だから判決文をまず読めと言ってるのに。

まだこんなブコメをつけてくるんですね。

判決の土台である併合の不法性は裁判官の間でも二分し、一票差で可決、裁判長は反対票に入れた、という韓国系新聞の報道からも韓国の裁判制度の独自性が見えています。土台が覆ればこの判決も覆る、という事です。
chuka123のコメント2019/02/27 02:00

http://b.hatena.ne.jp/entry/4665130260108514689/comment/chuka123

色々事実誤認があるんですが、一つずつ確認しましょう。

「判決の土台である併合の不法性は裁判官の間でも二分し、一票差で可決、裁判長は反対票に入れた」

間違いです。
裁判官の間で判断が割れたのは、1965年請求権協定によって原告らの訴訟による請求権行使が制限されるか否かです。「併合の不法性」で判断が割れたのではありません。
1965年請求権協定によって原告らの訴訟による請求権行使が制限されるかについて、大法院判決は、損害賠償は請求権協定の範囲外という理由で制限されないというものでした。
これに対して、李起宅、金昭英、李東遠、盧貞姫ら4人の大法官が“個別意見”をつけています。しかし、李起宅の個別意見は覊束力*1に関する補足意見であり、基本的に多数意見と同じです。他の金昭英、李東遠、盧貞姫ら3人の大法官は、多数意見と異なり本件の損害賠償も請求権協定の範囲内であるという意見をつけていますが、その上で請求権協定で消滅したのは外交保護権のみであり、個人請求権は消滅しておらず、その行使も正当であるとして、判決そのものに対しては支持しています。

(大法官金昭英、大法官李東遠、大法官盧貞姫の個別意見)
結局、原告らの被告に対する損害賠償請求権が請求権協定の対象に含まれていないとする多数意見の立場には同意することができないが、請求権協定にもかかわらず原告らが被告に対して強制動員被害に関する損害賠償請求権を行使することができるとする差戻し後の原審の結論は妥当である。そこにはこの部分の上告理由の主張に言うような請求権協定の効力、大韓民国国民の日本国民に対する個人請求権の行使の可能性に関する法理などを誤解した誤りはない。

http://justice.skr.jp/koreajudgements/12-5.pdf?fbclid=IwAR052r4iYHUgQAWcW0KM3amJrKH-QPEMrH5VihJP_NAJxTxWGw4PlQD01Jo

chuka123氏のいう「一票差で可決」というのは、おそらく13人の大法官のうち、2人が反対意見、4人が個別意見をつけたことをもって合計6人が反対したという誤解を根拠に賛成7、反対6であったかのように言っているのでしょうけど、判決そのものに対しては賛成11、反対2 で「一票差で可決」ではありません。

多数意見 請求権協定の範囲外なので賠償責任あり 7票
個別意見 請求権協定の範囲外なので賠償責任あり 1票(李起宅)
個別意見 請求権協定の範囲内だが個人請求権は消滅しないので賠償責任あり 3票(金昭英、李東遠、盧貞姫)
反対意見 請求権協定の範囲内なので請求権行使もできず賠償責任なし 2票(権純一、趙載淵)

「裁判長は反対票に入れた」は間違い。金命洙大法院長は多数意見を支持

どの「韓国系新聞の報道」を見たのか知りませんが、例えば中央日報はこう報じています。

<韓国、徴用工判決>賛成11人、反対2人…反対の理由は?

2018年10月31日08時32分 [ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
 金命洙(キム・ミョンス)大法院(最高裁)長をはじめとする最高裁の裁判官(13人、法院行政処長除く)からなる「日帝強制徴用損害賠償請求事件」全員合議体判決の最終結論は11対2だ。権純一(クォン・スンイル)裁判官、趙載淵(チョ・ジェヨン)裁判官の2人だけが「1965年の韓日請求権条約で原告(強制徴用被害者)の損害賠償請求権が消滅した」という反対意見を出した。ただ、損害賠償請求権を認めた裁判官(11人)の中でも論拠は3つに分かれた。
 まず、金大法院長を含む裁判官7人は「強制徴用被害者の慰謝料請求権は請求権協定の適用対象に含まれない」と判断した。今回の事件の主審の金昭英(キム・ソヨン)裁判官と李東遠(イ・ドンウォン)裁判官、盧貞姫(ノ・ジョンヒ)裁判官の3人は多数意見(7人)と同じ結論だが、論拠が違った。判決文の要旨によると、3人の裁判官は「原告の損害賠償訴訟請求権は請求権の対象に含まれると見るべき」としながらも「個人の請求権は請求権協定だけで当然消滅すると見ることはできない」と判断した。また「請求権条約に基づき原告個人の請求権が日本で消滅しても大韓民国政府がこれを保護することはできないが、強制徴用被害者が韓国で被告(新日鉄住金)を相手に訴訟を提起することができる」と明らかにした。
(略)

