レーダー照射疑惑を外交問題化したのはどちらか

2018年12月20日15時ごろ、日本海上(韓国公式発表では日韓暫定水域内、日本公式発表では日本EEZ内)で韓国駆逐艦が日本哨戒機に対して火器管制レーダーを照射したとされる事案が発生しました。

これに対する初期の日韓両政府の反応を時系列的に見てみます。

2018年12月21日(金)(発生1日後)

日本防衛省が「韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について」というお知らせを公表しています。過去の中国軍艦によるレーダー照射事案の際に比べても発生翌日の公表というのは異例の速さと言えます。
防衛省サイトでのお知らせは短いあっさりとした内容でしたが、19時からの記者会見ではかなり強い表現で韓国側を糾弾しています。

 岩屋毅防衛相は21日、防衛省で記者団に、海上自衛隊のP1哨戒機が20日午後3時ごろ、日本海能登半島沖の日本の排他的経済水域EEZ)内で、韓国海軍の駆逐艦から火器管制レーダーの照射を受けたと発表した。岩屋氏は「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為だ」と非難。21日に外務省など複数のルートで強く抗議したことを明らかにした。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122106819&g=pol

これに対する、この日の韓国政府側の対応はSMSを通じた簡単なものでした。

국방부도 출입기자단에 휴대전화 문자를 보내 “우리 군은 정상적인 작전 활동 중이었으며, 작전 활동 간 레이더를 운용하였으나 일본 해상초계기를 추적할 목적으로 운용한 사실은 없다”고 밝혔다. 국방부는 또 “우리 측은 위 사항에 관해 (일본 측에) 설명한 바 있으나, 추후 일본 측에 오해가 없도록 충분히 설명하겠다”고 덧붙였다.
機械翻訳:国防部も出入り記者団に携帯電話文字を送って“わが軍は正常な作戦活動中であり、作戦活動間レーダーを運用したが日本海上哨戒機を追跡する目的で運用した事実はない”と明らかにした。 国防部はまた“私たちの側は上の事項に関し(日本側に)説明したことがあるが、今後日本側に誤解がないように十分に説明する”と付け加えた。)

http://m.sf.koreadaily.com/news/read.asp?art_id=6840110

時事通信記事ではこのように記載されています。

 これに対し、韓国国防省報道官室は「通常の作戦活動中だった。(海自)哨戒機を追跡する目的で運用した事実はない」と説明、危険性を強く主張する日本側と立場の違いを際立たせた。ただ、「誤解がないよう十分に説明する」とも表明した。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122106819&g=pol

発生1日後の公表当日から日本側が強い調子で韓国側を非難していることがわかります。

2018年12月22日(土)(発生2日後)

この時点では、韓国政府が公表した公式な回答は21日夜に発信したSMSの『レーダーを運用したが日本哨戒機を追跡する目的で使用していない。誤解のないように日本側に十分説明する』というもので、非常に穏当な内容です。

ところが日本防衛省は12月22日土曜日に異例のお知らせを公表します。土日祝日に防衛省がお知らせを公表するのは災害対応以外ではほとんど見られず、この点でも日本側の対応は異例でした。
異例なのは、お知らせの公表タイミングだけではなく内容もまた異例です。

 本件について、種々の報道がなされていますが、防衛省としては、20日(木)のレーダー照射事案の発生後、海自哨戒機の機材が収集したデータについて、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断しています。その上で、火器管制レーダーは、攻撃実施前に攻撃目標の精密な方位・距離を測定するために使用するものであり、広範囲の捜索に適するものではなく、遭難船舶を捜索するためには、水上捜索レーダーを使用することが適当です。
 加えて、火器管制レーダーの照射は、不測の事態を招きかねない危険な行為であり、仮に遭難船舶を捜索するためであっても、周囲に位置する船舶や航空機との関係において、非常に危険な行為です。なお、韓国も採択しているCUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準)において、火器管制レーダーの照射は、船舶又は航空機に遭遇した場合には控えるべき動作として挙げられています。
 以上の理由から、今回このような事案が発生したことは極めて遺憾であり、韓国側に再発防止を強く求めてまいります。

