現時点では広開土大王艦事件に関する日韓双方の公式見解は対立していなかったりする

韓国側は、火器管制レーダーの一種であるMW-08は照射したが、追跡レーダーであるSTIR-180は照射してない、と主張しています。
日本側は、火器管制レーダーの照射を受けたとだけ主張し、MW-08かSTIR-180かについては明言していません。

したがって、事実が韓国側の主張通り、MW-08レーダーのみ照射しSTIR-180が照射されていなかった場合でも、火器管制レーダーであるMW-08の照射を受信したことに変わりはなく、日本側の主張も間違ってはいないことになります。つまり、日韓両政府の公式見解は矛盾していないわけです。
在野の日本側論者の多くはSTIR-180を照射したと決め付けていますが、日本政府は公式に認めているわけではありません。
12月25日時点の防衛相記者会見でも以下のようにはぐらかしています。

Q:韓国側は射撃管制用のレーダーと、火器管制用のレーダーを使い分けて、いわゆるMW-08のレーダーとSTIRのレーダーを使い分けていると説明していると思うのですが、そのSTIRの方は使っていないという説明だと思うのですが、日本側が探知をして発表に至ったのは、STIRを感知したということでしょうか。

A:その中身を逐一、詳細に申し上げるわけにもいかないと思いますが、防衛省側はおっしゃったようなことも含めて、海自側は分析をしております。

http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2018/12/25a.html

探知したのはSTIRなのかという質問に答えない理由が全く不明です。火器管制レーダーの照射を受けたと主張し抗議している側の態度としては不可解という他ありません。MW-08の照射であっても問題だと主張するなら、STIR-180であろうがMW-08であろうが問題であると明言しないと意味不明ですし、MW-08なら問題ないが、STIR-180の照射だったから問題だと主張するなら、照射されたのがSTIR-180 でなければならないのですから、これも明言する必要があります。

韓国側は再三にわたって日本側に確認しているものの、日本側は答えていません。

日本側が問題視している火器管制レーダーがSTIRだと公式に明言されれば、そこで初めて日韓双方の主張が対立することになります。
しかし、日本側が明言しないため、対立点が生じないまま、議論がかみ合わない状態になっています。

ところがそんな状態にもかかわらず、日本側は韓国側に対して感情的に反発していて、報道でも日韓双方の主張が対立しているように報じられています。対立していると報じるならまだマシな方で、多くは日本側主張が一方的に正しく、韓国側主張が一方的に虚偽であると決めつけていますね。

その辺、日本社会が冷静さに欠けているとしか言いようがないところです。

日本政府は、日本の在野論者が勝手に忖度して“問題となっている火器管制レーダーはSTIRのことだ”と決め付けてくれるのを良いことに、自らは何も明言しないという対応をとっているかに見えます。

こうして見ると、確かに「安倍首相は汚い」*1んですよね。

追記

佐藤副大臣がSTIRだと明言したらしいです*2防衛省公式サイトにアップされることを期待します。