生活保護の不正受給だけで滅ぶような国ならとっくに滅んでます

片山さつき氏は「不正受給を許せば国が滅ぶ」などと喚いているようですが*1、もちろんデマです。
最近の片山氏は国民の権利を踏みにじるのに忙しいためか単純な計算もできなくなっているようです。大蔵省主計局の官僚出身なのに。

2010年度の生活保護の不正受給額が約129億円*2で、2010年度生活保護予算2.4兆円の0.6%程度に過ぎません。一方で、生活保護の捕捉率については各種試算がありますが30%〜70%くらいとされています。
片山氏らが口先で言うような「本当に困っている人」にも受給できるようにした場合、生活保護の予算は単純計算で3.4兆〜8兆円に増加します*3。仮に不正受給129億円を全てなくしたとしても誤差の範囲に過ぎません。

つまり、100億円程度の不正受給で滅ぶような国は、「本当に困っている人」を助けるための1兆円以上の増加分をとても負担できない無能国家でしかないわけです。国家というものが国民の生活を良好に維持するための道具だとするならば、最後のセーフティネットである生活保護の予算すら確保できない国家には存在価値がないとすら言えます。

「暗数」論者の跳梁

さて不正受給が全体から見て、ごくわずかであることを指摘すると出てくるのが「暗数」論者です。性犯罪被害と異なり、ケースワーカーのチェックが入る生活保護では、性犯罪のような表面の数値の数倍の暗数などは存在し得ません。
実際に、さいたま市が「徹底調査」した結果でも、高々「6割増」でしかありませんでした。

生活保護費の不正受給、徹底調査したら6割増加
 さいたま市で昨年度、生活保護費の不正受給額が約1億7230万円と前年度より約6割も増加し、過去最高となったことが4日、市への取材などでわかった。
 市保護課は「市外に転居した受給者らの課税状況も含めて徹底的に調べた結果、不正受給額が大幅に増えた」としている。
 市によると、昨年度の不正受給は354世帯で確認され、前年度より100世帯増え、ほとんどが就労や年金受給などによる収入を隠していたケースだった。不正受給額100万円以上は計51世帯あり、1000万円以上も2世帯あった。
 昨年度に回収できたのは全体の6%(約1030万円分)にとどまったという。
(2012年7月5日07時38分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120704-OYT1T01134.htm

しかも、実際には2010年度から2011年度への生活保護予算そのものが1割増しています*4ので、「徹底調査」による不正受給の「暗数」把握分は実質5割程度になります。
この「暗数」を考慮しても、不正受給額は予算全体の1%にも満たない額(200億円程度)です。

捕捉出来ていない額は1兆円以上ですから、比較するのも馬鹿馬鹿しいと言えます。

200億円を惜しんで1兆円以上の義務を放棄するような国の方こそ、国民から頼るに値しない国として存在価値を否定され滅ぶのではないかと思います。

*1:http://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/5b8b6801f7a6e2046f85e450111936ba

*2:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120301/plc12030123180020-n1.htm

*3:2010年度予算を捕捉率30〜70%で割った値。

*4:扶助費が2010年度818億円から2011年度937億円に15%近く増加しています。http://www.city.saitama.jp/www/contents/1270684665637/files/sittoku-H23.pdf