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/22a.html

日本防衛省の12月22日付のお知らせは、韓国政府からの公式の説明に対する反論ではなく「種々の報道」に対する反論という形で出されています。その上で韓国政府側を糾弾している内容になっています。
韓国政府の公式な説明に対する反論ではなく報道に対する反論を日本政府は行ったわけですが、この時点で当局者同士で対話しようという意思が日本側に欠けていたことは明らかです。

2018年12月24日(月)(発生4日後)

韓国国防部は24日になってようやく記者会見で事実関係について回答しています。
韓国国防部記者会見(韓国語)
ばーべっと @barbette_81mm 氏による翻訳

ここで韓国は公式かつ明確に、火器管制レーダーでもあるMW-08も使って救助活動を行ったがSTIR-180は使っていない、と反論しています。
12月21日のSMSからも特に矛盾のない説明であり、以後の説明もこの内容で一貫しています。前記事でも書きましたが、韓国政府の説明は二転三転などしていないんですよね。
なお、低空飛行の件についても韓国政府はこの日の説明で、殊更に追及するような表現ではないものの既に言及しています。STIR-180に付随する光学カメラを向けた理由の説明として言及したもので、会見内で日本側を糾弾するような表現はとっていません。
韓国側が低空飛行に言及しながらも、この時点で特に日本側を糾弾するような論調をとらなかったのは、当局者同士の協議で解決できると見込んでいたからと思われます。
日本側からの通信についても聞き取りにくかった旨の説明として述べられています。

2018年12月25日(火)(発生5日後)

前日の韓国国防部の公式発表を受けて日本防衛省が発表と会見を行いますが、レーダー照射そのものに関するトーンは弱まり、論点が拡散されています。

韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(平成30年12月25日 防衛省)
このお知らせでも、「極めて遺憾」「再発防止を強く求め」ることは変わっていませんが、「日韓防衛当局間で必要な協議を行っていく考え」が追加されています。これは12月22日のお知らせには無かった文言です。
記者会見でも12月21日での「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為」などといった強い非難の文言が消え、「防衛当局間がしっかり意思の疎通が図れるということが大事」「今後、日韓の防衛当局間で必要な協議を行っていきたい」といった表現になっています。

レーダー照射についての表現も微妙に変化しています。
(12月22日)「海自哨戒機の機材が収集したデータについて、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断しています。」
(12月25日)「海自P-1の機材が収集したデータを基に当該駆逐艦から発せられた電波の周波数帯域や電波強度などを解析した結果、海自P-1が、火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射されたことを確認しております。」

22日時点では「火器管制レーダーによる」と断定していますが、25日には「火器管制レーダー特有の電波を(略)確認」とやや表現が後退しています。
そして、お知らせでも記者会見でも共通しているのが、日本側は照射されたレーダーの種類を明らかにしていない点です。

Q:韓国側は射撃管制用のレーダーと、火器管制用のレーダーを使い分けて、いわゆるMW-08のレーダーとSTIRのレーダーを使い分けていると説明していると思うのですが、そのSTIRの方は使っていないという説明だと思うのですが、日本側が探知をして発表に至ったのは、STIRを感知したということでしょうか。

A:その中身を逐一、詳細に申し上げるわけにもいかないと思いますが、防衛省側はおっしゃったようなことも含めて、海自側は分析をしております。

http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2018/12/25a.html

防衛大臣は記者から問われても答えていません。

前日12月24日に韓国国防部が、MW-08は照射したがSTIR-180は照射していないと機種を明確にして説明していることを考慮すると、ここで日本側が照射されたレーダーの種類を曖昧にするのは不可解という他ありません。

また、韓国国防部の見解に一部誤認があると主張しながら、具体的にどこが誤認なのかについては説明していません。

Q:韓国海軍からのレーダーの照射事件についてなのですけれども、これまで防衛省の説明と、それから韓国側の説明で使用したレーダーの種類ですとか、P-1の飛行の高度等について、主張が完全に食い違っておりますが、韓国側の意図ですとか、主張をどのように評価され、今後、どのような対応を考えてらっしゃいますでしょうか。