https://japanese.joins.com/article/619/246619.html

判決文を見ても金命洙大法院長が多数意見なのは明らかです。

「判決の土台である併合の不法性は裁判官の間でも二分」していない

「併合の不法性」に関して、大法院の裁判官内で意見の不一致なんかありません。

大法院判決に反対意見をつけた権純一、趙載淵らでさえ、反対意見の中でこう述べています。

(2) 日帝強占期に日本が不法な植民支配と侵略戦争遂行のために強制徴用被害者らに与えた苦痛に照らしてみると、大韓民国が被害者らに行った補償が非常に不十分なことは事実である。

http://justice.skr.jp/koreajudgements/12-5.pdf?fbclid=IwAR052r4iYHUgQAWcW0KM3amJrKH-QPEMrH5VihJP_NAJxTxWGw4PlQD01Jo

「併合の不法性」についての意見というなら、13人の大法院裁判官全員一致というべきでしょうね。



*1:同一事件の手続内において、ある裁判所の判断した裁判の内容が、さまざまな要請から、他の裁判所を拘束すること。

つまみ食い

この件。
李明博、朴槿恵、李承晩… 韓国政治家「反日発言」の共通点(2/25(月) 7:00配信 NEWS ポストセブン)
「在日3世のルポライター・姜誠氏」の民族性に拘る必要も無く、嫌韓バカは嫌韓バカとしか言えませんねぇ。
李明博朴槿恵、李承晩を全部ひとくくりにするとか雑としか言いようがありませんけど。

「共通点」としているのが「韓国の政治家が“歴史を長く見せる”のも常套句」とか「批判的なことを国際社会に訴える傾向があります」とかですかね。
とは言え“歴史を長く見せる”日本の政治家もいくらでもいますから、韓国の政治家の特徴とかって言われても、はぁ?としか思いませんけど。
「批判的なことを国際社会に訴える傾向」っても事実誤認としか言いようがありません。李明博大統領は野田首相に対して慰安婦問題で強硬な態度をとり、朴槿恵大統領も慰安婦問題絡み首脳会談を停滞させたりしてましたから、直接日本に言っているじゃないですか、と。

姜誠氏の主張はさすがにつまみ食いが過ぎるでしょうよ。



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今回の米朝会談はどのくらいの成果が期待できるだろうか

例えばこういう記事。

<2次米朝首脳会談>北メディア、米国の決断に「相応の追加措置を準備」

2/27(水) 11:17配信 WoW!Korea
 北朝鮮当局の立場を代弁する在日本朝鮮人総連合会の機関紙「朝鮮新報」は27日、「朝鮮(北朝鮮)側は、米国の決断に相応する善意の追加的措置をとる準備ができている」と明かした。
 朝鮮新報はこの日、2次首脳会談開催を知らせ「今回の会談での成果達成については、米国側が朝鮮との関係改善のための信頼造成措置、核戦争脅威の終結を対話相手に確信させる実質的な非核化措置をどれだけ果敢に引き出すかにかかっている」と説明。
 その上で「初の会合から8か月半が過ぎて実現する首脳らの再会は、歴史的な6.12朝米(米朝)共同声明の実践のための双方の高度計画を確定する重要な席」とし、「2次首脳会談の開催は、これまで朝米関係をこう着状態にしていた米国の誤った対朝鮮接近法が総括され、是正されたことを示唆している」と主張した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190227-00000027-wow-int

