出産しない夫婦に対して法的保護は無用と主張する産経

巨大なお世話だ、という感じ。

「最終的に日本も」「家族制度が崩れる」 米最高裁同性婚支持判決に国内は賛否
2013.6.28 00:00
 同性婚の権利を支持する米連邦最高裁の判決。日本の同姓カップルの人々やその関係者は、どう捉えているのか。
 「うれしいし、最終的に日本も米国と同じようになるのが目標」と話すのは、同性愛者であることを公表している民主党尾辻かな子参院議員(38)の母で、性的少数者を支援するNPO法人「LGBTの家族と友人をつなぐ会」の理事長でもある尾辻孝子さん(68)だ。日本の同性カップルの中には、法的に同性婚を認めているカナダに渡航、結婚証明書をもらう人々もいる。孝子さんは「単なる紙切れかもしれないが、2人にとっては愛の誓い」と説明する。
 東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)は園内や直営ホテルなどでの同姓カップルの結婚式を公式に認めている。今年3月にディズニーシーで式を挙げた元宝塚女優で女性同性愛者の東小雪さん(28)は「ディズニーの対応や今回の米国の判決などをきっかけに同性愛者の人権に目を向けてほしい」と訴えた。
 一方、慎重論も根強い。高崎経済大の八木秀次教授は「婚姻は次世代を担う子供を産み出すものとして法律で特別に保護されてきた。家族制度の根幹が崩れるので、同性婚を法的に認めるべきではない」と話す。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130628/trd13062800010000-n1.htm

「同姓カップル」とか誤字が(2箇所も)入っているあたり、さすがは産経新聞です。個人ブログ並みの推敲力に親近感を抱いてしまいます。

高崎経済大の八木秀次教授に聞いている時点でも笑いがこみ上げてきますが、「婚姻は次世代を担う子供を産み出すものとして法律で特別に保護されてきた。家族制度の根幹が崩れるので、同性婚を法的に認めるべきではない」という愚劣な発言をそのまま垂れ流す産経はやはりただのネトウヨではありません。政権と癒着している安心感からか、大物(ネトウヨ)の風格すら感じます。

さて「婚姻は次世代を担う子供を産み出すものとして法律で特別に保護されてきた。」という発言自体、色んな点で意味不明ですが、少なくとも医学的に子どもが産めない男女であっても婚姻が認められているという一点を持って、八木発言がデタラメであることはわかります。

家族という単位の価値について、私が考えるのは、別個に存在する個人が共同で生活することによってお互いにとって利益が発生するという点です。社会の最小単位において相互に利益がある関係が構築されることが重要であって、互恵的に安定した最小単位が集まることによって安定した地域社会が形成され、その積み重ねが国家を形成すると考えています。
最小単位が互恵的に安定することは、国家にとって統治の安定という利益になるがゆえに国家は最小単位である家族の互恵的安定を支援する義務を負います。
婚姻制度が、個人が別個に存在する場合に比べて当事者に有利に働くのは、家族の互恵的安定を目的とするからであるべきと考えますので、次世代を産み出すとの条件が婚姻制度に課されるべきではないと思います。国家が次世代を産み出すことを期待するために行っている施策としては補助金や減税措置などがありますので、国家として出生率を上げたいなら婚姻制度と関係なくこれらの措置を充実すればいいだけです。そもそも同性婚を禁止しているからといって、同性愛者が異性と結婚して子どもを産むことがどれほど期待できるのかという疑問がありますし、仮に期待できたとしてそれは同性愛者の人生を踏みにじった上での出生率への貢献を国家が強制しているに過ぎません。

家族の互恵的安定という面で考える限り、家族の構成員が異性愛者であるか同性愛者であるかや、子どもを望むか否かは問題ではありません。当事者同士にとって安定的に利益のある関係であればそれでよいということになります。

一方で八木氏や産経、自民党などの考える右翼的世界観では、上記のような考え方はまず理解されません。右翼的世界観では国家や主君のために下部構造があり、その末端が家族になっています。そのため、家族は徹頭徹尾、国家のための末端組織に過ぎず、国家に資する家族構造のみ保護に値することになります。この発想の延長に「婚姻は次世代を担う子供を産み出すものとして法律で特別に保護されてきた。」という八木思想が位置するわけです。

国家のために家族が存在すると考えるか、主体的な意志を持つ家族を支援する組織として国家が存在すると考えるか、この点で決定的な違いがあります。