A:先般、20日に発生した韓国海軍艦艇による海自哨戒機への火器管制レーダー照射事案に対しまして、昨日、韓国国防省の会見において、韓国側の見解が明らかにされたというふうに承知をしております。この韓国側の見解については、事実関係の一部に誤認があると考えておりまして、先ほど、防衛省の考え方を公表したところでございます。公表内容の詳細については、事務方にお尋ねいただければと思いますけれども、いずれにしても、防衛省としては、このような事案が発生したことは極めて遺憾であると考えておりまして、韓国側に再発防止を強く求めてまいりたいと思います。その上で、わが国の安全保障の観点からも、日韓関係は非常に重要でございます。特に、防衛当局間がしっかり意思の疎通が図れるということが大事だというふうに思いますので、今後、日韓の防衛当局間で必要な協議を行っていきたいというふうに思っております。

http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2018/12/25a.html

レーダー照射事案そのものに関するトーンが下がった一方で、別の論点を持ち出し韓国側を糾弾する論調が継続してもいます。
「海自P-1は、国際法や国内関連法令を遵守し、当該駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行しており、当該駆逐艦の上空を低空で飛行した事実はありません」と低空飛行を否認し、「海自P-1は、国際VHF(156.8MHz)と緊急周波数(121.5MHz及び243MHz)の計3つの周波数を用いて、「韓国海軍艦艇、艦番号971(KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971)」と英語で計3回呼びかけ、レーダー照射の意図の確認を試みました」と通信が聞き取りにくかったという韓国側の説明を否定しています。
韓国側は光学カメラを向けた理由として低空飛行を挙げただけでしたから、本来ここで日本側が低空飛行を否定する必要性は全くありませんでした。何を持って「低空」とみなすかも両者で認識が共有されていない中で日本側が否定したのは、とても幼児的です。
通信についても、コミュニケーションエラー以上の論点ではない以上、当局者間の協議で話し合えばいいだけのことですが、これもいちいち反論しています。

なお、この日12月25日、与党自民党の国防部会では「韓国国内での関係者の処分とか、韓国から日本に対する謝罪を求める」とかの強硬な意見が出ています。

防衛大臣の記者会見では、大臣が「21日夜のBSフジ番組で、韓国海軍による自衛隊機へのレーダー照射を巡り、韓国人元徴用工訴訟判決など日韓関係の悪化に起因するかを問われ「そうであってほしくない。(元徴用工などの)問題が積み重なってのことではないと信じたい」と述べた」*1や、会見内で韓国を「友好国」と表現したことまでが記者から糾弾される始末で、日本側のヒートアップがメディアの影響でもあることを示しています。

Q:今、友好国というお言葉が出たと思うのですが、レーダー照射は極めて危険な行為と大臣がおっしゃっているとおりで、攻撃直前のものでもあると。これに関して、防衛省側としては事実関係を詰めて確認している、解析をしているということですが、これについても認めず、むしろP-1の方に距離的に脅威となるような特異な飛行があったとするようなところに、友好国と呼べるような関係に、まだあるとお考えでしょうか。未来志向ということが、今、このタイミングで隊員の命が危険になった直後に、自衛隊を率いる防衛大臣が使うということが適切なのかどうかということをどうお考えでしょうか。

(略)

Q:海自の人に聞くと、海自に限らず、防衛省自衛隊員の中には、大臣が「韓国側のことを信じたい」とか、今おっしゃられたこととか、もちろん大局観というのは大事だと思うのですが、極めて危険な行為の直後に、怒りよりも、むしろそちらの方が際立つような発言をされているようなことについて、すごく士気が落ちるというような声も、取材によると出ていますけれども、そういう部分に対しての受け止めをお願いします。

http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2018/12/25a.html

この記者などは要するに韓国を「友好国」と呼ぶな。もっと怒れ、とけしかけているとしか言いようがありません。

低空飛行の件

もっともメディアに関して言えば、韓国側も低空飛行に関して問題視するよう韓国国防部側にけしかけた観があります。
12月24日の韓国国防部の会見内容を見る限り、光学カメラを向けた理由として低空飛行を挙げたという程度でしかありません。実際の現場としては、低空で周囲を飛び回る日本哨戒機に対して、不愉快だとか目障りだとかは感じていたでしょうが、だからと言ってこれを殊更問題視するつもりは無かったように思えます。

