アジア女性基金関係者がアジア女性基金の活動を宣伝すること自体は悪くないが、同時に償い金を受け取らなかった慰安婦らを含めて改めて謝罪するべき

この件。

アジア女性基金の資料集を出版 記念会に村山元首相ら

2014年11月9日21時09分
 旧日本軍の元慰安婦に「償い金」を支給するなどの活動をした財団法人「女性のためのアジア平和国民基金アジア女性基金)」(2007年解散)の活動内容を記録した資料集がこのほど出版され、9日、東京都千代田区で出版記念会が開かれた。基金の関係者ら約50人が出席した。
 冒頭、基金理事長を務めた村山富市元首相があいさつし、「アジア女性基金がどのような役割を果たし、世界からどのような評価を受けているのか検証することが必要だ」と述べ、政府と国民の協力で進めた元慰安婦への「償い事業」の再評価を訴えた。
 副理事長を務めた石原信雄元官房副長官は、韓国で基金の活動が世論の批判を受け、元慰安婦の多くが償い金を受け取らないまま終了したことに触れ、「残念でならない。日韓両国で何らかの形で克服されなければならない」と述べた。
 基金河野談話を受けて1995年7月に発足した。首相によるおわびの手紙と国民の寄付から償い金200万円、国費から医療福祉支援事業として120万〜300万円を元慰安婦に支給した。
 刊行された資料集は「デジタル記念館 慰安婦問題とアジア女性基金」(村山富市・和田春樹編、青灯社)。基金解散後、活動を伝えるためにウェブ上で公開されていた同名のサイト(http://awf.or.jp)を収めた。ウェブ版は日本語、英語で公開され、今年7月には韓国語でも公開された。

http://www.asahi.com/articles/ASGC96JYRGC9PTIL11D.html

記事を読む限り“僕たちの活動を評価してください”オーラしか感じないのですけどね。
以前、イギリスの児童移民問題に関して、「「児童移民」問題に見る自国の黒歴史への向き合い方」という記事を書きました。
イギリス政府は2010年になってようやく児童移民に対して公式に謝罪しました。問題が表面化してから謝罪までの期間だけで言えば、首相が公式に謝罪したわけではないにしても河野談話の方が早かったと言えます。問題はそれ以降の対応です。
児童移民問題に関してイギリス政府は毎年2月24日になると現職首相が謝罪の声明を出し、2010年当時の首相も声明を出して、児童移民問題を繰り返し忘れてはならない悲劇であることに言及しています。
これに比して日本政府が従軍慰安婦問題に対する態度は河野談話アジア女性基金設立まで何とかこぎつけただけで、それ以降1990年代後半からはほとんど言及を避けるようになります。首相によるお詫びの手紙もありましたが、首相や大使レベルでの手渡しすら避け、なるべく人目に付かないようにと為されたと言えます。もちろん、奥ゆかしいからではなく、謝罪したという事実を恥とみなして隠したいからに過ぎません。

アジア女性基金に対しては元慰安婦らを支援する側からも多くの批判がありましたし、それには尤もな理由もありました。

それでもなお、もし河野談話以後、あるいはアジア女性基金設立以後、毎年8月4日に、現職首相が元慰安婦等に対する謝罪を公式声明として発し、河野洋平氏や村山富市氏らがこの悲劇を忘れないようにと公式声明を出し続けていたなら、日本社会の慰安婦問題認識はここまでひどい状況にはならなかったでしょうし、韓国側をはじめとする元慰安婦らやその支援者らも日本に対する非難を控えたでしょう。2007年に米下院決議が出ることもなかったでしょう。
少なくとも、河野談話で表明した「このような問題を永く記憶にとどめ」る努力は評価されたはずです。

 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html

もっとも、今の排外差別熱に感染している日本人は、そのようなことをしても韓国は非難し続けたに違いない、と主張するでしょうけどね。韓国側の対応が、日本側が慰安婦問題を永く記憶にとどめる努力を放擲し、忘れ去ろうと努め、あるいは被害者らを侮辱する行為を繰り返したアクションに対するリアクションであることを綺麗さっぱり無視して。