衆院選は大方の予想通り、自民の圧勝に終わりました。
自公で325議席ですから、衆議院での発議要件は満たしています。改憲に関しては公明党が抵抗できるかどうかも、多少の関門にはなるでしょうが、54議席取った維新が改憲に積極的ですから、公明党の抵抗など蟷螂の斧にもならないでしょうね。
- | 衆議院 | 参議院 | 合計 |
---|---|---|---|
民主党*1 | 57 | 107 | 164 |
自民党 | 294 | 83 | 377 |
未来 | 9 | - | 9 |
公明党 | 31 | 19 | 50 |
維新*2 | 54 | 3 | 57 |
共産党 | 8 | 6 | 14 |
みんな | 18 | 11 | 29 |
社民党*3 | 2 | 4 | 6 |
国民新党 | 1 | 3 | 4 |
大地 | 1 | - | 1 |
新党日本 | 0 | - | 0 |
新党改革 | 0 | 2 | 2 |
諸派 | 0 | - | 0 |
無所属 | 5 | 4 | 9 |
合計 | 480 | 242 | 722 |
そうすると、現状で改憲を止める防波堤となりうるのは、参議院で107議席を有する民主党しかありません。今回の衆院選で外堀は埋められました。残る内堀たる参議院ですが、これもどの程度持つかというと心もとないこと、この上ないわけです。
- 計 次期改選 次々期改選 民主党・新緑風会 107 63 44 自由民主党 83 32 51 公明党 19 10 9 みんなの党 11 1 10 日本共産党 6 3 3 たちあがれ日本・新党改革 5 3 2 社会民主党・護憲連合 4 2 2 国民新党 3 3 0 各派に属しない議員 4 4 0 合計 242 121 121 (※ただし、次期改選予定のたちあがれ日本の藤井孝男氏が辞職して衆院選に出馬したため、その分欠員。)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/174/giinsu.htm
来年実施される参院選での改選は、民主63、自民32、公明10、という民主優勢の議席数で行われます。参議院の3分の2は162議席ですが、非改選議席数で自民51、公明9、維新(たちあがれ日本)2、合計62議席ありますので、次期改選で自公維合計100議席取れば改憲発議可能な状態となります。
改選議席の民主63議席は、民主党に追い風が吹いた2007年の参院選での獲得議席ですから、2013年の参院選では、この議席数を維持することは難しいでしょう。とは言え、選挙制度の違いから民主党の他、護憲勢力である共産・社民合わせて21議席以下になるというのも少し考えにくいですね。
ここで考慮すべきは、みんなの党でしょう。みんなの党も賛同できる改憲案で想定すると、非改選議席で自公維みで72議席となりますので、改選議席で90議席が改憲のためのボーダーラインとなります。90議席は、自公と維新、みんなが選挙協力すれば充分狙える範囲と言えます*5。
従って、改憲を狙うなら、自民、公明、維新、みんな辺りが同意できる改憲要件の緩和、つまり憲法96条に的を絞った形で、参院選後になるかと思います。
(自民党改憲案)
http://www.geocities.jp/le_grand_concierge2/_geo_contents_/JaakuAmerika2/Jiminkenpo2012.htm
第百条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
つまり発議要件が3分の2以上から過半数に緩和されるわけですが、この場合、衆院では自民党単独で要件を満たし、参院では自公あるいは自維の合意があれば要件を満たすようになります。次の参院選が終われば、最大3年間は選挙がありません。この間に自民党が2度の改憲を行うかというと、さすがに時間的に厳しいように思えますが、読売新聞あたりは「憲法改正 「3分の2」要件緩和を糸口に(12月15日付・読売社説)」と言っており、要件緩和した後は好きにやれる、的に煽っています。
さて、上記とは別に自民が民主などから議員を切り崩す可能性も結構高いと思われます。参院非改選組を切り崩せば、要件はより容易に満たせるようになります。
以上を踏まえると、次期参院選も全く油断できない状況で、おそらく高い可能性で改憲可能な状況が出来上がると、個人的には見ています。内堀も埋められてしまうわけですね。
本丸は国民投票ですが、堀のない平城で防衛戦なんて不可能なので、私はそれには全く期待していません。
ところで安倍自民政権が改憲を2回に分けるにしても、公明党は自民案が通りやすい環境整備としての96条改憲に乗るのか、という声が上がると思いますが、「改憲要件の緩和には賛成するが、平和主義の放棄にまで賛成したわけではない」と2回目の改憲に”形だけ”の反対はするかも知れませんね。公明党は自民党との長年の連立経験を経て、二枚舌の使い方がとても上手くなってますから。