こういうトラックバック。
>まあ、毛沢東に比べれば小物感がありますが、伊藤博文も近代日本建国における英雄と言えます。
http://d.hatena.ne.jp/syachiku1/20140121/1390262541
これには笑ってしまった(小物って言いたいだけだろう)。完全に中国の目線で歴史を語っていると自白しているようなものである。しかし他の左派のように、中途半端に中立ぶったりせず、ぶれない姿勢は純粋に尊敬出来る。
しかし、まあこれはこれで言い得て妙かも知れない。毛沢東に比類し得る「大物」は、スターリン位だろう。
別に個人的意見に過ぎないので同意してもらう必要もありませんが、日本史上で毛沢東に比する人物としては大久保利通や西郷隆盛あたりと思ってますが何か?
そして大久保や西郷に比べれば伊藤博文は小物だと思っていますよ。
まあ、スターリンと言いたいだけだろうとか思って笑わせてもらいましたが。
ところで伊藤博文が韓国統監を務めた1906年から1909年にかけて韓国で何があったのかというと、義兵闘争の真っ只中にありました。1907年から1911年までの義兵討伐での義兵戦死者は1万7000人に上ります*1。
当時の朝鮮人口は1700万人程度ですから、1907年から1911年までの5年間について、人口10万人あたり年間犠牲者数は20人です。
これに対し、1960年代当時人口7億程度だった中国における文化大革命での犠牲者数*2は40万人と言われます*3。言うまでもなく文革被害者数全体はもっと膨大ですが、義兵戦死者数と比較するなら文革での死者数が適切でしょう*4。
さて、文革10年間について、人口7億人中40万人の迫害犠牲者ですから、人口10万人あたり年間犠牲者数は6人程度です。
伊藤博文支配下の韓国5年間での犠牲者数は人口10万人あたり年間20人、毛沢東支配下の中国文革10年間での犠牲者数は人口10万人あたり年間6人。仮定の精度を踏まえれば、両者とも同レベルとも言えます。もっともこれは単なる思考実験に過ぎず、本来比較することに意味もありません。ただ政治の犠牲者の多寡を判断するに、統治人口規模や統治期間を踏まえずに実数値のみで比較しても意味が無いことを指摘するための思考実験です。
伊藤博文は義兵討伐を直接指示しなかった?それなら毛沢東も文革での40万人迫害を直接指示したわけではありませんね。
毛沢東は大躍進でも多くの餓死者(一説に3000万人)を出した?それなら伊藤死後の植民地朝鮮支配下での飢餓輸出等の意図しない失政による被害者も考慮すべきでしょう。
苛政・失政について言うなら日本の植民地支配は毛沢東中国と大して違いません。毛沢東支配が中国民衆の大多数の支持を受けて成立したことを踏まえれば、被害を受けた民衆の反感が植民地朝鮮の方においてより強いとも言えるでしょう。
こちらも同類の戯言。
大和撫子 2014/01/21 23:51
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140120/1390234476#c
ほんとにどうしょうもないなあ。伊藤博文と毛沢東を比べるだって? そりゃスケールが違いますわ。それはどうでもいいこと。中国の方が客観性を持って歴史(的人物)を評価しているですって。
ほんとに頭おかしいんじゃないの。毛沢東が何千万人殺したの? 韓国統監の伊藤博文は韓国で何をしたの? 人殺し? それとも、行政、法律、教育等の改革、殖産興業? 百歩譲って7対3であっても殺した人を顕彰するのを許さないのは当然じゃないですか。(以下略)
少なくとも「毛沢東が何千万人殺したの?」という台詞が意図する意味においてなら、「韓国統監の伊藤博文は韓国で」「人殺し」をしたと言っていいでしょうね。「殺した人を顕彰するのを許さないのは当然じゃないですか」という点については、ここで示したナチ親衛隊ハイドリヒを暗殺したガプチークの事例で示した通りで、圧制に抵抗する手段としての暗殺の場合、暗殺の是非以上に圧制への抵抗という点に焦点があてられるのが自然であり、暗殺者に対して非難だけというのは圧制を擁護するに等しい行為だということです。
以前私はこう書きました。
誰しもが腹の中で思っていることでしょうが、安倍政権は植民地支配を正当化したいと考えている歴史修正主義政権ですので、“法的には「犯罪者」だが、植民地支配を正当化するものではない”などと自ら訂正したりは絶対にしないでしょうね。
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20131125/1385397517
“法的には「犯罪者」だが、植民地支配を正当化するものではない”という程度のことすら安倍政権は表明していませんが、私はせめてこの程度の留保を明言していれば、暗殺という手段を非難することは正当だと思っています。なればこそ、上記前段にこう書いたのです。
もちろん、言葉の上だけで考えるなら、日本政府の考えは“法的には「犯罪者」だが、植民地支配を正当化するものではない”という解釈もできます。しかし、従軍慰安婦問題に関する類似するやり取りにおいて「慰安婦制度は合法だった」と発言した稲田大臣は「合法であったという言い方をすると、人権侵害ではないというふうに誤解されると私は思うので、今であろうとも戦時中であろうとも、女性の人権に対する重大な侵害であることには変わりがない」*1と述べていることを踏まえれば、日本政府が安重根を「犯罪者」と評価することは植民地支配を正当化していると解釈されてもやむを得ないところでしょう。
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20131125/1385397517
それを理解できない人は、こういう頓珍漢なコメントをします*5。
syachiku1 抗日闘争を正当化する事と、安重根の暗殺を正当化する事をセットで考えて良いのだろうか?「伊藤博文は悪人だった。暗殺されて当然だ」と?まあ戦前日本は別にテロリストではないので、対比が不当だと言うのには同意 2014/01/23
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/scopedog/20140122/1390414467
レジスタンスを正当化する事と、ハイドリヒの暗殺を正当化する事をセットで考えて良いのだろうか?「ハイドリヒは悪人だった。暗殺されて当然だ」と?
ちなみに戦前日本は閔妃を暗殺した三浦を保護したり、張作霖爆殺の真相を把握しながら首謀者を処罰しなかったりとテロリストを保護したテロ国家とも言えますよ。問われているのはそのような戦前日本を今もなお正当化するのか、ということに気づくべきです。
*1:http://www1.korea-np.co.jp/%5Csinboj/j-2008/06/0806j0307-00006.htm
*2:死者に限定
*3:「中国社会変動における村落と家族――大躍進から文革期の人口激動」http://www.meijigakuin.ac.jp/~iism/pdf/nenpo_009/p105Wakui.pdf
*4:大躍進では3000万人の死者が出たとされますが、これも餓死であり、討伐・迫害の直接被害ではないので、ここで比較する上では適切ではないでしょうね。
*5:この人は自らの可能性を自らの意志で狭めているので、その意味で残念な人だと思います。