いやそれ、B層を取り込む戦略と変わらないと思うんですが・・・

この件。

安倍首相の「技」、野党は学んで 官邸の「中道派」戦略

2017年12月14日15時43分 記者有論 政治部・園田耕司
 「右派3割、中道派5割、左派2割」。安倍晋三首相が率いる首相官邸の中枢は、現在の日本人の政治的傾向について、歴史や伝統を重視する「右派」、バランス重視の「中道派」、リベラル系の「左派」の3分類の割合で分析している。
 この数字をもとに、安倍首相の政治目標は常に中道派の半数近くを固めることに置かれている。
 右派へのアピールを欠かさずに3割を自らの基礎票とし、有権者の関心が高い社会保障・経済政策を打ち出して中道派右寄り層を引き寄せ、過半数を得る――。「真正保守」を自負した次世代の党などは事実上、自民党に吸収されて消滅。民主党政権時代は中道派を引き寄せていたとみられる民進党も、野党第1党の存在意義を示せぬまま分裂した。

http://www.asahi.com/articles/ASKD44H2KKD4UTFK009.html

「歴史や伝統を重視する「右派」、バランス重視の「中道派」、リベラル系の「左派」の3分類の割合」というのは表現が違うと思う。
ごく単純に「右派」「左派」「無関心」という方が正確でしょう。

「バランス重視の「中道派」」じゃなくて、「無関心派」

比率は、「右派」3、「左派」2、「無関心」5 で、先の衆院選比例得票数を、自民+公明+維新+希望の半分を「右派」、民主+共産+社民+希望の半分を「左派」とした場合、その比率は得票数で3376万対2127万*1、おおよそ3対2になります。投票率は53%でしたので、「無関心」は5に相当します*2
要するに「バランス重視の「中道派」」の5はそのまま投票しない「無関心」層にかぶります。

もちろん、安倍自民が「無関心」層を無視しているわけではなく、この層が野党支持に向かわないような様々な手段を講じているわけですよ。“風”が吹いたり、“山が動いた”りすれば、自民党政権を揺るがす恐れがありますからね。それが「安倍首相の「技」」。

例えば、悪いことは何でもかんでも“民主党政権”や野党やマスコミのせいにする「技」ですね。安倍自民はそれをかなり露骨にやっていますが、小泉時代にもB層対策をやっていますし、心情的には自民党は「無関心」層を眠らせておくことにずっと普請してきています。森元首相の「眠っていてほしい」なんて、まさにその心情の吐露ですよね。

安倍自民の戦略

安倍に限らず小泉政権以降の自民党の戦略はふたつあって、ひとつは「無関心派」を眠らせることと、もう一つは「左派」を分断することです。後者として利用されてきたのが、みんなの党や維新一派に希望の党ですね。都知事選でも脱原発の宇都宮候補に小泉・細川をぶつけたりと分断策はかなり広く利用されています。
みんなの党ができる以前は、自民党民主党が拮抗するような状況になっていましたが、みんなの党・維新以降は非自民票が分散し、議席数では常に自民が安泰となる状態が続いています。みんな・維新の賞味期限が切れると、小池新党を投入し、なりふり構わず野党統一を妨害しています。
もちろん自民の工作だけでそういう状況になるわけでもなく、共産も含めた野党統一に否定的な連合などの存在がそういう自民の蠢動を許したという面もありますが。

「バランス重視の「中道派」」と称する「無関心派」を誘導する手法

安倍自民と産経新聞が、民主党政権時代に対するレッテル貼りを2010年頃から継続的に大々的にやってますが、それに加えて政権に批判的なメディアに圧力をかけて黙らし、政権に媚を売る論者を優遇してメディア内に親安倍勢力を扶植してもいます。
子飼いの極右排外主義勢力やネトウヨらには、左派リベラルに対する真偽関係ないネガキャンをさせていますね。その辺は、自民党のネット工作が他の政党より先んじたと言えるでしょう。
対立政党のデマ情報をネットにばら撒き、産経が報じ、自民が国会で槍玉に挙げるという基本的なデマの拡大再生産が効果的に運用されています。

「バランス重視の「中道派」」なる勢力ですが、実態は無関心派ですので、そういう人たちの重視するバランスとは、右派の“100人殺せ”という主張と左派の“1人も殺すな”という主張の間をとって、“50人殺すことにしましょう”という程度のバランスですから、右派にしてみれば手玉に取りやすいんですよね。
100人殺したいと思っている時は“200人殺せ”と言えば、「バランス重視の「中道派」」なる勢力は間をとって“100人殺すことにしましょう”と言ってくれますから。



*1:http://www.soumu.go.jp/main_content/000513918.pdf

*2:得票数の左右比率が右3左2になるというのは、55年体制以降ほぼ毎回見られる傾向ですね。