朝鮮総連機関紙とは言え北朝鮮側が交渉の成果への期待を示していますし、米国側も似たような情報をいくつか発しています。
この件に関しては韓国側からの情報は韓国政府の期待の影響を受けていると思われますのでそのまま信用するわけにはいかないのですが、米朝両当事者側からのこういった発信は、少なくとも両者が成果に期待しているということについて信用しても良さそうに思います。

当然、27日・28日の首脳会談で、新たな主張や喧々諤々のやり取りをするのは考えにくく、米朝双方が妥協できる見込みのある合意案がある程度の幅を持って既に準備されているはずです。
その案の中には、どうしても合意できないものや他の条件と引き換えなら合意できるものなどがあるでしょうが、他の条件と引き換えなら合意できるものの範囲が多ければ妥結できる見込みは高くなります。米朝双方の反応を示す報道はその範囲が広いことを示唆しているように思われます。

まあ、半分は私の願望でもありますけどね。
終戦宣言と核廃棄の同時合意を経て、制裁解除に南北共同での経済開発と進んで朝鮮半島から戦争の危機が消滅することを望んでいますので*1



*1:人権問題はもちろん残りますが、戦争になった場合はさらにひどい状況になるだけですので『戦争を回避しつつ』というのは人権問題を解決する上での大前提だと思ってます。

韓国外交部長官は国連人権理事会の基調講演で、一切日本を非難せずただ韓国政府に被害者中心のアプローチが欠けていたと述べている

関連する部分はこれ。

Last year, I raised the issue of sexual violence in conflicts as a particularly insidious form of violence against women and girls. To our great dismay, sexual violence in many conflict areas continues, despite the heroic efforts of fearless advocates such as Dr. Denis Mukwege and Ms. Nadia Murad, the recipients of last year’s Nobel Prize for Peace.
By honoring them, the prize reminded the world that we are far from eliminating sexual violence as an instrument of war, that victims and survivors are in need of support and must not be forgotten.
The news of the prize would have made Grandma “Kim Bok-dong,” very happy even as she laid in her sick bed. She was one of the two dozen surviving victims of the “comfort women” during World War II and a fierce advocate for human rights. Sadly, she passed away in late January this year at the age of 93. Now, only 23 registered survivors remain, all in their late 80s and early 90s. The knowledge that they are departing from us without having their lifelong pain fully addressed is sad and deeply frustrating.
Last year, the Committee on the Elimination of Racial Discrimination once again underlined the significance of a victim-centered approach with regard to the issue of “comfort women.” My government has humbly acknowledged that previous efforts on this issue had been grossly lacking in this regard, and we committed to the victim-centered approach in support of the survivors’ aspiration for justice based on historical truth. We are also honoring them by ensuring that their stories are not lost and current and future generations learn from their experience, and strengthening our contribution to the global women, peace and security agenda.
As a part of these efforts, my government launched a new initiative entitled “Action with Women and Peace” last year. There are two pillars to this initiative. One is to support projects that address the needs of women and girls in conflict and post-conflict situations. Under this pillar, we are supporting Rohingya refugee women through UNFPA and UNICEF. We hope to do more as more funding becomes available.
The second pillar is to create an international platform to discuss issues of critical importance to Women, Peace and Security agenda, including sexual violence in conflicts. We are planning to convene the 1st gathering of this initiative later this year. I hope this initiative will contribute to further enhancing the WPS agenda globally, in the run-up to the 20th Anniversary of the adoption of Security Council Resolution 1325 next year.

http://www.mofa.go.kr/www/brd/m_20140/view.do?seq=302603&srchFr=&srchTo=&srchWord=&srchTp=&multi_itm_seq=0&itm_seq_1=0&itm_seq_2=0&company_cd=&company_nm=&page=1

一切日本を非難することなく、Japanという単語すら使わず、ただ「My government has humbly acknowledged that previous efforts on this issue had been grossly lacking in this regard, and we committed to the victim-centered approach in support of the survivors’ aspiration for justice based on historical truth.」とだけ述べています。

