犯罪事実そのものは許せるものではないが、実名報道すべきとも実刑判決が妥当だとも思わない

この件。
少女像展示で「ガソリン缶持っておじゃますんで~」…男に求刑(10/30(水) 10:20配信 読売新聞オンライン)
記事を読む限り前科が無さそうなので普通に考えれば、執行猶予付の判決が出ると思いますし、まずその辺が妥当だと思います。

もちろん被告の歴史認識や起訴事実そのものについては全く容認できませんが、既に勤めていた会社を解雇されるなど一定の社会的制裁を受けていますし、県に対して謝罪していることやメディアによっては実名報道までされていることを踏まえると、実刑判決が妥当だとは思いません。
まあ、被告には従軍慰安婦がどういうものか、政府や右派勢力の主張している内容が本当に正しいのかを学んでほしいとは思いますが。

本件が表現の自由を損なう重大な事案であることは確かですが、被告一人の責に帰するわけではなく、そのような行為を煽った社会情勢、とりわけ表現の自由を保護すべき公的立場の者らが被告のような行動を煽ったこと、およびそれを奇禍として展示中止や補助金停止を行った政府の責任の方がよほど重大です。被告一人をスケープゴートにして、表現の自由を守っている気になる方が表現の自由にとってよほど有害でしょう。

あと、読売記事では「無職の男」と匿名で報じられていますが、実名報道しているメディアもあります。

威力業務妨害を含む信用及び業務に対する罪での判決は多くの場合執行猶予がつきますし*1、威力業務妨害の法定刑が最大でも懲役3年であることを考慮すると、安易に実名報道することは被告が罪を償った後もその更生と就業を阻害する可能性が高く不適切です。

言うまでも無く警察などの公的機関は実名で公表すべきですが、報道機関はそれを実名のまま報じるべきではないという意味です。
自己破産の事実が公的機関による公表されても報道機関が報道したりはしないのと同じようにすべきだという主旨です。



*1:平成30年司法統計(第34表 通常第一審事件の有罪(懲役・禁錮))では「信用及び業務に対する罪」の判決87件中59件が執行猶予となっています。