所サイトが指摘しているのが「現状優先」「継続性の原則」で別居に際して子どもと一緒に過ごしている親が有利だとしています。

親権者の指定と継続性の原則について | 明倫国際法律事務所 - 福岡・東京・名古屋の総合法律事務所 経営法務・企業法務, 個人法務, 行政支援

離婚時の親権者指定に際し現状維持を優先せず従前の非監護親に指定した裁判例

「違法性が高い子の奪取は容認されない」と指摘しているサイトもありますが、「違法性が高い子の奪取」というのが明らかに別居後に別居親が子を奪取することを指しています。また「父母の協議による信頼を裏切るような行為」が家裁判断の際にマイナスになるともありますが、協議開始前の連れ去り別居には適用されにくいでしょうね。

監護者に指定されていない親が、実力行使で子を連れ去る、面会交流時に子を拘束したまま返さないなど、法的な違法性はもちろん、父母の協議による信頼を裏切るような行為は、親権者としての適格性に欠けると判断されます。
これは、既に子が奪取者との生活に馴染んでいても関係なく、信用できない人間に親権を与えてしまうと子の将来に不安を残すため、現状維持の優先が崩れます。
ただし、違法性が高いとはいえ、奪取されてから相当長く維持されていると、子への影響も大きいことは当然に考慮され、子の意向も当然関係してきます。

http://choutei.net/kaji/shinkensha-shitei-henkou/shinkensha-kijun/

ちなみに、婚姻中(同居中)の「子どもの監護を主に誰がしていたのか」が重視されるなんて書いてる弁護士事務所はざっと見た範囲では一つもありませんでした。
木村氏の「裁判所は、婚姻中の子どもの監護を主に誰がしていたのか、その者が監護を続けて子どもが安定して生活できるか等を基準に判断しています。」という主張は、ちょっと信用できないと見るべきでしょう。
というわけで、どうみても離婚協議開始前に子供を連れ去った方(最初の連れ去り)が裁判において圧倒的に有利になるというふうにしか見れませんね。