安倍首相をはじめとする慰安婦否認論者や嫌韓バカや日本のネトウヨ諸君、良かったですねぇ。

韓国政府は、お前等なんかあてにしてない、みたいですよ。

日本に関して一切言及していないのに、日本のバカウヨが“反日かぁ!”と発狂しているさま。

はてなブックマーク - 韓国外相「慰安婦に寄り添う姿勢 著しく欠如」 | NHKニュース

いつまで韓国に付きまとうんですかねぇ。
あちらさんはもう日本なんぞに何の期待もしてないでしょうに。

でも、愚かな我が政府はこんな感じで“ムキーッ!”とお怒りのご様子。

日本が韓国に申し入れ 慰安婦問題、国連での言及に対し

2/26(火) 11:01配信 朝日新聞デジタル
 韓国の康京和(カンギョンファ)外相が25日、ジュネーブで行われた国連人権理事会の定例会合で演説した際に慰安婦問題を取り上げたことを受けて、日本政府は同日、韓国政府に対し、日本の立場を説明する申し入れを行った。在ジュネーブ日本政府代表部が明らかにした。
 康氏は演説で、慰安婦問題でのこれまでの取り組みに「被害者中心のアプローチ」が大きく欠けていたと述べた。日本は康氏の発言内容が、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった2015年の日韓合意と異なることは問題だとして、同代表部の伊原純一大使が「日韓合意の着実な履行を強く求める」などと韓国側に伝えた。(ウィーン=吉武祐)
朝日新聞社

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190226-00000023-asahi-pol

バカウヨの親玉はやっぱりバカなんだよなぁ。



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高橋克己氏の「徴用工判決:日本人弁護士の「国際裁判でも韓国が勝つ」を読んで」を読んで

徴用工判決:日本人弁護士の「国際裁判でも韓国が勝つ」を読んで --- 高橋 克己(2019年02月22日 06:00)」の件。

ここで言及されている中央日報記事は以下。
「強制徴用判決、ICJ・仲裁に進んでも韓国が勝つ」(1)(2019年02月11日07時19分 ⓒ 中央日報/中央日報日本語版)
「強制徴用判決、ICJ・仲裁に進んでも韓国が勝つ」(2)(2019年02月11日07時20分 ⓒ 中央日報/中央日報日本語版)
個人的にはICJで韓国が絶対に勝つと言えるほど楽観はできないと思っていますが。
それはそれとして、高橋克己氏の記事には色々と指摘しておきたいところがありました。

二つ目は「韓国政府が思い通りに使う余地がなかった」かどうかだ。が、それは『請求権資金白書』を読めば韓国がそれを自由に使ったことが判る。その白書は韓国経済企画院が1976年に作成し2014年に公開された。そこには各種インフラから産業機械までの膨大な使途と金額が記されている。筆者は「元サムスン技術通訳が教える韓国語」ブログの日本語訳に依拠する。
なお「個人請求権」についても、「第1章第2節 対日請求権資金の性格と規模」の要旨に

対日財産請求権とは、政府対政府の債権債務と民間対民間で決済されなければならない債務のこと

とある。である以上、日本からの資金が「民民債務」をも対象としていることを韓国は認めていた。つまり、原告個人の民間企業(新日鉄三菱重工など)に対する請求分も含まれている。

http://agora-web.jp/archives/2037376.html

1965年請求権協定が「「民民債務」をも対象としていること」自体は、2018年10月大法院判決も別に否定してはいませんので、はあそうですか、という程度の内容です。
大法院判決はこれらを踏まえた上で「原告らが主張する被告に対する損害賠償請求権は請求権協定の適用対象に含まれるとはいえない」と判断しているわけです。

そして資金の用途。「第1章第3節 請求権資金の使用基準」の要旨には

「請求権資金の使用基準を法律化した」
「資金は韓国民全てが均等に受益し国民所得が増加する用途にのみ使用し、韓国政府及び韓国民のみ使用できることとした」

とある。つまり、協定の文言は文言として、韓国は独自にその使用基準を決めたのだ。日本政府がそれを条約違反としてどうこうしたという話はない。

http://agora-web.jp/archives/2037376.html

高橋氏は「韓国は独自にその使用基準を決めた」と言っていますが、上記引用文の内容は明らかに1965年請求権協定の第1条中の以下の条文を踏まえたもので、韓国が独自に決めたと言えるものではないでしょう。

前記の供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない。

http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/JPKR/19650622.T9J.html

「資金は韓国民全てが均等に受益し国民所得が増加する用途にのみ使用」というのは、まさに「大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない」という条項に縛られた内容ですからねぇ。