ところが12月25日に日本側が低空飛行の事実そのものを否定すると、韓国側としても低空飛行まで否定するのかという反感を覚えたと思われます。
そもそもが日本側の主張どおり高度150m(500ft)だったとしても、一般的に低空飛行と言っていいレベルです。
例えば、「航空機の都心低空飛行問題・第1回 あなたの家の資産価値が下がる!?」などを見れば、羽田空港への新着陸ルートで見た場合、大井町上空で大体1000ft(300m)ですから、その半分です。
入間航空祭での曲技飛行の際の最低高度が300ft(90m)*2ですから、最低高度時より1.5倍ほど高い程度です。
謎の「国際法や国内関連法令」を持ち出し「駆逐艦の上空を低空で飛行した事実」を否定する日本側の主張に対して韓国軍は、韓国メディアの煽りが無くとも不満を覚えたでしょうね。

2018年12月21日から28日までのまとめ

事案発生後最初の日韓実務者協議が開かれたのは2018年12月27日で発生から7日後のことです。
しかし、当局者同士の協議が始まる以前に既に当該事案は外交問題へとエスカレートし、両国世論を巻き込んでヒートアップしていました。そこに至る過程を政府外交問題化した責任の重さを公式発表ベースで見る限り、発生1日後・2日後と週末であるにもかかわらず、韓国側を糾弾する形で公式発表を行った日本の側により重い責任があるといえるでしょう。
少なくとも、韓国側は12月24日まで“ちゃんと説明すれば日本側も理解するだろう”といった態度を維持していて、低空飛行についても糾弾する体を取ってはいませんでした。
12月25日の日本側の対応に対して韓国側は不信感を抱いたものと思われますが、実務者協議直後に韓国側が「会議は友好的かつ真摯(しんし)な雰囲気の中で行われ、今後、関連実務協議を続けていくことで一致した」*3と報じていることを踏まえると雰囲気での解決をなお期待していたとみられます。
後に報道される内容からは、この12月27日の協議も相当やりあった観が伺えますが、韓国側からはそのような様子を公表することなく実務者協議に解決を託したといえるでしょう。
そして、2018年12月28日に日本防衛省が映像を公開したことで、外交的対立が決定的になりました。

少なくとも両国政府の公式発表レベルで見る限り、外交問題化させたのは日本側という以外にありません。

韓国側が実質的な公式見解を示す以前の12月21日・22日という週末に一方的に韓国側を糾弾する論調の発表を行い、24日の韓国側の説明に対しても論点をそらし拡大し、27日の実務者協議の翌日に一方的な映像公開に踏み切ったわけですから、これで日本側に外交問題化の責任が無いなんてことにはなりえません。
一方の韓国側は、少なくとも12月27日の実務者協議まで外交問題化を避け当局者同士で穏当に解決することを期待していた様子が強く伺えます。

レーダー事案を外交問題化した責任まで韓国側に押し付けようとする日本メディアの態度はさすがに異常としか言いようがありませんね。




韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について

平成30年12月21日 防衛省
 12月20日(木)午後3時頃、能登半島沖において、韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から、海上自衛隊第4航空群所属P-1(厚木)が、火器管制レーダーを照射された。

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/21g.html

韓国艦、海自機にレーダー照射=無通告、岩屋防衛相が非難-「通常作戦中」と反論

2018年12月21日22時31分
 岩屋毅防衛相は21日、防衛省で記者団に、海上自衛隊のP1哨戒機が20日午後3時ごろ、日本海能登半島沖の日本の排他的経済水域EEZ)内で、韓国海軍の駆逐艦から火器管制レーダーの照射を受けたと発表した。岩屋氏は「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為だ」と非難。21日に外務省など複数のルートで強く抗議したことを明らかにした。
 これに対し、韓国国防省報道官室は「通常の作戦活動中だった。(海自)哨戒機を追跡する目的で運用した事実はない」と説明、危険性を強く主張する日本側と立場の違いを際立たせた。ただ、「誤解がないよう十分に説明する」とも表明した。
 岩屋氏などによると、照射は無通告で行われた。韓国駆逐艦の火器管制レーダーが作動しているのをP1搭乗員が発見し、照射を確認。無線で駆逐艦に意図をただしたが、応答はなかった。
 火器管制レーダーの照射はミサイルなどの発射の前提。日本側には、意図的な行為だとの見方も出ている。これに関し、韓国海軍関係者は「遭難した船舶にレーダーを照射したのを日本側が誤解した。狙ったことではない」と反論した。
 レーダー照射したのは「クァンゲト・デワン」級と呼ばれる駆逐艦。全長135.4メートルで、対艦ミサイル「ハープーン」などを備える。P1哨戒機は厚木基地(神奈川県綾瀬市など)所属で、通常の警戒監視活動に当たっていた。
 岩屋氏は「極めて遺憾であり、韓国側に再発防止を強く求める」と強調。「わが方の活動は国際法や国内関連法に基づき適正に行っている」と述べ、P1の行動に問題はないとの認識を示した。
 火器管制レーダーの照射は、2013年1月にも東シナ海で中国海軍のフリゲート艦が海自護衛艦に対して行った事案が起き、外交上の問題に発展した。
 日韓関係は徴用工判決や慰安婦財団の解散を受け悪化の一途をたどっており、今回の事態がこうした流れを一段と強めるのは確実だ。(2018/12/21-22:31)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122106819&g=pol

韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について

平成30年12月22日 防衛省
 12月20日(木)午後3時頃、能登半島沖において、韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から、海上自衛隊第4航空群所属P-1(厚木)が、火器管制レーダーを照射された旨、21日(金)、防衛省から公表を実施しました。
 本件について、種々の報道がなされていますが、防衛省としては、20日(木)のレーダー照射事案の発生後、海自哨戒機の機材が収集したデータについて、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断しています。その上で、火器管制レーダーは、攻撃実施前に攻撃目標の精密な方位・距離を測定するために使用するものであり、広範囲の捜索に適するものではなく、遭難船舶を捜索するためには、水上捜索レーダーを使用することが適当です。
 加えて、火器管制レーダーの照射は、不測の事態を招きかねない危険な行為であり、仮に遭難船舶を捜索するためであっても、周囲に位置する船舶や航空機との関係において、非常に危険な行為です。なお、韓国も採択しているCUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準)において、火器管制レーダーの照射は、船舶又は航空機に遭遇した場合には控えるべき動作として挙げられています。
 以上の理由から、今回このような事案が発生したことは極めて遺憾であり、韓国側に再発防止を強く求めてまいります。

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/22a.html

韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について

平成30年12月25日 防衛省
 12月20日(木)午後3時頃、能登半島沖において、韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から、海上自衛隊第4航空群所属P-1(厚木)が、火器管制レーダーを照射された旨、21日(金)、防衛省から公表を実施しました。
 本件について、昨日、韓国国防部が見解を発表していますが、防衛省としては、事実関係の一部に誤認があると考えています。
 まず、防衛省では、20日(木)のレーダー照射事案の発生後、海自P-1の機材が収集したデータを基に当該駆逐艦から発せられた電波の周波数帯域や電波強度などを解析した結果、海自P-1が、火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射されたことを確認しております。
 また、海自P-1は、国際法や国内関連法令を遵守し、当該駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行しており、当該駆逐艦の上空を低空で飛行した事実はありません。
 加えて、海自P-1は、国際VHF(156.8MHz)と緊急周波数(121.5MHz及び243MHz)の計3つの周波数を用いて、「韓国海軍艦艇、艦番号971(KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971)」と英語で計3回呼びかけ、レーダー照射の意図の確認を試みました。
 防衛省としてはこのような事案が発生したことは極めて遺憾であり、韓国側に再発防止を強く求めてまいります。こうした事案によって日韓防衛当局間の連携を損なうことがあってはならず、今後、日韓防衛当局間で必要な協議を行っていく考えです。

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/25b.html

平成30年12月25日(11:42~12:00)
Q:韓国海軍からのレーダーの照射事件についてなのですけれども、これまで防衛省の説明と、それから韓国側の説明で使用したレーダーの種類ですとか、P-1の飛行の高度等について、主張が完全に食い違っておりますが、韓国側の意図ですとか、主張をどのように評価され、今後、どのような対応を考えてらっしゃいますでしょうか。

