これを日中中間線に適用するのは無理があるのでは・・・

ミャンマーバングラデシュの領海問題 国際海洋法裁判所「大陸棚の境界は中間線を基本」
フジテレビ系(FNN) 3月15日(木)16時22分配信

国際海洋法裁判所は14日、ミャンマーバングラデシュの海の境界線をめぐる紛争で、「大陸棚の境界は、中間線を基本とする」などとした初めての判決を下した。東シナ海をめぐる日中間の争いに、一石を投じるとみられる。
ミャンマーバングラデシュは、豊富な天然資源が埋蔵されているとみられるベンガル湾の大陸棚の開発をめぐって対立し、海の上の境界線を30年以上も確定できない状態が続いていた。
バングラデシュは、「大陸棚は自国の陸地の延長上にある」として、200海里を超える部分すべての帰属を主張するなどしていた。
ドイツのハンブルクにある国際海洋法裁判所は14日、初めてとなる海洋境界画定判決で、「大陸棚の境界については、両国間の中間ラインを基本」にしたうえで、境界付近にある島など個別の事情を考慮した境界線を画定した。
東シナ海をめぐっては、日本が中間線を主張する一方、中国は今回のバングラディッシュと同様、大陸棚は中国側の陸地の延長にあるとして、沖縄トラフ付近までの権益を主張している。
山田吉彦東海大学海洋学部教授は「国際的な標準は、中間線をとるんだと。中国の主張は国際的には受け入れられるものではないという1つの判例が出たことになります」と話した。
国際海洋法裁判所の判断を仰ぐには、当事国すべての同意が必要なことから、今回の判決が東シナ海の問題に直ちに影響を与えるものではないが、一定の基準が示されたことで、関係各国の関心が高まるとみられる。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20120315-00000263-fnn-int

記事にある国際海洋裁判所の判決やプレスリリースは以下にあります。

国際海洋裁判所のプレスリリースはこちら(PDF)
国際海洋裁判所の判決はこちら(PDF)

判決は長いので、プレスリリースのみ読んだ感想ですが、これを読む限り、FNNが東シナ海の境界線問題に絡めるのはかなり無理があるように感じます。

ミャンマーバングラディシュの境界問題は、陸上国境からの延長としての海上境界をどこに取るかで争っていた問題で、日中間の東シナ海の紛争とはかなり違います。
バングラディシュは、ミャンマーとの国境に流れるナフ川の河口から河口付近のバングラディシュ領のSt. Martin's島とミャンマーの陸地との中間線からその延長線を、海上境界と主張していました。
それだと、バングラディシュとミャンマーの海岸線の長さのバランスから見ると、明らかにミャンマーに不利な海上境界となってしまいます。そこで、国際海洋裁判所は海岸線の長さを考慮した基本的な中間線を決め、ただし、St. Martin's島の位置を考慮してそこだけバングラディシュ側に含めたわけです。

「大陸棚の境界については、両国間の中間ラインを基本」と言っているのが、その部分。
これを日中の東シナ海問題に適用しようとすると海岸線の長さを考慮する必要がありますから、単純に日本の主張が判例に沿っているとは言えないと思います。

「中国は今回のバングラディッシュと同様、大陸棚は中国側の陸地の延長にあるとして、沖縄トラフ付近までの権益を主張している」の部分については、まるで中国の主張が退けられたような表現が記事では使われていますが、実際にはそうは言えないでしょう。

ちなみに今回、200海里を超える部分の大陸棚についても、第三国が権利を有する海域まで境界が延長されていますので、大陸棚が陸地の延長にあるという主張をしているわけではなさそうです。

Decides that, beyond that 200 nm limit, the maritime boundary shall continue, along the geodetic line starting from point 11 at an azimuth of 215° as identified in operative paragraph 5, until it reaches the area where the rights of third States may be affected.

http://www.itlos.org/fileadmin/itlos/documents/press_releases_english/pr_175_engf_02.pdf