「破綻確率ランキング」レイシズムに囚われると冷静な判断ができなくなる事例

中韓、財政破綻リスク急上昇 経済失速で「確率」悪化 日本は…

排外主義、中国韓国差別を社の方針として事実上、掲げている産経新聞がまたも適当なことを言っています。
Credit Market Analysis、略してCMAという組織が出している「破綻確率ランキング」(Cumulative probability of default: CPD)から数字を拾って実態からかけ離れた印象操作をしています。

破綻確率は5年以内にデフォルトする確率を推定した指標で、2013年第2四半期での値は、日本6.23%、韓国7.58%、中国10.24%、インド22.07%と言ったかんじです。アルゼンチンやキプロスは80%台、60%台ですが確率の高い上位8番目までが30%以上で、9番目以降は30%未満です。

 S&PキャピタルIQは「中国の成長鈍化により他のアジア新興国の成長も懸念される」と述べているが、問題だらけの中国への依存度が高い韓国にズバリ当てはまる指摘だ。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130718/frn1307181810004-n1.htm

とか述べていますが、2011年第2四半期からの破綻確率の推移を見ると、どうにも違和感を覚えますね。

'11Q2 '11Q3 '11Q4 '12Q1 '12Q2 '12Q3 '12Q4 '13Q1 '13Q2
日本  7.3 11.3 11.2 8.0 7.5 6.9 6.6 6.0 6.23
韓国  8.0 16.1 13.5 10.5 10.5 7.5 5.9 6.9 7.58
中国  6.8 14.9 12.5 9.7 10.4 7.7 5.8 6.4 10.24
インド 14.7 27.6 30.2 27.1 29.5 23.7 18.4 17.4 22.07

中国に関して「影の銀行」の影響が出ているのは当然でしょうが、2013年第2四半期でアベノミクスが失速している様子もまた見て取れます。ところがアベノミクスに対しては必死で副作用を否定しています。

 数値が大きいほど高リスクであることを示すCDSは、3月末時点で74・53ベーシス・ポイント(bp)で、今回は77・2bpと微増した。ただ、5月下旬以降、株価が大幅に下落し、為替の円高が進行、長期金利も一時急上昇したことで、「アベノミクスの副作用」と騒がれた割には、日本の財政リスクに関して市場関係者は冷静だったことがわかる。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130718/frn1307181810004-n1.htm

中国経済に問題があるのは確かですが、破綻確率10%が大問題かというと、過去の推移や他国の状況を見てもそうとは言えないでしょう。ところが記事では煽情的にこう書いています。

 中韓経済の破綻リスクに世界の市場関係者が警戒を強めている。世界各国・地域の財政リスクを示す「破綻確率ランキング」の最新版(6月末時点)で、日本は低リスクの上位19位と、前回(3月末時点)の20位からランクを上げた。市場関係者が日本国債を「安全資産」ととらえる状況が確固たるものとなった一方、中国の破綻確率上昇率は世界最悪で、ついに10%を突破した。そして韓国の破綻リスクも高まっている。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130718/frn1307181810004-n1.htm

「日本は安全、中韓は危険」という結論先にありきとしか思えない記事と言えます。