A:先般、20日に発生した韓国海軍艦艇による海自哨戒機への火器管制レーダー照射事案に対しまして、昨日、韓国国防省の会見において、韓国側の見解が明らかにされたというふうに承知をしております。この韓国側の見解については、事実関係の一部に誤認があると考えておりまして、先ほど、防衛省の考え方を公表したところでございます。公表内容の詳細については、事務方にお尋ねいただければと思いますけれども、いずれにしても、防衛省としては、このような事案が発生したことは極めて遺憾であると考えておりまして、韓国側に再発防止を強く求めてまいりたいと思います。その上で、わが国の安全保障の観点からも、日韓関係は非常に重要でございます。特に、防衛当局間がしっかり意思の疎通が図れるということが大事だというふうに思いますので、今後、日韓の防衛当局間で必要な協議を行っていきたいというふうに思っております。

(略)

Q:先ほどの御回答の中で、レーダーの照射についてですけれども、「今後、日韓の当局間で必要な協議を行いたい」という発言がありましたけれども、具体的にどういうレベル、どういう立場、どちらで話すか等、詳細というのは決まっているのでしょうか。

A:まだ詳細は決まっておりませんが、お互い、海自と海軍でございますので、カウンターパートということで、それぞれ関係が日頃からございますし、また政策当局間も含めて、適切な形で協議をしたいというふうに思っています。

Q:これまでのところ、見解の食い違いがあらわなわけですけれども、この背景には何があると大臣はお考えでしょうか。

A:背景というよりも、私どもも海自が収集したデータを慎重に解析をした結果、照射があったことは事実だというふうに考えております。事柄の重大性に鑑みて、やはり、遺憾の意を表した上で再発防止を強く申し入れる必要があったということでございます。冒頭に申し上げたように、韓国側の見解が返ってきましたが、そこに不一致の点があるので、これについては、今後、当局間でしっかり協議をしたいと思っております。

Q:韓国側はこれまでのところ、火器管制レーダーの照射自体を認めていないわけですが、防衛省側として把握しているデータについて、公表、若しくは当局間の場で韓国側にこれを示すというお考えはありますでしょうか。

A:わが方の能力に関わることは、中々、公表というわけにはまいりませんが、当局間でお話をする、特に、海自と先方の海軍ということになれば、専門的な話もできるのではないかというふうに思っております。

Q:哨戒機から呼びかけを行ったことについて、韓国側が、無線通信が微弱で探知できなかったという話をしているようですが、その辺り事実関係は如何でしょうか。

A:海自のP-1は、細かい話になるのですが、国際VHFと緊急周波数、緊急周波数には2種類あるのですけれども、計3つの周波数を用いて、「韓国海軍艦艇、艦番号971」と英語で計3回呼びかけました。そして、レーダー照射の意図を確認しようとしたということでございます。先方の御説明では、当方から「コリアコースト」、「コリアコースト」というのは、多分、韓国の沿岸監視隊というふうに呼びかけたということをおっしゃっているようですけれども、そのような用語を用いた事実はないということでございます。

Q:微弱で捉えきれなかったみたいな話は。

A:3種類の周波数を使って、当日の天候はそう悪くなかったようですし、そんなに遠距離からではないと思いますので、微弱だったということはないのではないかなと思います。

Q:今日、自民党の国防部会と安全保障調査会の合同会議では、韓国国内での関係者の処分とか、韓国から日本に対する謝罪を求めるような厳しい意見が挙がったのですが、大臣としてのこの辺りの見解はどう持たれていますか。

A:事態、事案の重大性に鑑みて、友好国ではあっても、きちんと抗議をし、また、再発防止を求めるということはしなくてはいけないということで、そうさせていただいたわけでございますが、今後は当局間でしっかり意見の交換をして、最終的に韓国との間で未来志向の防衛協力関係を築いていけるような、そういう環境整備を是非していきたいと考えております。

Q:今、友好国というお言葉が出たと思うのですが、レーダー照射は極めて危険な行為と大臣がおっしゃっているとおりで、攻撃直前のものでもあると。これに関して、防衛省側としては事実関係を詰めて確認している、解析をしているということですが、これについても認めず、むしろP-1の方に距離的に脅威となるような特異な飛行があったとするようなところに、友好国と呼べるような関係に、まだあるとお考えでしょうか。未来志向ということが、今、このタイミングで隊員の命が危険になった直後に、自衛隊を率いる防衛大臣が使うということが適切なのかどうかということをどうお考えでしょうか。