対日民間請求権申告に関する法律(1971)に関する件

こちらは完全な事実誤認。

ふむふむ、という感じだ。そして「a.補償の対象」。

民間補償の対象は対日民間請求権申告管理委員会において証拠及び資料の適否を審査し、当該請求権申告の受理が決定されたものを対象とする。
(中略)
i.「日本国により軍人、軍属または労務者として召集また徴用され1945.8.15以前に死亡した者」である上、これに対する補償請求権者の遺族としては、被徴用者の死亡当時、その者と親族関係にあった者で申告日現在次の1に該当する者を言う。

子女
父母
成年男子である系直卑属がなくなった祖父母

ようやく核心に辿り着いた。つまり請求権協定の条文に関らず、5億ドル(民間も含めると8億ドル)が使われる対象には、まさに一連の訴訟の原告が含まれているのだ。以上、中央日報の記事を読んで調べたことを書いた。

http://agora-web.jp/archives/2037376.html

1971年の「対日民間請求権申告に関する法律」(以下、1971年請求権申告法)にある記載と同様の内容(それを説明する文書)を根拠に、「5億ドル(民間も含めると8億ドル)が使われる対象には、まさに一連の訴訟の原告が含まれている」と主張していますが、これは高橋氏の引用部分だけ見ても間違いだとわかります。

1971年請求権申告法の対象は「日本国により軍人、軍属または労務者として召集また徴用され1945.8.15以前に死亡した者」となっていて、その遺族に受給資格があるとされているわけですが、今回の大法院判決の原告は徴用工当人であって、遺族じゃありません(訴訟中に亡くなり訴訟を受け継いだ人を除く)。当然、原告は1945年8月15日時点では生存しており、「日本国により軍人、軍属または労務者として召集また徴用され1945.8.15以前に死亡した者」ではなく、故に1971年請求権申告法での対象者ではありえません。

したがって「5億ドル(民間も含めると8億ドル)が使われる対象には、まさに一連の訴訟の原告が含まれて」いません。

基本的にそういうことは大法院判決に書かれている。

大法院判決をあれこれ批評するのなら、最低限、判決文をちゃんと読むべきだと思いますが、ちゃんと読んで批判している論者はとても少ないですね。
1971年請求権申告法については原告を直接対象としていませんので、その言及は少ないですが、以下のように記載されています。

(P11-16/44)
4 上告理由第3点について
ア (略)
イ このような法理に従って、前記の事実関係および採用された証拠により認められる下記の事情を総合すると、原告らが主張する被告に対する損害賠償請求権は請求権協定の適用対象に含まれるとはいえない。その理由は次のとおりである。
(1) (略)
(2) 前記の請求権協定の締結経過とその前後の事情、特に下記のような事情によれば、請求権協定は日本の不法な植民支配に対する賠償を請求するための協定ではなく、基本的にサンフランシスコ条約第4条に基づき、韓日両国間の財政的・民事的な債権・債務関係を政治的合意によって解決するためのものであったと考えられる。
①~④ (略)
⑤ 2005 年、民官共同委員会も「請求権協定は基本的に日本の植民支配の賠償を請求するためのものではなく、サンフランシスコ条約第4条に基づき、韓日両国間の財政的・民事的債権・債務関係を解決するためのものである」と公式見解を明らかにした。

(3) 請求権協定第1条により日本政府が大韓民国政府に支払った経済協力資金が第2条による権利問題の解決と法的な対価関係があると言えるか否かも明らかではない。
(略)2005 年、民官共同委員会は請求権協定当時政府が受領した無償資金のうちの相当額を強制動員被害者の救済に使用すべき「道義的責任」があったとしたうえで、1975 年の請求権補償法などによる補償は「道義的次元」から見て不充分であったと評価した。そしてその後に制定された 2007 年の犠牲者支援法および 2010 年の犠牲者支援法は強制動員関連被害者に対する慰労金や支援金の性格が「人道的次元」のものであることを明示した。

http://justice.skr.jp/koreajudgements/12-5.pdf?fbclid=IwAR052r4iYHUgQAWcW0KM3amJrKH-QPEMrH5VihJP_NAJxTxWGw4PlQD01Jo

