李守山氏証言に関する雑感

雑感といっても大方のことは、yasugoro_2012氏やhokke-ookami氏に言われていますので、瑣末な感想です。

6月17日付け琉球新報の元「慰安婦」李守山さんの証言記事について
慰安婦の子宮と靖国神社

報道されている証言内容に特に内容の信憑性に疑義を抱かせるような点はありません*1

 海辺の村で暮らしていた17歳の時、警察官に「紡績工場に就職できる」とだまされ、少女7人で汽車に乗せられ、満州の牡丹江にあった旧日本軍の慰安所へ連れて来られた。兵隊は毎日、列をなした。脱走した李さんを焼きごてによる拷問が待ち受けていた。妊娠して子宮を奪われた後も、慰安所に戻された。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-208097-storytopic-1.html

李さんは逃げようとして捕まり、皮のベルトで殴られたり体に焼きごてをおしつけられ、今も全身に傷が残っていること、また、妊娠が発覚したため中絶手術を受けさせられ、子宮まで摘出された壮絶な体験を語りました。

http://www.qab.co.jp/news/2013061644024.html

妊娠発覚による子宮摘出に関する件ですが、個人的な解釈を述べさせてもらうなら、おそらく当初は単純に堕胎させようとして、処置に失敗して子宮を傷つけたか、あるいは子宮摘出が必要な疾病が発覚したか、あるいは強制売春時や処置時に感染症に罹ったか、などの理由で設備の整った病院で子宮摘出せざるをえなくなったのではないかと思います*2
つまり、堕胎させるための直接的な手段としてではなく、堕胎の際に発覚した必要性(堕胎処置の失敗、疾病の判明)に基づく子宮摘出であろうと考えています。もし仮に子宮筋腫などの疾病が堕胎時に判明した結果として子宮摘出を行ったのならば強制売春と子宮摘出の間に直接の因果関係は見出せず、むしろ治療行為として行ったことになりますが、もちろんそれによって日本軍・政府の非人道性が免罪されるわけではありません。まして、意に反する売春を強要された挙句子宮を失った被害者にとっては、主観的に強い因果関係を感じ取るのが普通でしょうし、また、売春強要と疾病の因果関係を否定することも一般的に困難といえますので、李守山氏証言の信頼性を損なうような内容ではありません。
さらに「妊娠して子宮を奪われた後も、慰安所に戻された。」とあることから、たとえ治療目的の子宮摘出であったとしても日本軍性奴隷の“機能”を維持させるための治療に過ぎなかったと言えるわけです。「 そこまでする鬼畜が生かしておくのだろうか。」*3といった否定的な疑問を挙げている人もいますが、日本軍・政府は何も慰安婦を殺すことを目的としていたわけではなく、日本軍・政府主観では単に日本軍用性奴隷という“モノ”を修理したくらいの認識だったと解せば不思議な話ではありません。
銃や自動車と言った道具を修理するように、「慰安婦」という名の道具を修理し、その際に日本軍用性奴隷には不要な子宮を取り除いた、という感覚だったのでしょう。それは日本軍・政府という組織としての視点から見れば、銃や自動車と同様に大事に扱ったつもりなのかも知れませんが、市民という視点から見れば兵士同様に“モノ”扱いした、となるでしょうね。

*1:年齢に関する言いがかりがあるでしょうが、記者の誤記・誤読、李守山氏の言い間違いなどで説明できる程度のもので、これによって証言の信憑性を損なうようなレベルの問題ではありません。

*2:私は医者ではないので、専門性のない者の感覚に過ぎませんが。

*3:http://b.hatena.ne.jp/entry/ryukyushimpo.jp/news/storyid-208097-storytopic-1.html