A:そこは、大局に立ってものを考えなければいけないと私は思います。本事案については、今、おっしゃったように、不測の事態を招きかねない危険な行為であったことは事実でありまして、そのことは指摘をし、再発防止を求めていくという姿勢に変わりはありませんが、とはいえ、韓国が敵対国であるかというと、それは決してそういうことはない。また、わが国の安全保障というものを考えても、日韓の防衛当局間の関係、日米韓の関係というのは、極めて重要であるということに変わりはないというふうに考えております。

Q:海自の人に聞くと、海自に限らず、防衛省自衛隊員の中には、大臣が「韓国側のことを信じたい」とか、今おっしゃられたこととか、もちろん大局観というのは大事だと思うのですが、極めて危険な行為の直後に、怒りよりも、むしろそちらの方が際立つような発言をされているようなことについて、すごく士気が落ちるというような声も、取材によると出ていますけれども、そういう部分に対しての受け止めをお願いします。

A:そのようなことはないというふうに私は思っております。こういう事案については、冷静沈着に対応しなければいけないというふうに思っておりまして、誤解のないように申し上げておきますが、私が「信じたい」と申し上げたのは、テレビ出演中に、記者から、「これは、これまでの日韓関係が影響しての行為でしょうか」という質問がありましたので、「いや、そうではないと信じたい」というふうに申し上げたところでございます。

Q:韓国側の主張で、大臣が金曜日に発表されたときに、日本側の事実確認がないまま発表したことに対して韓国側から遺憾の意が表明されているのですが、この件に関してはどうお考えですか。

A:これも先ほど申し上げたように、やはり火器管制レーダーを照射するというのは、不測の事態を招きかねない極めて危険な行為であって、防衛省側の、海自側の分析で、照射を受けたことは明らかだということが分かりましたので、速やかに遺憾の意を表し、再発防止を申し入れる必要があったというふうに判断したからでございます。

Q:韓国側は射撃管制用のレーダーと、火器管制用のレーダーを使い分けて、いわゆるMW-08のレーダーとSTIRのレーダーを使い分けていると説明していると思うのですが、そのSTIRの方は使っていないという説明だと思うのですが、日本側が探知をして発表に至ったのは、STIRを感知したということでしょうか。

A:その中身を逐一、詳細に申し上げるわけにもいかないと思いますが、防衛省側はおっしゃったようなことも含めて、海自側は分析をしております。

(略)

Q:韓国国防部の会見では、哨戒機が駆逐艦の真上を飛んだ特異な飛行をしたというふうになっていまして、本日の防衛省の反論の中では、低空飛行はしていないということですが、真上を飛んだかどうかについては。

A:そのようなこともないと報告を受けております。

http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2018/12/25a.html

韓日、レーダー関連実務級会議…「友好的で真摯な雰囲気」

[ⓒ 中央日報日本語版] 2018年12月28日 06時40分
韓日間のいわゆる「レーダー照準葛藤」に関連して27日、両国国防当局が初めての会議を開催した。韓国海軍艦艇が海上自衛隊哨戒機に対してレーダービームを放射したという疑惑を日本が提起してから6日目のことだ。
韓国国防部はこの日、「韓日国防当局は日本哨戒機関連の事案に対して実務級テレビ会議を開催した」としながら「今日の実務級テレビ会議は韓国側の合同参謀本部作戦部長のキム・ジョンユ陸軍少将と日本側の池松英浩首席参事官らが参加した」と明らかにした。
この日、両者は会議で、相互誤解を解消するために事実関係の確認と技術的な分析などに関して意見を交換した。国防部は「会議は友好的かつ真摯(しんし)な雰囲気の中で行われ、今後、関連実務協議を続けていくことで一致した」と説明した。
韓国軍は20日、東海(トンへ、日本名・日本海)の独島(ドクト、日本名・竹島)北東100キロ地点で北朝鮮漁船が漂流しているという通報を受けて、海軍の駆逐艦「広開土大王」を出動させ遭難船舶の追跡にあたらせた。当時、海上自衛隊の哨戒機も近くの海域で作戦中だった。韓国軍の説明によると、広開土大王は高波と悪天候のために水上レーダーだけでなく高性能の射撃統制レーダーを運用した。しかし21日から日本側は、韓国海軍の艦艇が射撃統制レーダーで自国哨戒機を狙ったと主張し、これを攻撃的行為だと糾弾しながら韓国軍の謝罪を要求している。

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