1971年請求権申告法は「1975 年の請求権補償法など」の一部と言えるでしょうが、それらの法律による補償は「「道義的次元」から見て不充分であった」と2005年の民官共同委員会が評価しています。この民官共同委員会は、「「請求権協定は基本的に日本の植民支配の賠償を請求するためのものではなく、サンフランシスコ条約第4条に基づき、韓日両国間の財政的・民事的債権・債務関係を解決するためのものである」と公式見解を明らか」にしてもいます。
本件原告は、1971年請求権申告法の対象ではなく「2007 年の犠牲者支援法および 2010 年の犠牲者支援法」は「道義的責任」による「「人道的次元」のもの」であったため、「損害賠償請求権は請求権協定の適用対象に含まれるとはいえない」とされたわけです。

ちなみに他にも、(4)で「請求権協定の交渉過程で日本政府は植民支配の不法性を認めないまま、強制動員被害の法的賠償を根本的に否認し」たため「一方の当事者である日本政府が不法行為の存在およびそれに対する賠償責任の存在を否認する状況で、被害者側である大韓民国政府が自ら強制動員慰謝料請求権までも含む内容で請求権協定を締結したとは考えられない」とか、(5)で交渉過程で「他国民を強制的に動員することによって負わせた被徴用者の精神的、肉体的苦痛に対する補償」に言及した事実や「強制動員被害補償に対するものとして算定(生存者 1 人当り 200 ドル、死亡者1人当たり 1650 ドル、負傷者 1 人当り 2000 ドルを基準とする)」した事実」はあるものの、「大韓民国や日本の公式見解でなく、具体的な交渉過程における交渉担当者の発言に過ぎ」ないし、「交渉過程で総額 12億 2000 万ドルを要求したにもかかわらず、実際の請求権協定では3億ドル(無償)で妥結した。このように要求額にはるかに及ばない3億ドルのみを受けとった状況で、強制動員慰謝料請求権も請求権協定の適用対象に含まれていたとはとうてい認めがたい」とかの理由も挙げています。

仮にも大法院としての判断を下す以上、このくらいの検討は当然にやってるんですよね。
この判決に納得できないとしても、少なくとも判決の論理を充分に理解した上でその論理の瑕疵を指摘するという手続は最低限とらないと批判の名に値しません。

もちろん、大法院が言ってるから正しいなんてことはありません。それは日本の最高裁判決についても同じで、高裁判決を追認するだけで憲法判断や重要な争点を回避してただ棄却しておしまいとか批判されるべき判決があることも確かです。
ただ、一般的に言って高裁判決を覆すような判決を下す場合は、様々な批判に耐えうるように判決の論理の構築には慎重を期すのが普通です。もちろん高裁までに出てきた原告・被告双方の主張で対立しているものは、ほぼ確実に踏まえた上で論理を構築しています。この大法院判決も同様で、全体を読めば、予想される批判に対してそれに耐えうる論理を慎重に構築しているのがわかりますよ。
それでも結果に納得できないと思う人は、まあ、少数意見の部分を読んでみるべきでしょうね。
ここで述べたのは、上告理由第3点に関する内容ですが、まさにその部分について、李起宅、金昭英、李東遠、盧貞姫ら4名の大法官が個別意見を書き、権純一、趙載淵ら2名の大法官が反対意見を書いていますから、その辺を踏まえて批判するというのはありだと思いますよ。



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(城内実)「例えば、イギリスの旧植民地であったインドが、エリザベス女王に“謝罪しろ!”などと要求しますか?」→答・してます

この件。

慰安婦20万人が強制連行!? 過激さ増す韓国の「歴史ファンタジー」 困った隣人の対処法

2/22(金) 8:00配信 デイリー新潮
(略)
 城内実元外務副大臣は、憤慨した様子でこう語る。
「文議長は、よくぞここまで言ったなと。例えば、イギリスの旧植民地であったインドが、エリザベス女王に“謝罪しろ!”などと要求しますか? もし、そんな発言をしたら、国交断絶は間違いなしです。確かに日本は過去、韓国には不愉快なことをしました。それには頭を下げたし、反省もした。日本は戦後、他の敗戦国とは比較にならないくらい手厚い対応を朝鮮半島出身の労働者や慰安婦らに行ってきました」
(略)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190222-00557000-shincho-kr

上記記事は全編余すところ無くクソですが、とりあえず城内実元外務副大臣発言について。

2016年11月7日付のテレグラフ紙にこんな記事がありましてね。

India deserves apology for atrocities under Britain’s colonial rule, senior Indian MP says

The Queen and Prime Minister should apologise to the Indian people for atrocities from Britain’s colonial past including the 1919 Amritsar massacre, a senior Indian MP and ex-minister has said.

https://www.telegraph.co.uk/news/2016/11/07/india-deserves-apology-for-atrocities-under-britains-colonial-ru/

インドは、「エリザベス女王に“謝罪しろ!”などと要求し」ていますねぇ。
で、別に国交断絶とかになってもいませんねぇ。
日本のネトウヨ連中の脳内ファンタジーは度し難いですねぇ。



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“訪韓の意向の有無”を“面会の有無”にすりかえる手法

この件。
韓国国会議長「追い込まれた安倍首相、慰安婦問題を政略的に争点化」(2019.02.18 09:56 )

なんか文喜相・韓国国会議長が一躍時の人になっています。
天皇を事実上神格化して崇拝している日本社会ではともかく、それ以外の海外から見れば別段おかしなことも言っていないんですけどねぇ。

天皇の面会記録に無いとか言われても

 文氏は10年前に天皇から韓国に行きたい、仲立ちしてほしいと言われた時、「何はともあれ、(慰安婦被害者の)ハルモニ(おばあさん)たちが集まっているところに行き、ひと言『すまない』と言うだけでいい」と話したとし、「歴史の法廷には時効がなく、歴史的な犯罪の被害者であるハルモニたちに謝罪しなければならない」と語気を強めた。

https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190218000400882

この部分に日本の国会議員までが躍起になって大騒ぎしていますけど、別に天皇と直接会って話したとかじゃなくても成立する部分ですから、面会した事実が無いとか言っても何の意味もないでしょうに。

例えば、現天皇が退位の意向を公式に表明したのは2016年8月8日ですが、2016年7月13日には宮内庁関係者からリークされて報じられていますよね。つまり“天皇の意向”を代弁するメッセンジャーがいるわけで、そういった人物から文喜相議長が「韓国に行きたい、仲立ちしてほしい」という天皇の意向を聞いていてもおかしくはありませんし、それを文議長が「10年前に天皇から韓国に行きたい、仲立ちしてほしいと言われた」と表現しても何もおかしくありません。

そういうわけで「文氏の天皇面会記録がない」なんていうのは反論にもなってませんね。
天皇の韓国訪問の意向の有無が、面会の有無にすりかえられているだけです。ま、今の日本社会を騙すだけなら、この程度で十分でしょうけど。


ちなみに天皇による公式発表以前に朝日新聞にはこういう記事が出ています。

2016年7月31日付
 天皇陛下が、天皇の位を生前にゆずる「生前退位」の意向を示していることがわかった。まわりの人には数年前から話していたという。皇室の決まりを定めた法律「皇室典範」に退位の規定はなく、実現のためには法律を変えるなどの手続きが必要になる。

https://www.asagaku.com/chugaku/newswatcher/7161.html

「まわりの人には数年前から話していた」とのことですから、その「まわりの人」が政治家に対して生前退位の実現に向けた働きかけはしている可能性が高いでしょうね。
天皇に政治的権能を持たさない”という建前を踏まえれば、天皇が自ら動いてあれこれ発言するよりも代弁者を通じて意向を示唆するのが基本でしょうし、そんなのはむしろ日本社会の方こそよく知っているはずですよね。

それに現天皇が戦時中の慰霊に積極的ならば「韓国に行きたい」という意向を示すのも不思議な話ではなく、その場合に日本国内の政治家だけではなく、韓国側の政治家にもその意向の実現可能性について打診するのはむしろ自然ではないですかね。
逆に、現天皇が韓国訪問の意向を直接間接問わず一切言及したことがないと考える方こそむしろ不自然でしょうよ。

いやまあ、現天皇が安倍首相同様に韓国に対して差別的な人物ならば別ですが。



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